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【NewsPicks Creations事業責任者 纓田 和隆】メディアの枠を越え、関わる人全てを幸せにする事業をつくりたい(もちろん、最後は自分も)

ソーシャル経済メディアNewsPicksから生まれた新規事業「NewsPicks Creations」。新しい商品やサービスを開発したい企業と、ビジネスリテラシーの高いNewsPicksユーザーとを繋ぎ、生産者と生活者が一体となって価値創造を目指す場所「共創コミュニティ」をつくる。さらに、価値創造されていくプロセスや過程を社会へ染み出し、機能でない新しいコト(価値)をモノに与えるのも役割だ。

開発から発売までの過程(プロセス)は、ユーザーがモノを買う新しい判断基準となりうるハズ。この思想を体現するため、手始めにNewsPicks Creationsメンバーのこれまでの歩み(=プロセス)を余すことなくご紹介するコンテンツを始めた。第一弾は事業責任者である纓田和隆。彼の人生という1本の物語、どうぞ最後までお楽しみください。
(現在採用強化中でございます。ストーリーに共感した人はぜひ、こちらの募集中のポジションをご覧ください。)

プロフィール:纓田 和隆(おだ かずたか)
NewsPicks Creations事業責任者
2007年、米テック系ニュースメディアCNET、ZDNetの日本展開をするシーネットネットワークスジャパン(現:朝日インタラクティブ)へ入社。通信・IT系事業会社を中心に、BtoBのマーケティング支援を実行。リードジェネレーション広告を中心に記事タイアップ、セミナー運営、ディスプレイ型広告枠の販売を行う。2015年NewsPicks Brand Design(広告事業)の立ち上げに参画、シニアマネジャー就任。営業戦略立案、広告商品の開発、チームビルディング全般を担当。2020年からユーザーと企業の共創型商品開発支援サービス「NewsPicks Creations」事業立ち上げ、DivisionHeadに就任。

サッカーは僕に全てを与えてくれたけど、僕はサッカーを通じ何も返せていない

僕は物心ついたときからずっとサッカーをやっていました。ただ、サッカーが好きでたまらなかったわけではありません。単身赴任中の父親が月に1回、家に帰ってくるのですが、その父親に試合で活躍する姿を見せると喜んでくれるんです。それがうれしくて、もっと喜ばせたいと、サッカーをしている理由はその程度でした。

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(ラビットキッカー時代)

成長してもサッカーを続けましたが、そのモチベーションはちょっとずつ変化していきました。だんだんと、父親ではなく自分のためにサッカーを続けるようになったんです。

学生時代、友達をつくるのが上手くありませんでした。いじめられこそしていませんでしたが、自分からみんなの輪にうまく入ることができないタイプでした。ただ、サッカーをやっていれば、勝手に仲間ができて、自分の居心地のいい環境が自然と出来上がります。自分にとってはそれがすごくありがたかったです。18歳の夏、大阪の地区予選で敗退するまで10年以上、生活の中心はサッカーでした。

その情熱は学生時代が終わっても続き、大学卒業後は新卒で入った会社をすぐ辞めて海外のクラブチームの日本国内におけるマーケティングを事業とする会社に転職しました。

社会人1年目の冬のことでした。会社のことも社会構造も何一つ、世の中のことをわかっていない僕が、偉そうに「海外のクラブチームは日本のJリーグのチームと比べて20倍も稼いでいる、その違いは...」 などと語っていました。実力が伴わないのに意識ばかり高く、例えば資料作成を依頼されても「フォーマットがなければ作れません」と拒否。名刺交換すらまともにできないのに、悪びれもせず、努力もせず。その結果、たったの入社3ヶ月後、会社から出ていくよう言い渡されました。

