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「自分たちは消えてなくなることに価値がある」 / DINING OUT流・地方創生の極意 #NewsPicksアカデミア

「これからは地方の時代だ」といたるところで言われるようになり、移住や地方創生プロジェクトの注目度もここ数年でグッと高まってきました。

しかし、中にはイベントだけの打ち上げ花火で終わってしまうプロジェクトも多いのではないでしょうか。

今回は4/23(月)にONESTORY代表の大類氏を招いて開催された「地方に眠るプロダクトの魅せ方」イベントの中から、地方創生や地域のものを売るためのポイントを抜粋してお届けします。

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DINING OUTとは?

(写真提供:ONESTORY)

DINING OUTとは、日本のどこかで数日だけ開店する、プレミアムな野外レストラン。
1晩で10万円〜15万円という高価格帯にも関わらず。トップシェフやクリエイター、地元の方々と創り上げる非日常空間はリピーターも多いのが特徴です。

DINING OUTが開催されるのはたった2日間だけですが、その裏には地元の人たちのプライドを取り戻し、じっくりと地域を変えていくための仕組みが張り巡らされていました。

なぜたった2日間のイベントが地域を変えていくのか?

その理由を余すことなく語っていただいたイベントの様子をレポートします。

DINING OUTはなぜ  "野外"の "高額"なイベントなのか?

DINING OUTの特徴といえば、1人あたり10〜15万円という価格帯と、野外で開催するという特別感。

この2つは、初回の佐渡からずっとこだわってきたことなのだそうです。

なぜこの2つにこだわったのかを尋ねると、こんな答えが返ってきました。

室内だったら東京でも再現できる。単に食材を楽しんでもらうのではなく、湿度やその土地の匂い、空気の温度すべてを感じてほしかった

最近はグランピングやピクニックが流行っているのもあって、なんとなく野外イベントっていいなあ…程度で考えていた自分が恥ずかしくなりました。

そして今回のイベント中、何度も出てきた「地元の人たちに自信を持ってもらう」という言葉。

今回は参加者も地方出身の方が多く、そこに住む人たちが自信を持って地元を語れるようになることが地域を変える上で何より重要だという話に、多くの方が頷いていました。

DINING OUTが紡ぐストーリー

とはいえ、DINING OUTがなぜそれだけ高額な参加料をとれるのか?

それは彼らの『ストーリーメイク」の力にあります。

今回事例として紹介していただいたのは、徳島県の祖谷で開催したときのこと

山奥の作物もあまり育たないような地域で、特産物はかろうじて蕎麦が栽培されている程度。あとは木の実くらいしかとれない土地だったのだそう。

ないないづくしの中でたどり着いたのは、この土地に伝わる平家の落人伝説でした。

戦いに破れてこの地まで落ちのびてきた平家の武士たち。

彼らがこの地を訪れたときのことを想像してみると、はじめは木の実を拾って食べていたところから、3日、4日と生き延びるうちに「温かいものが食べたい」と考えて、火をおこして煮炊きをはじめたかもしれない。

その瞬間、彼らにとって「食べる」ということが、「生き延びるために必要なこと」から「明日への希望」に変わったはずだ。

こうしたストーリーをもとにテーマを設定し、料理や演出といったすべてのコンテンツに落とし込んでいったのだそうです。

「地元の人たちは、よく『うちにはなにもない』という。でも広告の仕事で培った『いいとこ探し』の目で見ると、地域には埋もれているストーリーという宝の山がたくさんある」と大類さんは力強く話してくださいました。

地域のキーパーソンは◯◯で探せ!?

その地域でプロジェクトを進める上で重要なのが、いかに早くキーパーソンにたどり着くか、ということ。

行政の方からの紹介以外でキーパーソンにたどり着くための方法はあるんですか?と聞いてみると、返ってきたのは意外な場所!

