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STARTUP LIVE #1 有安伸宏氏——イベントレポート

5/29に出版された『STARTUP 優れた起業家は何を考え、どう行動したか』(NewsPicksパブリッシング)の刊行を記念して、本書に登場する起業家の方々をお招きする連続イベント「STARTUP LIVE」が開催された。

第1回目は起業家・エンジェル投資家の有安伸宏氏をゲストにお迎えし、著者堀新一郎氏、琴坂将広氏と対談。その様子を書き起こしにてお届けする。

書籍のご紹介

有安伸宏氏のご紹介

STARTUP LIVEのアーカイブ動画(YouTube)

琴坂将広氏(以下、琴坂):みなさんこんばんは、STARTUP LIVEのお時間です。この番組は2020年5月29日発売の話題作、『STARTUP 優れた起業家は何を考え、どう行動したか』の出版を記念して、この本に登場する起業家の方々をお呼びし、根掘り葉掘り質問しちゃおうという企画です。 #STARTUP本 でコメントもお待ちしております。プレゼンターは私、慶應義塾大学SFCの琴坂将広とYJキャピタルの堀新一郎でお送りします。

琴坂:今日は、有安さんに来ていただいてます。有安さんには、今どんなことをしているか、というところからお話していただきたいと思うのですが、ぶっちゃけ、最近は何をやっているんですか?

有安伸宏氏(以下、有安):最近は、家でちゃんとロックダウンして、Zoomミーティングばっかりしてますね。

琴坂:やっぱりZoomミーティング、こんな収録しちゃったりして。

有安:収録初めてだからちょっと緊張しますけどね。

琴坂:がんがん投資されているみたいな話も聞きましたけど。

有安:していますね。あとZoomでしか会ったことない人に投資しているので、もう普通ですね。「よく考えたら僕らまだ会ったことないよね」っていうのがこの間あって、定例やっている相手とかにも全然いて。

琴坂:違和感はないですか? そうはいっても数百万、数千万という額で。

有安:あるけど、まあやっていくしかないという感じですかね。多分、慣れな感じもしますけどね。

琴坂:有安さんのご自宅には、多分STARTUP本が届いていると思うんですけど、ありますか?

有安:これね(『STARTUP』を見せる)。

琴坂:ありがとうございます。きっと読んでないとは思うんですけど、どうですかね?

有安:すごくいい感じが。

琴坂:完全に言わせている感じ(笑)。

有安:ちょっと斜め読みをしようかなと思ったんですけど、思ったより気合が入って書かれている感じがしました。最初のほう堀さんが書かれていたじゃないですか?

堀新一郎氏(以下、堀):はい。

有安:まずいい感じだなと思いました。中はそんなちゃんと読んでないです。

琴坂:ありがとうございます。読み飛ばせる本ではないですよね。512ページある本で、すごく長くて。もちろん、有安さんにも事前に確認いただいているんですけど、有安さんがガーッと登場しているところと、そうでない起業家のところとのミックスで、そんな簡単に読める本ではない、ということだとは思うんです。

有安:なるほどです。だいたいわかりました、YouTubeライブに今慣れました。琴坂さんのゼミの人は多そうですね。

琴坂:最近は大学生もこういうライブ感で勉強していくことが増えているので、スタートアップもこういう感じで学んでいくというのが普通になってきていると思います。

有安さんには今回、STARTUP本に登場していただいているところを中心に、お話を伺いたいと思っています。

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人の目を気にしている間は起業家ではない

琴坂:まず、第1章の「アイデアを見つける」というところで登場していただいています。「サイタ」を作る時のお話ですね。第3章「プロダクトを作り、ユーザー検証する」という所でも登場していただいています。「最も重要な所を有安さんから学べ」と言わんばかりの構成になっているんですけども、ぶっちゃけ、一言で言うと何をやればいいんですか? アイデアを見つけるって、何ですか?

有安:結構いろいろやったほうがいいですよね。方法論はたくさんあるんですけど、やっぱり自分のアイデアに固執したくなっちゃうので、「コレだ」と思ったら、変えるのって結構勇気がいる。場合によっては、巻き込んでいるエンジニアとかを失望させることにもつながるので、結構難しい。だけど、雑にいろんなことをやって、打席に立ってバンバン捨てていくというのが大事かなという気はしてます。

僕も実は起業の時に、多分5つか6つくらいアイデアがあって、その中で一番サクッと売り上げが十数万、数十万くらい立ったものからスタートした、みたいなのがあった。なので、いっぱいやるのがいいんじゃないですかね。

琴坂:そこのバランスってどうですかね? もちろん、たくさんやったほうがいいんですけど、ずっといろんなことをやっていると「あいつ、ふらふらしてて何やってるかわからない」みたいなことを言われたりとか。周りにはガチッと「俺はこれやるんだ!」って決めている起業家もいると思うんですけど、その中でいろんなものを検証するのはつらくないですか? どのようにそのバランスを取っているんですか?