「自分は悪くない、会社がおかしいんだ」と心から思っていて、当時好きだった女の子に愚痴をこぼしました。きっと、かわいそうな自分に同情し慰めてくれるだろうと思って。ところがその子からは「それはカズが悪いよ」と言われました。友人やどんなときでも味方でいてくれた人ですら悪いのは自分だと言っている。その事実を突きつけられ、ようやく目が覚めました。原因と結果の法則、という書籍を薦められ「あぁ、そういうことだったのか」と、社会人2年目の4月のことでした。

サッカー業界にとって役に立つ人材になるための修行を

その後もサッカー業界に携わりたいという気持ちは変わりませんでしたが、同時に今の自分では何も貢献できないなと悟りました。そこで、他の業界で修行をし、もっと成長してから改めて戻ってこようと決心しました。

どうせ修行するなら、サッカー業界に活かせるスキルが学べる場所がいい。そこで思いついたのがメディア業界でした。クラブチームの収益構造の基本は広告収入、その構造がメディアとほぼ同一であると思い、きっとメディア業界で成功すれば、サッカー業界でも通用するだろうと、漠然とした整理でしたがおぼろげにも道筋を整理していました。そこで、あらゆるニュースメディアに片っ端からエントリーをしました。

内定を頂いた1社に就職することに。入社したのは米国を中心にTech系のニュースを報じるWebメディアを運営する会社でした。就いた仕事は法人向け広告営業の一本。BtoBのマーケティング支援として、記事タイアップ、セミナー運営、ディスプレイ型広告枠の販売など、メディアで売上をたてるためのスキルを身につけていきました。


リーマンショックが与えたメディアへの影響

入社して1年ほど経った頃、順調に経験を積んでいた矢先、リーマンショックが起こりました。世界的に不況の波が押し寄せる中、メディア業界は大きな転換点を迎えました。それまでのメディア事業における収益源は、認知獲得、ブランディングなどと呼ばれる、投資対効果があまり厳密に問われにくい広告メニューが中心でした。しかし不況のなかで、どの企業も顧客獲得に向けた刈り取り型の広告が中心となり、壮絶なクリック獲得合戦が始まったのです。

そんな時代の流れに乗り、私は見込み客の個人情報を収集できるリード獲得型の広告枠の開発・販売を行うことに。狙い通り広告はよく売れましたが、同時にどんどんメディアの紙面が読者にとって鬱陶しい存在になりつつあると感じていました。ユーザーからするとせっかく記事を見に来たのに、アクセスしてすぐ画面全体に大きな広告が映し出されたり、個人情報を入力しないと記事が見られなかったりという状況になり、ニュースメディアの役割とは一体なにかという事がわからなくなっていきました。

しかしメディアや広告代理店側は、似たような広告枠をこぞって開発し、類似した広告がたくさん出回るようになりました。すると、これまでと同じ値段では広告が売れなくなり、価格競争に陥り業界全体がどんどん疲弊していったのです。

メディアがどんどん「鬱陶しい」広告に塗れていくなか、衝撃の事件が起きました。大手メディアが「ノンクレジット広告」という話題を特集で取り上げたのです。ノンクレジット広告とは、広告表示をせずにスポンサーに有利とされる記事を出すことで、あたかも第三者が客観的視点で発信しているかのように見せる広告のことです。読者の印象を誤った方向に操作してしまう危険があります。いわゆる「ステマ」とも呼ばれ、消費者を巻き込んで大きな問題になりました。

次々と勢いのあったメディアが「粛清」され、謝罪会見に追い込まれる様子をリアルタイムで見ているなか、自分の仕事がいかに社会に対する影響が大きいのかを感じました。ただ、メディアとは、そもそも生活者に正しい情報を伝えるという使命があり、それが達成されなければ市場は荒れ、扱う情報次第では民主主義のあり方にも影響を与えてしまう。

