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【続編⑦】第四章〜第一節 「1.歩行の3つのポイント」 これならできる!運動指導初心者の指南書〜特定保健指導、介護予防指導などで必ず役立つ!

第4章 ウォーキング指導のポイント

1.歩行の3つのポイント

①歩きのポイントは肩甲骨にあり!

 肩甲骨は「天使の羽」とも呼ばれますが、背中の出っ張った2つの骨ですね。背中ですので自分の目で直接見ることはできませんが、その動きを確認することはできます。

 両腕を前に伸ばして、両肘を後ろに引いていきます。引き切ったところで少し動きを止めます。その時、一番力が入っているところはどこですか?胸とか肩にも突っ張り感は感じますが、背中を意識してください。肩甲骨の間が真ん中に寄ってきてますよね!

 では、両腕を体側にぶらんと下げているところから、両肘を曲げて、腕の重みを利用して両腕を前後に軽く振ってください。背中を意識して肩甲骨が背中の真ん中に寄る動きを確認します。

 次に、先ほどと同様に肘を曲げた状態で左右交互に腕を前後に振ってください。駆け足の時のような腕の振り方になりますね。肩甲骨が交互に動いていることを確認できますね。

 この肩甲骨の動きが、実は骨盤と連動しています。肩甲骨がしっかり動くと骨盤の動き(回旋運動)が誘導され大きな動きとなります。脚は骨盤に繋がっていますから、骨盤の動きが大きくなれば、脚がスムーズに動く。つまり足取り軽く歩ける、ということです。

 ですから、足の運びを良くするためには、足をどう動かすかということよりも、肩甲骨をどう動かすかがポイント。
 
 
肩甲骨を動かすということは肘を後ろに振るということです。先ほど肩甲骨の動きを確認する時にやりました肘を後ろに引く動きですね。軽く肘を曲げたまま、後ろに引く意識を持って腕を左右交互に振ってください。足の運びがきっと軽く感じると思います。


②1日の目標歩数は1万歩!?

 厚生労働省の「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針」の中に盛り込まれた「健康日本21」によると、令和元年の日本人(20〜64歳)の1日の平均歩数(*参考1)は、男性7,864歩、女性6,685歩。65歳以上の男性5,396歩、女性4,656歩となっていて、ここ10年間の推移としては全体的に下降傾向です。国の目標(健康日本21 第二次 令和4年度目標)としては20〜64歳の男性が9,000歩、女性が8,500歩、65歳以上の男性が7,000歩、女性が6,000歩となっています。

 皆さんがおそらくこれまでによく耳にしてきた「一日1万歩」は、この厚労省のデータからも現状はなかなか厳しいということですね。

 この「健康日本21」は20年以上も前に国の施策として始まったわけですが、当時のスローガンとして「1日1万歩」と掲げています。身体活動量と死亡率との関連を調査した研究結果をもとに出されている根拠ある数字なのですが、理屈だけでは人のやる気スイッチは入らないようです。

 科学は日進月歩です。この身体活動と病気に関しても多くの研究が行われてきていて、「1日1万歩」はやりすぎなのでは、という研究結果を聞くようになりました。

 例えば2019年に発表されたアメリカの研究(*参考2)によると、約17,000人の高齢女性を対象として、歩行が少ない人(1日2,700歩以下)に比べ、1日4,400歩を歩く人は、その後4年間の死亡率が低いということがわかりました。さらには、死亡リスクの低下は1日7,500歩で最大となり、それ以上頑張って歩いても死亡リスクを下げるというメリットは得にくいということがわかりました。

 また別の研究で、2020年に行われたアメリカ国立がん研究所などの研究者によって、1日8,000~12,000歩歩く人は、1日4,000歩歩く人と比べて死亡リスクが低くなることがわかったということです。

 こうした研究から見えてくることは、健康のための歩数としては、4,000歩くらいからそのメリットが出始め、よく歩いても8,000歩くらいで良さそうだ、ということではないでしょうか。
 
*参考1 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000687163.pdf
「令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要」
*参考2 https://withnews.jp/ 
<連載>「1日1万歩」やりすぎ? 歩数目標のミステリー 最新研究の見解は 2023/8/23掲載

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