有安:人の目を気にしている時は多分起業家モードになれていないので、「人の目を一切気にせず、節操なくいろいろやる」みたいなのが正しいんじゃないかなという気がします。

琴坂:皆さん、いいですか? 今重要なキーワードがきましたらか繰り返しますよ。「人の目を気にしている間は起業家ではない」はい、皆さんたくさん学びましょうね。

有安:いろいろ知り合いの方々がYouTubeのチャットの所にも来てくださっていますね。

自分の居場所を見つける

琴坂:(事業開発の)ノウハウってどうやって身につけたんですか?

有安:「身についているのかな?」っていう感じはしますけどね。すごく事業センスがある人っているじゃないですか、業界に。事業は、やっぱり見るしかないんです、インプットしていくしかないんですね、多分。

あと、すごいセンスがある人とディスカッションさせてもらうみたいな。僕、売却後にクックパッドの穐田さんに週1くらいで新規事業のブレストみたいな時間をもらっていて、1時間とか毎週やってて、「あー、この人こういう考え方するんだな」って10ヶ月目くらいに結構わかってきたんです。そうすると、穐田さんなら「こういうときはこう言うだろう」とか、事業が出てきたときに「こういうふうに思うだろう」って脳内で動いてくれて。そういう感じで、ディスカッションしてくれる相手がいると学べますよね。そうじゃないと多分学びにくいんだろうなと思いますけどね、本を読んだりとかフレームワークとかだと。

堀:起業後の話でしょう、それ? クックパッドに買収された後の話。

有安:そうです、まさに。

堀:サイタやっているときとか、始めるときは壁打ちしてたんですか?

有安:壁打ちの相手がそんなにいなくて。VCもそんなにいなかったですし。

堀:(STARTUP本に)17人の起業家が登場している中、正確には会社数16社の中だと、有安さんと、あと赤坂さんくらいですかね、調達なしで起業したの。

有安:そうですね。

堀:調達無しでイグジットするとか、ここ3年くらい無いじゃないですか?

有安:確かに、そうかも。借り入れはしまくっていましたけどね。

琴坂:ふと思い出したんですけど、有安さん、昔「自動販売機のお釣りが余ってないか探したことがある」みたいなこと言っていませんでしたっけ?

有安:言ってないよ、そんなの(笑)。

琴坂:「すごくお金に困っていた」みたいなことを言っていた記憶はあるんですけど。

有安:いやいや、あれじゃない? お金がないから、正確にはあるんだけど、ちょっとお金があると「これで何クリック買えるな」とか思っちゃうから、あまりお金を使えないとかそういう話じゃない? 確か。自販は探してないですね、流石に(笑)。

琴坂:その時にアドバイスを求める人って自分から探しに行ったんですか?

有安:いや、そんなに周りにいなくて…。琴坂さんは、そのときはオックスフォードにいたよね、確かね。だから、たまに日本に返ってきた時に「ちょっと飯でも」って、ディスカッションさせてもらったりはしてたよね。

琴坂:したね。

有安:友人とディスカッションとかはたくさんさせてもらったけど、メンターみたいな感じの人は見つけられなかったですね。絶対いたほうがいいけど、いなかったから、僕はペンとノートを持ってカフェにこもるみたいなことをやっていて。結構非効率的だったのかなという気はしていますね。

琴坂:今やり直すとしたらどうします? アイデア探す時に。有安さんが持っている知識を全部なくして、一からやらなきゃいけない、大学生とか社会人4、5年目ぐらいで誰かを探すとき、有安さんなら何やります?

有安:アイデアを探すときは、一次情報に触れまくるかな。あと、自分がすごく好きなことで他の人が不得意なこと、自分がずっとやれることをうまく見つけるっていう2方向みたいな感じですかね。

琴坂:一次情報に触れまくって、自分ができて他人ができないことをやる。

有安:好きなことをやるのがいいと思いますけどね。好きなことをやるのが一番なので。

琴坂:好きなことって何ですか? 一般論としての好きなことっていうのは、どういうことを発想するんですか?

有安:何ですかね。すごく課題解決したい領域とか愛を持てる領域

琴坂:愛を持てる領域。

有安:あとは、単純に事業をひたすら成功させたい、キャッシュフローを作りたいみたいな人だったら、それが手っ取り早くできそうなもの。起業家によるじゃないですか。とにかく成功欲強い人もいれば、社会貢献欲求ドライブしている人もいるし、他の業界を変えたいみたいな人もいる。なので、自分の居場所を見つけることがまず最初にあって、その中でいろんなギャップを見つけるみたいな。

琴坂:自分の居場所を見つける。一次情報に触れまくる。

人が増えるとノイズが増える

堀:皆さんから頂いている質問にいきますか?

(質問)スタートアップでの仲間探しに有効なコミュニティなどあれば教えてください。それとも身近な友人などを当たるほうがいいでしょうか?

有安:大学です。学校。

琴坂:慶応SFCしかない(笑)。

有安:あとは、同僚とかじゃないですかね。僕の出資先だと超稀有な例で、OLTA(オルタ)という会社は、社長の澤岻さんがyenta(イエンタ)で経営陣と出会っています。もっと昔だと、ソーシャルランチで会ったりしている例も聞いてましたけど、最近あまり聞かないので、やっぱり昔から知っている友人とかが多いんじゃないですかね、同僚とか。

堀:僕は美容整形のMeily(メイリー)っていう会社に投資しているんですけど、そこの川井さんっていう女性の社長はCOO、共同創業者をTinder(ティンダー)で見つけてましたね。

有安:すごいですね。それはちょっと珍しすぎ。

堀:大学とか同僚って言っているのは、勝手知ったる人のほうがいいというアドバイスなんですか?