社会のインフラとしての責任の大きさを実感し、その大前提である「正しい情報を伝える」ができなくなってしまっていたことに、なんとも言えない嫌な気持ちになりました。

業界に変革をもたらす人材となるには、ゼロイチの経験が足りない

社会人8年目、30歳という節目の年だったこともあり、このままでいいのかとふと振り返りました。そして、ずっと同じ仕事を続けていても成長できないのではないかと危機感を抱きました。周りを見渡すと若いうちから出世する人もいれば起業する人もいれば、自分が今の場所で彼らと肩を並べられる活躍ができるのかとモヤモヤするようになったのです。

このままずっと同じ会社に所属し続け、広告販売のプロフェッショナルになったところで、最終的に貢献したいサッカー業界へ、その経験は転用できるのだろうか。もちろん、スポンサーを獲得したり広告枠を売ったりすることはできるだろう。しかし、せっかく他の業界で修行までして帰っていくからには、サッカー業界そのものをもっと良くするようなダイナミックな貢献ができる実力を身につけたいと思ったのです。

今後どのようにキャリアをデザインすべきか迷いながら、いろんな企業の人に会ったり、スタートアップ企業が多く集まるイベントに参加したりしていました。ただ、同じスタートアップの話を聞くなかでも、スケールする見通しが立ってきたフェーズに入ることと、何もないところから「ゼロイチ」で価値を生み出すことは別次元なのだろうなと思いました。

ゼロイチで価値を生み出すチャレンジが30代では必要なのだと思っていた矢先、とある方からダイレクトメールが届きました。それがソーシャル経済メディアNewsPicksを運営するユーザベースの人事担当者でした。

鬱陶しくない広告はつくれないだろうか?

NewsPicks自体はサービス開始当時から知っていましたし、自分もユーザーの一人でした。メディアのあり方そのものに限界を感じていた頃、NewsPicksを擁するユーザベースの創業メンバーと話をするなかで、メディアにはまた別の可能性があるのかもしれないと考えるようになりました。

当時構想されていたのは「プラットフォーム」と「パブリッシャー」の2つの言葉を組み合わせた「プラティッシャー」 という話。加えて、メディアが一方的にニュースを発信するのではなく、受け手であるユーザー同士がニュースを起点に個人の見解を発信しあう「コミュニティ」的な要素も盛り込み新しい生態系を生み出しにいく、全く新しい可能性を追求していることに、とてもワクワクしました。

ユーザーがコメントし反響を呼び日常の会話に溶け込む記事広告が出せれば、企業にとっても自社のファンが増えるきっかけとなるので、広告出稿の大きなインセンティブになります。ユーザーとクライアント、両者にとって良いサービスになると感じました。 自分がこれまで同じ業界の中で培ってきた経験が活かせることも後押しとなって、入社を決めました。

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(入社当時の纓田:右から2人目)

入社後最初に任されたのは、NewsPicks独自の広告モデルを作ることでした。一般的なメディアであれば、なるべく邪魔にならない端っこに広告枠を設置し、その枠をクライアントに買ってもらう、と考えるところです。なぜならユーザーは広告を読みに訪れている訳ではないから。

一方で、創業者の梅田さん(NewsPicks創業者 梅田優祐氏)や坂本さん(NewsPicks代表取締役社長 坂本大典氏)って素敵だな、ピュアだなって今でも思うのは「じゃあユーザーが読みたくなるような楽しい広告を作ったらみんな(ユーザーと企業)が喜んでくれるんじゃないかな?」と真顔で言うわけです。

既存の枠組みに因われず、受け手(ユーザーでありクライアント)にとって最高な体験は何か、コトの本質は何か、そうした思考を毎日浴びるようにして彼らと新しい広告のモデル開発が進んでいきました。

不安もありましたが、ワクワクの方が大きかったです。そうして、誰かがつくった道を走るのではない、自らでレールを敷く新しい挑戦「読者から共感される広告作り」が始まりました。

