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孤独と不安、現代におけるコミュニティとは?「佐渡島庸平×石川善樹 みんな居場所がない」

「現代人は、みんな居場所がない」とは、どういうことか。
SNSで誰とでも繋がることができ、何でもシェアする時代になり、コミュニケーションの頻度は確実に増しているのにも関わらず、孤独を感じる人がいる。

現代人の感じる不安と孤独の正体、そんな時代のコミュニティのあり方、設計等について、佐渡島庸平さんと石川善樹さんが金言満載、時間オーバーで語り尽くしました。

NewsPicksアカデミアへの先制パンチ!

「NewsPicksアカデミアはまだコミュニティになれていない。同じイベントに参加しても名前も知らないから挨拶もしない。講演を聞いて帰るだけ。」と、いきなり佐渡島さんからNewsPicksアカデミアへの強烈な先制パンチ。

そんなわけでこのイベントは、近くの参加者とのコミュニケーションからスタートしていきます。語るテーマは「佐渡島さんの書籍『We are lonely, but not alone』を読んで刺さったポイントについて」です。

そもそもがNewsPicksアカデミアの会員で、その中でもこのイベントや書籍に何らか関心を持って集まった参加者たちなので、コミュニケーションの壁は比較的容易に崩れていきます。

書籍にある「趣味を軸にしたコミュニティ」「安心・安全とは?」という内容がいきなり腹落ちしていく感覚。その感覚は、その後のトークでさらにどんどん膨らんでいきます。

現代の孤独と不安

「自分は職場で孤独を感じているか?」という石川さんからの問いに対し、Yesと回答したのは会場の3〜4割程度。一人で仕事をしているわけではないのに、孤独を感じながら仕事をしている人がこんなにもいる。石川さんはその原因の一つが「ルーティンワークが減ってきたこと」にあるのではと解説します。

客観的に見て一人なのが孤立、主観的に一人だと感じてしまうのが孤独。AIやロボット技術によりルーティンワークは代替され、非定形の仕事が増えることで孤独を感じる人が増えてしまっているといいます。そしてその手前には、「この道行けばどうなるものか?」というアントニオ猪木的な不安がある。

続けて、佐渡島さんは不安と孤独の関係を「言語化できない不安を抱えているとき、その不安を共有できない状態が孤独なのでは」と語ります。また、その言語化できない不安を共有することが、佐渡島さんが手がける書籍の目的でもあると言います。

不安を減らせ!

「自分の人生を中長期的に捉えるという考えが生まれたのはいつからなんだろうか?」という石川さんから投げかけられた、疑問。これが不安を生む諸悪の根源なのでは、と。

これに対し佐渡島さんは、「よいイメージよりも不安は際限なく思いついてしまうもの。無意味なループに入る質問よりも、今自分が何をしたいか、心の中を言語化することが重要」と答えます。

さらに石川さんからは、プロフェッショナルな人材の共通項についても話がありました。

このポイントは①で、誰かに与えられた目標ではなく自ら立てた目標であることが重要であると。つまり、佐渡島さんの言うところの「今、自分がやりたいことの言語化」とリンクしていきます。これができる人がプロフェッショナル、そうでない人がアマチュアと言い換えることもできるのかもしれません。

続いて、話は不安・孤独を減らすためのコミュニティ論に移っていきます。

よいコミュニティの構成とは

「コミュニティってどんな人がいたら良いのだろうか?自分と同じような人なのか、すごい人なのか」という問いからコミュニティ論はスタートします。佐渡島さんは、すごすぎる人は自分と別人となってしまうため、

この状態が良いのではと語ります。続けて石川さんは、次の南米の研究結果を例に取り上げます。

スーパースターと地元のヒーローが同じことを言った場合、どちらが言う方が効果があるか。

答えは後者で、イメージが湧くことが非常に重要という研究結果だそうです。卒業生の講演が非常に効果的なのもこの理由とのこと。

これらのことから、既存のコミュニティには試行錯誤の末にたどり着いた素晴らしい形が隠れていることが多く、新たなコミュニティの設計においても既存コミュニティの研究が欠かせないということが言えそうです。

自走するコミュニティ

続いて箕輪さん登場。テーマはコルクラボ、箕輪編集室が実践する自走するコミュニティについて。

まず語られたのは、コミュニティの規模について。今や1000人規模のコミュニティとなった箕輪編集室。「適切なコミュニティのサイズ」についてトークは盛り上がります。

これは、ダンバー数として知られる数字で、新石器時代の農村の人口も、ローマ時代の軍隊の中隊の規模もおおよそ150という数字になっていて、人間の能力の限界とも言われています。
佐渡島さんは「コミュニティが1000人なってくると繋がりはゆるくならざるを得ないので、どのように小さく分割していくか、組織的にしていくかが重要」と言います。

そして話は最後、「1000年続いているコミュニティとは?」に展開されます。

石川さんは、「数学者のコミュニティと伊勢神宮は一緒」で、これらの共通項は「中心がなんであるかを隠されていること」。中心がわからないからそれを求めるのであって、大事なことが明らかなコミュニティは持続しないのでは、という仮説を述べます。

これに対し箕輪さんは「明確なゴールがある場合、ゴールテープを切っちゃったら解散になってしまう。なんのために走っているのかを考える状態が良い」と言い、佐渡島さんは、「コミュニティが提示しなければいけないのは、ミッションではなくあり方」と語りました。

三者三様の表現でありながら、向いているベクトルは一緒。この内容こそが現代におけるコミュニティ運営の極意と言えそうです。

おわりに

昨年話題になった『サピエンス全史』には、「ホモ・サピエンスの繁栄はフィクションを作る能力が備わったから」ということが書かれていました。貨幣経済、資本主義、宗教といったフィクションを作ることで、150人を超えたサイズのコミュニティを形成することができるようになり、その結果生態系の頂点にたったという内容です。

そしてそのフィクションは、世界中に広がり、今や数十億人がそのコミュニティに属しているとも言えます。

一方で、このイベントで語られたのは、大きすぎるコミュニティでは個人個人の孤独を支えきれなくなってきているということ。大きく古くなってきたコミュニティに加え、適切なサイズとあり方(フィクション)のコミュニティを構築し参加することが、ビジネスや個々の生活においてのキーワードになってきそうです。

NewsPicksでは今後もコミュニティについての記事を発信し続けるとともに、NewsPicksアカデミアをさらに良いコミュニティにするべく活動していきますので、引き続きよろしくお願いいたします!

* * *

※本記事は、5月11日(金)に開催されたイベント 佐渡島庸平×石川善樹「みんな居場所がない ー 現代の孤独とコミュニティ ー 」をまとめなおしたものです。(ゲスト:佐渡島庸平・石川善樹・箕輪厚介、モデレーター:野村高文)

文: 小林 健介

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