有安:そうですね。やっぱりずっと長くやっていくじゃないですか。だから知らないのは結構難しいんじゃないかなって気はしますけどね。

堀:有安さんは、大学もしくはユニリーバの人と一緒にやったんですか?

有安:僕は1人でやったんですよ。見つけられなかったんです。僕がやり始めたのは25、26歳頃だったから、あまり周りでベンチャーに飛び込むみたいなタイミングの人がいなかったし、っていう感じですね。もちろんいたほうが絶対いいですけど。

でも、正直に言って、アイデアがすごいイケてたら結構集められると思うんです。なので、最初の領域とモデルは1人でやったほうがいいかなと思っている派です。2人目、3人目とか人が増えてもあまり変わらないので、1人でやる領域、プロトタイプくらいまではやっちゃって、それからでもいい気がしますけどね。少なければ少ないほうがいいかなと。

琴坂:逆に、たくさんいたほうがMVP、プロトタイプも作りやすいかもしれないし、発想も広がるみたいなことを言う人もいますけど、有安さんはどうなんでしょう?

有安:多分MVPを作るときのボトルネックって、それの設計とか仮説検証のやり方みたいなところなので、あまり人が多くても関係ないかなと思う。むしろノイズが増えちゃうかなって。

琴坂:人が増えるとノイズが増える。

有安:2009年に1ヶ月弱くらいシリコンバレーに視察に行って、現地の人とかGoogleの人と会ったりとか、いろいろ回ったんですけど、「今事業このくらいで、こういうことやってて、6人でやってる」とか言ったら「多いな」って結構言われて。あっちはすごくスモールにリーンにやるのが定着していて、結構意識が違うなって思ったのを思い出しました。

経営は「心」でやる

(質問)プログラミングはある程度できたほうがいいと思いますか? あるいは、自分が得意な営業やマネジメントや事業のことを深めるほうがいいでしょうか?

有安:別にこれはプログラミングに限らず、たとえば会計の仕分けもそうかもしれないし、M&Aの法律の理解はある程度あったほうがいいのか、と同じで、リソースを外部調達できるかどうかみたいな話ですよね。

多分、自分がプログラミング超得意じゃなくても、データベースというのはどのように設計されていて、プログラミングの言語選択というのはそれぞれどういう考え方があって、システムが大きくなるとどういう問題が起きて…とか、そういう全体感を理解しておいたほうがいいですよね、エンジニアと話すために。それが、ウェブとかアプリという領域であればの話ですけど。なので、最低限知っておいたほうがいいんじゃないですか、くらいですかね。

琴坂:有安さん自身も最低限以上はやっていないという感じですか?

有安:そうですね、学生の時にお2人と同じSFCでJavaの授業を半年間受けて、落ちものゲームを作るところまでは一応やって、確かAもらった記憶はあります(笑)。

創業した時はPHPでフォームだけ作りましたね。あとMovable TypeでSEOの最低限のことをやったりとかしましたけどね。それをやると、どういうふうにできるのかとかわかるからいいんじゃないですかね。CMSを自分でちょっと改造して、当時はNucleusってやつでやったんですけど、サイタに登録している先生に、それぞれIDとパスを発行して、それぞれCGMできるようにするくらいのことを、あり物のCMSとプラグインをごりごり組み合わせたりしたりして作ったりはしました。

琴坂:逆に、有安さんのコアスキルというか、自分の基軸になっている能力って何ですか?

有安:コアスキル?

堀:何だろうね、有安さんってね。

有安:僕はそんなスキルがあるほうじゃないですけど、あえて言うならバランス感じゃないですか。

堀:柔らかいですよね、有安さんって。

有安:そうかも知れないですね。多分そんなに気が強いほうじゃないので、敵はそんなに作らないようにするし。

堀:すごく柔らかくて、怒っている印象があまりないですけど、事業がうまくいかなくてつらい時とか、アンガーマネジメントやストレスマネジメントみたいなのってどうやっているんですか? あまり本に書いてない内容だから改めて。

有安:そうですね。本当30代になってから気づいたんですけど、アンガーマネジメントもそうだし、メンタルってまじで大事じゃないですか。むしろ経営って心でやるものだから、メンタルが如実に影響するんです。それを20代では理解してなくて、結構イライラしていたんですけど、僕20代後半でサーフィンと出会ったんです。当時はお金がめちゃくちゃないので、フィットネスに行けないんです。行く気にならないというか。フィットネスに行けないんだけど、サーフィンって全然お金がかからないので、毎週サーフィンやっていましたね。ストレスはかなり減っていた感じはしますね。

琴坂:「経営は心でやる」ってもうちょっと深く聞いてもいいですか?