読者も広告主もハッピーになるコンテンツを目指して試行錯誤

クライアントへの説明責任で一番苦労したのはレポーティングです。記事についたコメントを全部整理して、クライアントにお届けするということ。ビジネスの第一線で活躍する著名人がコメントをしてくれるなど、これまでの広告ではありえないような、うれしい現象も起きましたが、反面問題も多かったです。

一番の問題はネガティブなコメントがつくこと。企業からすればわざわざお金を払って記事を制作・掲載しているのに、それで否定的な意見がついては困ります。立ち上げ当時の2015年頃は無責任なコメントが散見され、何百万円も払って広告を出してくれたクライアントから「批判的なコメントが多いので、すぐに記事の掲載をストップしてくれ」とお願いされることもありました。

どうすればより良い言論空間になるか、チームで検討が進む中、コミュニティチームからユーザー向けに「NewsPicksコミュニティ・スタンダード」が発表されました。同時に、実名で誠実なコメントを中心に掲載していくという我々のスタンスをはっきりと、社会に向けて宣言しました。

さらに広告出稿を検討しているクライアントに対しても、ユーザーの関心軸に立脚した切り口をもとに読み手に寄り添った広告訴求を提案していく、そうしたスタイルを徐々に確立していきました。従来の広告は企業側の主張・PRしたいことを伝えるのが通例でしたが、そこに対し我々は、徹底的にユーザーに寄り添い、読みたいと思えるコンテンツを作り続けていく、その意思を明確に表現したのです。

一方でクライアントの皆様にも我々のスタンスをご理解いただけるようコミュニケーションを取る努力をし続けました。「広告記事が何人に見られたか以上に、その思想や哲学に共感をしてもらえたか、どれほどその共感の輪が広がったのか、そうした共感軸を指標にしていきましょう」「自社の主張は大事です、ただ一定の共感を育み同じ目線に立った上でそれを伝えてみませんか」と。どうしても否定的なコメントがついてしまうこともありましたが「価値ある言論空間を生み出し、そこに企業姿勢を重ねることでブランディングとしませんか」と、そうしたお話を通じご理解頂けるよう、当時新しいカタチを創るべくプロの編集者である久川さん(NewsPicks Brand Designチーフプロデューサー 久川桃子氏)や呉さん(NewsPicks Re:gion 編集長 呉琢磨氏)らと奮闘しました。

さまざまな試行錯誤の末、ユーザーからのコメントの質が変わり良質な言論空間が醸成できるようになっていきました。同時に広告を出してくれる企業からも喜ばれることが多くなり、全然売れなかった広告枠が目に見えて売れるように。問い合わせも増えていきました。

もっと己のできることを拡張したい

広告事業は、軌道に乗ってからは毎年150%以上の成長を実現させていきました。同時に、このモデルの中長期的なロードマップを考えるようになりました、一体あと何年この成長が続けられるのかと。そして、入社4年目の2018年いっぱいで、たくさんの尊敬できる仲間が入社してきたこともあり、一度、担当していたセールスリーダーとしての役割を引き継ぐことに決めました。

同時に、無心に目の前の数字を追いかけてきたところから冷静になり、ふと俯瞰して自分の状況が見えるようになりました。そして、元々の入社理由である「サッカー業界に転用できる能力を身につけたい」が実現できたかと自分自身に問うことに。

自問する中で、まだ既存のメディアという枠組みから完全に抜けて商売をしていないことにモヤモヤしていることに気が付きました。当時の仲間と全く新しい形の広告を世に生み出したという自負はありましたが、NewsPicksが持っている「メディア」「プラットフォーム」「コミュニティ」という側面をまだ活かしきれてないと思ったのです。

また、「広告」というアプローチ自体への限界も改めて感じていました。様々なクライアントとお仕事をさせていただくなか、 広告が奏功し、事業がスケールするケースもあれば、何千万円何億円と広告投資したにも関わらず事業が伸びず、撤退を余儀なくされるというケースも何度か目にしてきました。