最近、コミュニティに文脈でにわかに注目を集めているスナックですが、地元のキーパーソンや人間関係を知るプラットフォームとしても最適なのだそう。

地域で仕事をするにはパワーバランスの見極めも重要で、「あいつと組んでるなら俺はやらん」というケースも。

だからこそ事前リサーチの段階で、スナックで本音トークをすることで綺麗事じゃない部分まで知ることが重要なのだそうです。

ちなみに、地方におけるスナックは重要なメディアであり、コミュニティ機能を果たしているので、スナックがいきいきしている土地は滅びないのだとか!

シェフと一緒に生産者めぐりをする理由

「メディア掲載」が地元に与える思わぬ効果

DINING OUTでは、初回からPenやDiscover Japanといった有名雑誌やテレビ局と連携し、DINING OUTを開催したら必ず特集が組まれる仕組みにしたのだとか。

「これは本質的ではないんだけど、」と前置きした上で、「でも、『これだけの雑誌やテレビに露出したらDINING OUTの予算の10倍はかかりますよ』という説得材料にはなりますよね」とどうしても数字や実績をもとにその効果を説明しなければならないときの方法を教えてくださいました。

ちなみに、それぞれの雑誌やテレビ番組は開始時点からほぼ独占で取材権を与えるという約束で、各媒体にとってもメリットがある仕組みになっています。

その話の延長で語ってくださったのは、メディア露出の意外な効果について。

露出が増えることで単に観光客が増える、といった効果ではなく、そもそも地元の人たちが誇りを取り戻すきっかけにもなるのだそうです。

ちなみに「DINING OUTの特集号は、地元の人たちが1人10冊買って親戚に配ったりするから、販売部数もちょっと増えるらしい(笑)」とのこと!

地元の人もそうですが、東京に出ていってしまった若者が地元を誇りに思ったり、Uターンを考えるきっかけになる可能性もありますよね。

メディアを通して『知ってもらうこと』の価値は、知らない人の認知を得るだけではなく、内部のエンゲージメント向上にも寄与するという話は納得感がありました。

「コマース by コンテンツ」の意味

今回、地域だけではなく小売の視点からも面白かったのがこの「コマース by コンテンツ」の考え方。

最先端を追い求めると同質化してしまうことは避けられない。
だからこそ、その土地らしさを深掘りして唯一無二の存在になるほうが強い、という考え方は地域のものに限らずあらゆるプロダクトに言えることだなと思いました。

旅行やイベントの先に「関係」を作るには

さらに、話は旅行×小売の話へ。

その地域に旅行したらモノがほしくなるのは当たり前だけれど、その1回で終わらないためにはどうすれば?と質問したところ、

その地域の人と旅行者が仲良くなれるかどうかです」とのお答え。

DINING OUTでサービススタッフとして地元の人たちを起用するのも、ときに方言を交えながら参加者の方と地元の人が言葉を交わすことで、『仲良くなった』という実感からまた来たいと思ってもらえるようにとのことでした。

一見すると非効率に見えるやり方ですが、こうした地道な取り組みが10年先に花開くのだと。

「自分たちは消えるからこそ価値がある」という言葉の意味とは?

今回印象的だったのが、「自分たちは消えることに価値がある。でも、地元に確実に価値を残す」という言葉。

2日間で「DINING OUT」というイベントは終わってしまうけれど、半年かけて地元とチームを組んで進めてきた財産はしっかり残す。
この意識こそが「DINING OUTらしさ」なのかもしれません。

地域で仕事をするには覚悟が必要とよく言われますが、覚悟の方法は「その地に根をおろす」ことだけではないはず。

自分たちなりの覚悟の持ち方、責任ある地域との付き合い方。

「地方創生」や「地域マーケティング」が注目されている今だからこそ、改めて胸にとめておきたいことだと思いました。

質問:DINING OUTの組織体制は?

質問:地域のストーリーはどうやって見つけている?

おまけ:イベントの概要を1枚でわかりやすくまとめてくださった方が!

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今回のイベント全容は、後日NewsPicksのアカデミア会員向けにアーカイブ動画を配信予定です。

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(文・最所あさみ、写真・JIN Hayato

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