有安:そうですね。日本の偉大な創業経営者の人と話していると、みんなメンタル強いじゃないですか。「自分がやりたいことをやっているだけだよ」みたいなのをすごく感じる。だから、経営者のメンタルの状態とか意思の強さ、「こういう社会にするんだ!」とか「こういう事業を作るんだ!」みたいなのってすごくレバレッジが効くと思っていて。その意思が強いと自然とビジョナリーな言葉が創業経営者から出てくる。

だから、極論さっきの話しで言うと、多分何もできなくてもいいんですよ、創業経営者って。ただ、諦めなくて、やりぬくというか。最後まで逃げないみたいな強い意思があって、それが言動に表れ続けていれば、多分スキルがある人って集まってくると思う。ビジョンを語るみたいなのが一番大事なんじゃないですかね。

堀:それって最初のコーチ・ユナイテッドという会社を経営していて、何年目くらいに気づいたいたんですか? やる前からわかっていたとか、もしくはクックパッドに売却した後に気づいたとか。

有安:ビジョンという言葉はくさいから使っていないですけど、「リソースがないなかで巻き込まなきゃな」っていつも思っていましたね、20代半ばの自分は。凄腕エンジニアだったり、すごいデザイナーとかに「有安はすごく面白いプロジェクトをやっている」「何かわからないけどネットで先生が見つかるという新しいプラットフォームを作ろうとしている」「自前に決済も用意して、自分たちで集客もしていて、単なるマッチングではなくてバリューチェーンを構築して、プライシングもいじって。かなり手をいれて、かなり頑張って新しい経済圏を作ろうとしている」っていうことを理解してもらえると「これすごく面白いね、世界初じゃね、これ」とか言って、手伝ってくれるわけです。なので、そうやって巻き込むのを繰り返しているうちに、うまくなっていきましたよね。

琴坂:それって「最初は心じゃなかった」ということなんですかね? 実態で説得するというように聞こえたんですけど、実際にシステムがあって決済があって…とか。

有安:でも、「それが実現するとどうなるのか、どういう価値観によってこのサービスが社会に羽ばたこうとしているのか」みたいな話を、本当に腹の底からする。格好良く言わなくていいんですけど。というのは、インターン生、求職者、アルバイトの面接をしにきた人、あらゆる人に話していました。

もっと言うと、サイタの先生って、最後はオーガニックに毎月1,000人とか1,500とか応募がくるようになったんです、アド無しで。でも、初期はこないから人づてなんです。あとは、ゲリラ的なアプローチで集めていて、応募して100人きて、そのうち10人が先生として登録できるみたいな感じだったので、100人とやり取りしなくてはいけないんですけど、そこの巻き込みのコミュニケーションとかは、ビジョンそのものを言うみたいな、価値観をひたすら言うみたいな。

琴坂:めちゃくちゃ僕の研究テーマに近いので、すごく個人的な質問になっちゃうんですけど、学術的に一番興味があるのは、インテンショナルかアンインテンショナルかによってすごく差分があって、これはミックスだと思うんです。ナチュラルに信じているという自分を表現しているものと、ツールとしてのコミュニケーション、作っている自分のミクスチャーってあると思うんですけど、特に100人とか200人に対して話していると疲れませんか?

有安:疲れる。

琴坂:特に、作っている自分とかは疲れると思うんですけど、どうやってたんですか?

有安:でも最初6・4か7・3くらいで信じていて、3くらい盛っているのを、ずっと言ってると自分にいつも言っているのと同じだから、だんだんそれを信じ切ってくるみたいな。教祖様になってくるというか。

琴坂:自分が洗脳される感じですか。

有安:そう。「これが本当に世の中に普及したらこうなるよね」「インターネットってすごいよね、個人をエンパワーメントするんだよね」「5年後10年後絶対にこうなるから、その中でうちは…」みたいな話をするわけですけど、やってるとどんどん(自分が)感化されるんじゃないんですか。

琴坂:有安さんは、もうそれが出来上がっていると思うんですけど、有安さんが投資している方々で、それができている方とかっているんですか?

有安:一般的に最初はできないから、全然なくていいと思うんです。あと、ビジョン持ってないとだめだというおっさんはフェイクかなと思っていて、それよりも月10万円稼ぐことのほうが大事かな派なので、僕は。

ただ、やっているうちに社会的意義がないと組織は作れないことに必ず気がつく。みんなお金のために働いているのではなくて、やっぱり何らかの意味を見出したいじゃないですか、自分の人生の時間を使う対象に。だから、一生懸命言語化するという努力をしているうちに、だんだんビジョナリーになっていくみたいな感じはします。

唯一1社例外があるとすれば、僕は今90社出資していてなかで、キャディっていう製造業のプラットフォームを作っている加藤勇志郎さんは、初めて会ったときからビジョナリーでした。多分、そこまで理解して、ちゃんと投資家の僕向けに語っていて。話し始めて8分くらいで「1兆円起業を作る」というのを明確に言っていた。1兆円と言う人はたまにいて、それってすごく風呂敷広げているだけの場合が多いんですけど、加藤さんは「どのように1兆円に達成するのか」を理路整然と語られていて、すごくステップが見えていた。

琴坂:単に1兆円ってぶっちゃっけているのではなくて、論理的な説明があって、ちゃんとステップが明確であったというのが差分ですかね?