結局のところ、広告は商品やサービス自体が良いものであるほど力を発揮できることを痛感したのです。クライアントの社内で新しい商品やサービスを生み出すときから既に、お客さまの手に届けるための設計は始まっていて、広告はそのほんの一部分をご支援するものなんだと思いはじめました。

育休を経て新規事業へチャレンジ

そこで徐々に自分の仕事を後任へ引き継ぎつつ、メディア・広告の限界を超えるための新しい事業づくりに着手しました。

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(育休取得のため、チームへの仕事の引き継ぎ会を開催:中央)

最初に目をつけたのはリサーチ事業。とくに効果検証に関する「リサーチ」に可能性を感じました。企業がPRをしたあと、そのPRにどれほど効果があったのかを検証するサービスです。これまで「共感される広告」を創る中で、自分たちの提供するサービスがどこまで効果があるのかを説明するのが難しく、それが数字で測れるようになれば良いのではと思ったのです。

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(子どもとの一枚)

2019年の7月、2人目の子どもが生まれたのをきっかけに育休を1ヶ月間取得させてもらいました。育休中もリサーチ業界について調べるため、いろんな会社へ資料請求をするなど、新サービス立ち上げの準備を進行。そして育休復帰後から本格的に「NewsPicksリサーチ」という新しい事業の立ち上げに向け、動き出しました。

事業立ち上げを進めるなか、効果検証だけでなく市場調査のためのリサーチも需要があるのではと考えるようになりました。新しい商品やサービスを開発する際に、ユーザーが何に興味があるのかを調べることは非常に重要です。NewsPicksというメディアを使えば、会員である600万人の傾向を調べることが可能。そこで「あなたが欲しいのはどんな服ですか」「どんなサービスがあるともっと仕事を効率化できると思いますか」といった質問項目をクライアントと設定し、NewsPicksで会員に向けてアンケートを取るというサービスを始めました。

ただ、やっていくなかで、ユーザーからするとどんどんメディア自体が鬱陶しくなっていくと感じました。あるときは服について聞かれ、あるときはファーストフードについて聞かれ、その協力のお礼にギフト券がもらえる。まるで懸賞サイトのようになってしまうなと気づき、自分がやりたかったのはこういうことではないはずだと思いました。

ユーザーとクライアントが求めるのは検証ではなく「共創」なのでは?

このままではまずいと感じながら、同じリサーチ業界の会社に話を聞きに行った帰り、一緒に事業立ち上げに取り組んでいたメンバーと2人で喫茶店に入りました。

そこで、今後の事業の方向性について話し合うなかで、本当にクライアントが求めるものは何なのかという話になりました。クライアントは当たり前ですがリサーチをすることそのものが目的なのではなく、その結果を参考にユーザーから求められる商品やサービスを生み出すことが目的。であれば、リサーチに止まらず商品開発自体をNewsPicks会員と一緒にできるようにすれば良いのではないだろうか。

NewsPicks会員にとっても喜ばれるのではと直感で思いました。懸賞で繋がるのでなく、社会課題解決型のプロジェクトがNewsPicksに並び、そこに参画ができて「あの商品づくりに携わったんだ」と自身の腕試しにも、セルフブランディングにもなる。企業からすれば、ユーザーが新商品の開発に一緒に取り組んでくれ、さらに生み出した商品のPRにも積極的に関わってくれるかもしれない。両者にとって良いサービスが作れるのではと思ったのです。

リサーチ事業から商品開発支援事業へとシフトすることを決め、新規事業づくりのスペシャリストである人に相談をしました。すると今持っている仮説が市場でどう評価されるのか、なるべく早く試してみたほうが良いと言われました。

