2023年、コトからカルチャーへ
新年最初に観た映画はTHE FIRST SLAMDUNK。年齢的に漫画やアニメも好きだったけれど、時間が経っていてるので記憶も曖昧になっていました。だからというのもあり、鮮度を持ってとても楽しめました。熱狂的なファンはそれらの違いに原作者リスペクトと、だからこその原作100%感というところを賛美している声も聞こえます。作者が表現者として、何をプライオリティーにしているのかが潔く構成されていたので、私もそれにも共感しました。映画、アニメ、漫画と表現方法の違いもあるし、それぞれともにプロフェッショナリズムの良さもあるけれど、漫画家の解釈の映像化とはこうなるのか!というところも発見で新鮮でした。
まぁとにかく良い映画でした!新年1発目が当たりだと幸先よく感じます。今年は良い年になるぞ、と。ただ幸運頼み的なことが出来ない性分なので、改めて自身の仕事に置き換えて考えてみました。
モノからコトへ
以前からモノからコトへと言われていて、商業施設など様々な提案がそのように変化してきています。百貨店などのお仕事をお手伝いする機会も多く、ただモノを置いてお客様に買って頂ける時代から、様々なコトを想起させる提案型売り場に変わってきました。
例えばアウトドア用品の近くにコーヒーやウェアなども合わせて提案することで、キャンプや登山など自然の中での過ごすイメージができ、気分をあげてくれます。コトスタイルのクリエイションは雑誌つくりに似ています。アウトドア用品にコーヒーを掛け合わせると、焚き火を囲みながら自然の中で飲むコーヒーは至福の時をイメージさせます。まさにモノとモノを掛け合わせて、コトを提案するということが編集だからです。
私はその編集デザインの仕事の経験をいかし、ブランディングやアドなども編集的思考方を使い仕事をしています。因みにメソッド化を本にまとめていますので、ご興味ある方は日経BP社から出ているTHINK EDITをチェックしてみてください。
宣伝はさておき、今年はモノからコト、さらにその先のカルチャーまでやり切ろうと決めました。やり切るというよりはコト編集がカルチャー化していかないとクリエイティブの本質的価値はありません。
少し話はそれますが、ミッフィーの作者である有名グラフィックデザイナーのディック・ブルーナさんは、毎日自転車で事務所まで通っています。事務所前のカフェに仕事をする前に立ち寄り、コーヒーを飲むのが日課だったと聞いたことがあります。自転車通勤やカフェなどスローライフ感はブルーナさんらしいエピソードですね。
実は私も真似て、自転車通勤ではないけれど出社前はカフェでコーヒーを飲むようにしています。コーヒーを飲みながらその日のスケジュールを想像したり、確認したり、少し本を読んだり、少しボーっとしたりしています。
コーヒーを飲むためのカフェですが。実はコーヒーが大好きでもないし、強く飲みたいと思っているわけでもないんです。正直美味しいと心の底から思ったこともないかもしれません。恐らく皆さんの中でも多少共感して頂けるところもあるのではないでしょうか。逆にコーヒーが美味し過ぎで大好き過ぎてと言う話もあまり聞いたことはありません。また、会社の近くにはドトールもベローチェもスタバもありますがそれぞれ賑わっています。
中でも一番高いスタバが特に混雑しています。スターバックスは、アメリカ本土で当時は無かった本格的イタリアンコーヒーを提供したことが人気を集めブランドとして確立しました。ファーストフードや、レストランの付け合わせの大味のコーヒーしかなかったアメリカだったから成立したのだと思います。
一方、日本にはコスパが良く、日本人の口に合う、コーヒーを手軽に楽しめるドトールのようなコーヒースタンドや、喫茶店がすでに存在していました。そんな日本で高額なスタバが成功することを誰が想像できたでしょうか? 上陸した瞬間は新しいものが好きな方や、感度の高いアーリーアダプーを筆頭に話題にはなることは想像出来ます。インフレで物価が高騰し、寒い冬もエアコンをつけないで部屋で厚着し、光熱費を節約している今もなお、混雑しているのです。美味しさの価値に大きな差があるわけではないのに、何故スタバの方が人気なのでしょう。
スタイルがあればそれが行動になる
それは他のカフェでコーヒーを飲むよりもスタバの方がスタイルがあるからです。コーヒーそのものの価値ではなくサービス、環境などまさにスタイルとしての価値、これが唯一無二のブランドです。コーヒーだけで勝負していないところは、まさにモノからコトですね。
そしてスタイルがあればそれが行動になり習慣化されます。それこそがカルチャー化です。コーヒーを飲みに行く、からスタバ行く、は似て非なるものです。
そしてまたそのコーヒー自体もカルチャーなんです。コーヒーから始まる1日、コーヒーブレイク、サードウェーブ、様々な表現が出来きることもカルチャー化の一つの傾向です。SNSでモーニングルーティンやコーヒーを丁寧に入れる作業、カフェでまったりする画もよく見かけます。私自身もまさにカルチャーとしてのコーヒーライフを楽しんでいます。コーヒーから始まる1日って、素敵にきこえませんか?
また、THE FIRST SLAMDUNK上映後にバッシュの売り上げが3割上がったそうです。その影響は日本に留まらず、アジアの様々な国でバスケットボールも盛り上がっているそうです。タイムリーで読んでいた漫画SLAMDUNKの時代でも、それがきっかけでバスケットボールをはじめた友人がいました。
誰かの人生のきっかけになったり、映画の中のスポーツが改めて人気になったりと、これもまさにカルチャー化です。
今も昔も人生に影響を与えることは雑誌や本、漫画や映画などメディアの必然的な役割です。メディアはカルチャーを醸成する装置であるならば、編集的思考でクリエイティブを稼業としている私としてのパーパスはカルチャー化なんです。大小関係なく誰かに影響を与えられる、そんな仕事をしてきます。