有安:そのステップも全然変わるんですけど、本人の腹落ち感ですかね。覚悟と腹落ち感のミックスみたいな。本人が腹落ちしていると、やっぱり説得力がでるじゃないですか。凄みというか。そこの腹落ちじゃないですかね。

堀:この本の中でも「ビジョンいつ頃作りましたか?」っていう話をいろんな起業家にしたんです。たまたま偶然、キャディの加藤さんの話がでましたけど、ラクスルの松本さんはDay1からビジョンを掲げてたって。自分しか社員がいないんだけど(笑)。

有安:それって印刷の比較サイト、アフィリエイトサイトのときから?

堀:そう。印刷領域で起業するって決めたとき。

有安:なるほど。それはすごい才能だと思いますね。そういう人は結構すごい人なので、そういう人を目指そうとすると辛いじゃないですか。

琴坂:辛そうですね(笑)。

有安:だから、僕みたいな凡人とか普通な人は10万円を稼ぐところから。でも、やっているうちに絶対成長するので。

アイデアは飲み会のネタでいい

堀:サイタにたどり着くまでに没になったアイデアって、数えてもないし覚えてもないと思うんですけど何個くらいあったと思います?

有安:僕は5つか6つだった気がします。

堀:今だからこそ言える恥ずかしいアイデアとかないですか?

有安:ありますよ。今思い出した、言っていいですか? どこにも言ってないやつ、言っていいですか?

琴坂:まじですか?やった(笑)。

有安:外で映画を見たら気持ちいいなと思って、屋外で。屋外で映画を見たりしたいなと思って。金取って、砂浜とかで。江ノ島とか。でも、映画の権利があるじゃないですか。だから、権利が切れた映画を使って、そういった屋外イベントをできないか、みたいなのを、すごく映画好きなやつ2人と僕で週次ミーティングしていたことがあります。

1人はその後グリーに転職して、もう1人はGoogleに行って、その後Facebookに行って偉くなっているんですけど。やりたい方向はあるんだけど、ビジネスモデルがなかなか作れないってなって、ただの飲み会になって、終わるみたいな。

琴坂:聞けば聞くほどwithコロナ的な感じがするんですけどどうですか?

有安:そうですね。でもそんな感じでいいと思っていて、飲み会のネタでいいんですよね、まじで。だから、難しく考え過ぎている人が多いなと思っていて。面白いとか誰かがいいねって言ってくれそうということは、誰かがお金を払ってくれるかもしれないわけじゃないですか。なので、「何かいいよね」っていうのを言葉に出して、キャッチボールをしていくうちに「これって商売になるのではないか」みたいなのが、飲み会とかから生まれるのは全然あると思うんです。

堀:何かあったよね。原宿の交差点からSFCに車で行くと、よみうりランドの近くにドライブインシアターみたいなのあったよね。

有安:本当ですか? 知らないです。

琴坂:それが進化するバージョンもあるかもしれないということですね。

投資先は総合評価で決める

(質問)投資する際に、見るポイントがたくさんあると思いますが、どのような点に注目して判断されていますか? あえて三つ挙げるとしたらなんでしょうか?

有安:それもすごくよく聞かれて、僕いつもこういうとき「市場選択です」と言ってますね。格好良くというか教科書っぽく言ってたんですけど、もうちょっと言うと、採用面接と同じなんです。採用面接の時に「何を見てますか?」って言っても「履歴書です」とか「前職での頑張り度合いです」とか、そこだけじゃないじゃないですか。だから、総合評価なんですけど、自分の中で腹落ちするかどうかなんです。多分、その腹落ちはひらめきとかアートとかではなくて、自分の中にあるパターンマッチングなんです。「これまでこういう人いたな、この人すごいバリキャリだなみたいな」みたいな。「そういう人がこういう事業をやるとこうなるケースが多いな」という脳の引き出しがいっぱいあるので、それと一致するのかどうかを確認するみたいな感じ。

すごくプレゼンが下手でも、言っていることが支離滅裂でも、そういう起業家で成功する人もいるし、バリキャリじゃなくても成功する人もいるし。領域とのフィッティングもあれば、その人が組織を作れるかどうかとか、いろんなことを考えるんです。だから、全体としていけそうな感じがしたら出資します。いけないなと思ったらいけないポイントを一生懸命聞く、質問して掘る、みたいな。

琴坂:足りなかったら有安パッケージで支援するみたいな(笑)。

有安:有安パッケージにそんなパワーはないですけど。

琴坂:全体の完成形が重要ですかね?

有安:多分、エンジェルとかメンター、堀さんもやられていますけど、彼らが支援できるのはPMF前のときの作業を(起業家に)より正しくやらせてあげること。変な仮説検証していると余裕で1年とか過ぎ去るので、「それって別に2週間でいいよね」って横で言ってあげられるのが結構大事かなって気はしますね。

琴坂:正しい検証というのはどんなイメージを持てばいいでしょう?STARTUP本にもこのトピック書いてあるんですけど。

堀:もちろん、有安さんは熟読してるからね、この本に書いてないことだけちょっと話してもらって(笑)。

有安:(笑)検証って本当に難しいですよね。

堀:投資先じゃなくてもいいですけど「あ、違うんだよな〜、それ」みたいな。「その検証って違うよね」と、見ていて感じることはあるんですか?

有安:すごく真面目な人で、ずっとヒアリングしている人とかいますよね。

堀:ヒアリングはだめ?

有安:ヒアリングは参考にはなるんですけど、新しいプロダクトとか、普通のプロダクトとバリュープロポーションずらしたチャレンジとかだと、ユーザーが言語化していなかったり、気づいていなかったりするので、ヒアリングしても出てこなかったりしますよね。

だから、やっぱりよく言われる鉄則で、「発言よりも行動を見ろ」みたいな話で。ユーザーがリピートして使い続けるのかどうかとか、課金をするのかどうかとか、そっちのほうが全然ファクトに近いので、そっちを見るほうが本当はいいんですよね。だから、仮説検証も「可能な限りださださのプロトタイプを出す」というのを、アホみたいにいつも勧めていますけどね。

琴坂:ださださのプロトタイプでしっかりと行動する。ここら辺って、ある程度定石ありそうですよね。これは外しちゃだめだろう、みたいなのが。

オンライン教育の市場は大きくなる?

堀:僕も1個聞きたい質問があって、サイタって習い事のマーケットプレイスじゃないですか。今、コロナで小学校に行けないとか幼稚園に行けないとかで、習い事とか教育系のオンラインサービスがすごく注目を浴びていると思うんです。教育って「インターネットでは難しいよね」って言われていたと思うんですけど、今すごい波が来ていて。過去にサイタをやっていたからこそ、この領域で有安さんがもう1回やりたいサービスとかないですか? これ聞いて「僕明日からやります!」っていう人はいるかも知れないので(笑)。

有安:多分、公教育のオンライン化とかはやばいですよね。ちょうどマーケットが開くタイミングですよね。今日も郵便で高校からきましたもん、「IT化をするので寄付金を募る」みたいな(笑)。OBから集めるというやつで「目標額1億円」って書いてあって、みんなすごい勢いでそこに予算を捻出している。まずは、私立の中学校高校がどんどんオンライン化をしようとする波があって、そこは一瞬マーケットがバーって開くタイミングなので、そこはあるかなとは思います。

堀:営業大変じゃないですか?

有安:営業大変ですね。でも、多分決まると1ショットが大きいので、全然できると思いますけどね、営業部隊持って。

琴坂:最初の事例を作るのは難しくて、そこをやったらフローも持つし、その実績でもしかしたら先に進めるかもみたいな感じなんですかね?

有安:だと思いますけどね。教育、習い事もそうですけど、難しいですよね、とっても。

堀:何が難しいんですか?

有安:そう。よく「何で難しいのかな」って考えるんです。日本がめちゃくちゃ貧しくなって英語をちゃんとやらないと、いい仕事に付けないとかになったら、みんな英語学習をもっと頑張ると思うんです。そういう大きな変化がないと、多分すごく儲かるビジネスにはなりづらいのかなという気はしますね。

アメリカはUdemyとか教育系ベンチャーがいくつか出ていて、売り上げが日本よりも伸びるスピードが速いんです。(アメリカでは)生涯教育を一生懸命やると、自分の年収が上がるじゃないですか、明確に。日本ももちろん上がるけど、そこまでドラスティックには上がらないし、社会の雇用の流動性とかそっちの変数が効いちゃってるかな、という感じがしますけどね。もちろん少しずつ変わってはくると思うんですけど。

投資家・VCにアプローチするタイミング

(質問)エンジェル投資家・VCの方にアプローチし始めるおすすめのタイミングをお教えいただけるとうれしいです。

有安:これ、堀さんの意見も後で聞きたいんですけど、自分でもりもり作れる人は別に後でもいいと思うんです、手許現金があれば。でも、手許現金もなく、壁打ち相手もどうしても欲しいし…ってなったらアプローチするのはありっちゃありかなと。

ただ、冷たいことを言うようですけど、エンジェル投資家・VCの元にもいっぱい起業家が来るじゃないですか。だから、何かしら光るポイントというか差別化できるポイントをつくって、「お、こいつちょっと面白そうだな」「もうちょっと議論してみるか」みたいに思わせないといけない。その競争は、すでにその時点でスタートしているので、そういう競争意識は必要かなとは思います。

琴坂:そうですよね。やっぱり堀さんとか有安さんだと、スパムメールに入ってくるくらいガーッときますよね。いろんな経路から(笑)。

有安:でも、基本みんな見てますけどね。堀さんどうですか?

堀:いろんな投資家がいて、いろんなスタイルがあるから正解はないと思うんです。僕は、早い段階から会って、壁打ちしたほうがいいのかなという気はします。

たとえば教育系で起業しようと思っていて、「こんな面白いサービスを考えたんです」っていうのを温めて、有安さんにぶつけにいくじゃないですか。それで「いや、それ俺も過去にやったんだけど、うまくいかなかったんだよね」とか「それはうまくいかないかもしれないけど、こっちやったほうがうまくいくんじゃない?」みたいに、先輩起業家、エンジェル投資家、VCのほうが、絶対じゃないですけど情報とか経験からして「もっとこうしたほうがいい」っていうアドバイスが出てくるケースは結構あると思っていて。それが100%うまく行くとは思わないけど、そこでみんな宝探しというか、情報収集して、「アメリカにはこんなスタートアップがあったのか、知らなかった」とかって調べて、もっとこうやったら面白いんじゃないか、みたいに仮説が進化していくと思うんです。なので、仮説を進化させるという観点では僕は結構早めから会いにいったほうがいいのかなという気がします

有安さんが言っていたみたいに、プロダクトを自分で作れて、実際に動くものがあって、しかも、実際にリリースしたら1,000人くらいの人が使ってくれて、リピート率も結構高い、みたいなのができちゃう人は、KPIがバチって決まった段階でいいんだけど。ちょっとまだふわふわしている段階であれば、事業のヒントをもらいにコミュニケーションを早めに取ったほういいのかなという気はしますね。

有安:そうですね。あと調達なしで行けるなら、アプローチしないで行くというのも全然いいと思います。というのが2つ目でした。

(質問)今、もし資金が100万円しかなかったら、どのよう業界でどんな事業でどのようなアクションをして起業しますか?

有安:難しいな。今あまりネタがないんです。100万円だと確かに少ないですよね。でも、別に資金が100万円あるかどうかは別にして、ある程度詳しい勝手知ったる業界で、何かしら課題を見つけて、その解決を事業にできないかを考えるみたいな感じですかね。

堀:ちなみに本に書いてます。『とにかくやる事業に対して誰よりも詳しくなれ。』

(質問)delyの堀江さんに憧れています。でも、彼も2012年とかのスマートフォン前の恵まれた時期にスタートアップできたから上手く行ったのかも知れないし、「私が目指すには合ってないのかも」と思っています。コロナ後の時期にベンチマークするとよいおすすめの先輩起業家を教えてください。

有安:これってすごい良い質問というか、いい問いかけで。いつやるかとかタイミングが全てかなと。delyの堀江さんってすごくやりきる力あるし、僕の会社でインターンもしていたので、すごく昔から知っていますけど、すごく意思が強いし、すごい勢いで成長したっていう人。確かにそのタイミングに波をちゃんと見つけて、スマホの動画のコンテンツの波にちゃんと乗ったというのはすごい。それでかなりの部分が説明できますよね。なので、意外とSTARTUP本に出ているような人で、考え方は参考にはできるけど、同じことをやっても多分タイミングが違って、違うトレンドなので、うまくいくとは限らない、というのはあるかもしれないです。

堀:本に照らし合わせると、考え方とアクションはベンチマークしてもいいかもしれないですけど、ビジネスモデル自体はちょっとベンチマークは難しいかもしれないですね。

(質問)コロナでオンライン教育が話題ですが、国内教育ベンチャーにチャンスはありますか?

有安:これさっき出たやつですね。ただ、営業は大変っていうのは、B向けだとそうですね。C向けはやっぱり発明が必要かな、という気はします。それは、バリュープロポジションの発明だったり、ユーザー獲得手法だったりという気はします。ビジネスって2種類あって、「領域を定めてちゃんとエグゼキューションすれば上手くいくよね」というのと、「ここマーケットでかいし良いけど、発明が絶対必要だよね」みたいなのが両方あるとしたら、教育は明確に後者なので、普通にやるのではなくて、どこかしらで一捻り、二捻り必要かなと思っています。

(質問)エンジェル・VCなどそれぞれのメリット、デメリットを有安さん目線で聞きたいです。

有安:エンジェルのメリットは放置してくれることです。あと、趣味なので基本的には戦うことはそんなにない。あと、その人が起業経験がある場合は、よりVCの人よりも細やかなサポートしてもらえる。デメリットは、VCの人と違ってプロではないので、飽きたらあまり構ってもらえないかもしれないですかね。VCのほうはメリット、デメリットどうですか? 堀さん。

堀:(VCのデメリットは)契約書が重くなる、みたいなね。契約条件が厳しくなりますよね、やっぱり。VCの場合は、人から預かっているお金を運用しているので、運用責任が生じちゃうわけですよね。同じお金ですけど、エンジェルの場合はエンジェルの方が自分で稼いだお金で投資されているので、先ほど有安さんが趣味って言ってましたけど、失敗したら「仕方ねーな」と割り切れると思う。でも、VCの場合だと、お金を出してくれている人に「何でこれうまくいってないんだよ」って詰められるわけですよね。ファンドの投資家の方たちに。やっぱり緊張感が違うっていうのはひとつありますよね。

有安:堀さんは結構怖いVCなんですか?

堀:そうですね。顔も怖いし、表現も口調も怖いし、三大天じゃないですか(笑)。

有安:でも別に、厳しい投資条件とかではないですよね?

堀:そうですね。有安さんと1社か2社ご一緒させていただきましたけど、かなりフレキシブルに対応させていただいたということで。

有安:そうですよね。あとYJさんは、上場した後売らないから。これすごくいいことですよね。すごいことです。

堀:売り圧力が親会社からないので。

有安:それもすごいなと思っています。

琴坂:第三者的にいろんなVCさんを見ていると、同じ「怖い」でも論理的で熱くて事業のためになる怖いと、そうじゃない怖いってありますよね。

「紙切れでは人の心を縛れない」

(質問)穐田さんに言われた言葉で一番心に残っているものは何ですか?

有安:これいろいろあるんだよな。ちょっと待って、言えるやつですよね。

穐田さんは多すぎてわからないな…。2つ思いついたんですけど、2つとも言っちゃいけないやつなので(笑)。

あれかな、M&Aって何社かお声掛けして、レターオブインテントが出てきて、個別のデューデリが始まって、基本合意した後そこから1ヶ月位細かいデューデリとM&Aの契約、買収の契約書の詰めみたいになるんです。そのプロセスで、穐田さんが驚くほど契約書にこだわってなかったんです。それは、当時COOの石渡さんを信頼していたのも、もちろんあるんですけど。とはいえ、結構、リーガル周り全然気にしていないなと思って、素朴に「何でこんなにゆるいですか?」みたいな質問をしたら「有安さん、紙切れでは人の心を縛れないんですよ」みたいなことを言ってて、確かにそうだなみたいな。それは今でも覚えています。あまり言えないですけど、先方からの提示で、おかしいくらいゆるい条項があって。他のオファーからには入っているはずのものがなくて、僕はプリントミスだと思ったんです、単純にスタッフの人の。「このタームシート間違ってますよね、もらっちゃったけど全然返せるので大丈夫ですか?」って聞いたら、そういうコメントが来たんです。

なので、やっぱり、本当に心が大事なんです。「契約書にはこう書いてあるからこうだよね」とか、人ってグリップが一時的にはできるかもしれないけど、長期的にはグリップできないので、やはり人の心を握るというか、信頼を作るって契約書とか紙切れじゃないなっていうのがあります。そういう出来事がいくつかあって、僕は穐田さんをすごく信頼してるし、今でもすごくリスペクトしてます。

堀:やっぱり百戦錬磨というわけではないけど、いろんな修羅場とか戦い抜いていたからこそ出てくるみたいな話ですよね。

(契約書は)VCとか投資家とか起業家の間で、メールとかメッセンジャーでやり取りをして、弁護士に「はいどうぞ」ってやっちゃっているケースがすごく多いと思うんです。でも、やっぱりその契約書の精神について、「なぜこの契約をどういう理由で結ぶのか」というのを起業家と投資家の間で、丁寧に説明しているケースをあまり見なくて。「契約書の内容くらいわかってて当然だろ」みたいな空気ができているとは思うんです。政府とかいろんなものが出てきたのもあるし、いろいろ進化してきたのはあると思うんですけど、今一度ちゃんと見直す必要があると思う。一度出資したら、長いと5年とか10年とか一緒になるケースがあるし。結婚誓約書みたいな話ですもんね。

有安:そうですね。やっぱり情報格差を使うとあまりよくないですよね。そういうのってめちゃくちゃ回るじゃないですか。「覚書を書かせた」とか、「アンフェアな書類を書かせた」とかそういう噂ってブワーって一瞬で回るし。シリコンバレーでもそうだってよく聞きますけど、みんな必然的にフェアにやらざるを得ないというのは、基本的なパワーとしてはありますよね、モーメンタムとしては。

琴坂:これ(YouTube LIVEを)そろそろ締めないといけないんですけど。

有安:じゃあ、僕が最後に思っていることを言っていいですか? これは学生の方が多いんですよね、若い方?

堀:そうですね。

未来の起業家へメッセージ

有安:僕は、起業したのが19歳の時だったんですけど、当時ってサーバー代もすごく高いし、AWSも当然ないし、あと、オフィスを借りられないんです。審査落ちるし。資本金1,000万とか必要だし。だけど、今はそういういろんな縛りがないので、実はかなり気楽にできるので、気楽にやるといいんじゃないかなってマジで思ってて、週末起業で本当にいいじゃんって思うんです

今とか、ずっと在宅でもできるから普通にサイドプロジェクトでやればいいと思う。「起業」って言うと大変そうだったりするけど、登記する必要性は全然ないと思うので、少しずつでも形にして、世の中に出して、App Storeに登録してみるだったり、ウェブローンチしてみるだったり、STORESとかBASEでお店を出してみるだったり…何でもいいんですけど、お金を1円でも稼いでみるみたいなことをやってみると、現役の学生の方でも、会社員の方でも、リアルな情報がいっぱい入ってくるのでおすすめしたいと思っています。すごくカジュアルにやるといいんじゃないかなって、転売ヤーとかでも全然いいと思います。学生さんだったら尚更。

琴坂:まず、それが第一歩で、感覚を積んで、アイデアを作って、検証して…そして、そのうち社会を変えていけるといいんじゃないかな、というわけですね。

有安:はい、カジュアルに、フランクになるといいなと思っています。

琴坂:はい、ありがとうございました。STARTUP LIVE、この番組は『STARTUP 優れた起業家は何を考え、どう行動したか』の発売を記念して、有安さんをゲストにお送りしてまいりました。有安さん、本日は貴重なお話ありがとうございます!この本早く買わないと入手困難になってしまいますよ。皆さんぜひ手にとってください。

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