そして2020年1月、本格的に商品開発支援事業を前へ進めるべく動き出しました。

NewsPicks、ユーザー共創型の新商品開発支援サービスを開始 2020.02.06

のしかかるプレッシャーとつかんだ最初の手応え

本格的に事業立ち上げを始動したものの、すぐに売上が立つわけでなく......。会社員としてこれまでと同水準の給与が支払われることにすごくプレッシャーを感じていました。何も生産していないのに、ただ給料だけが支払われ続けることが重荷で、その期間が長くなるほどに焦りが募っていきました。世の中にいる社内起業家と呼ばれる人たちはこんな感覚なのだろうなと、少し理解できた気がしました。

プレスリリースを出したその日には、日本中のマーケターが集まるカンファレンスへ参加すべく宮崎にいました。影も形もない事業なので、スマホ片手に事業にかける想いを説明して回りました。広告の部署を立ち上げた頃と違って、NewsPicks自体に知名度があったので、たくさんの人が興味をもって話を聞いてくれました。ただ、全く売れる気がしませんでしたね(笑)。

2ヶ月ほどかけて100名近くのマーケティング責任者の方々とお会いし、うち2名の方にお話をしっかり聞いて頂き、契約を結ぶことができました。まだ何の実績もないサービスで、投資対効果も全く読めず、全てが仮説でしかありません。私が商談の場でお伝えできたことといえば、今世の中で流行している広告のあり方に疑問を感じていること、そして本当にユーザーが欲しいと思うものを、ユーザーと一緒になって作りたいということくらい。導入のハードルは非常に高かったと思います。それでも、なんとか稟議を通してくれたご担当の方には感謝の気持ちでいっぱいでした。同時に、「振り向いてすらくれなかったどの会社よりも勝たせたい」と心の底から思いました。

社会人になって初めて、お客さんが涙する瞬間に立ち会った 

PoC(概念実証)として始動した1社の支援先が、支援策のコアとなる「共創コミュニティの立ち上げ」までようやくこぎつけました。そして、クライアントの社内選抜で選ばれたコミュニティマネージャーが、参加メンバーに向けて活動方針についてプレゼンする機会がありました。

コミュニティマネージャーに就任したのは、新卒から13年近く現場の営業として結果を出してきたとある女性社員の方。伝統ある大企業の一員として働きながらも、徐々に自社の提供する価値が時代の変遷とともに支持されなくなり、必要とされなくなっていく。そうした現実を受け止めながら、どうすればこの会社を立て直せるのか必死で考えるも、共に支えてきた周囲の同期は会社の将来を鮮明に描くことができず離れていくばかり。そんな状況下においてプレゼン中にこんな話がありました。

「自分達の会社は本当の意味でお客様の声に耳を傾けてきていなかったのかもしれない。ただしまだ可能性はある。再起するにはこれまで自分達がお客さまに押し付けてきた商品やサービスを捨てて、本当にユーザーの声に耳を傾け、コミュニティ運営を通して新たな価値を会社に取り入れればきっと世の中に必要とされる会社に生まれ変われる」と。

彼女の選抜に関わった責任者の方も感極まる瞬間がありました。きっとマネジメントの立場として会社の事情や置かれている状況を理解しているからこそ、本人のプレゼンやその覚悟を聞けたことで、感じることが多々あったのだと思います。

長らくこの仕事をしてきたのですが、お客様が涙を浮かべるシーンに遭遇することはありませんでした。 まだ成功するかどうかも分からない施策に賭けてくれたお客さん、、、勝たせたいとこれまでもずっと思ってきましたが、さらにその思いが強くなった瞬間でしたね。

個人的にも、お客さまに対する向き合い方が根本から変わった瞬間だったと思います。きっとこれからどれだけサービスをブラッシュアップしていっても、そのベースとして残り続ける出来事だと感じたのと同時に、この商品やサービスを生み出す過程の出来事こそ、クライアントの姿勢を示すもので、もっと世の中に発信していかなければならないと感じました。

うまくいかない組織づくりから見えてきた、人材要項

サービスとしての形が見えてきたなか、2年目に突入しました。立ち上げからずっと数人の仲間と頑張ってきましたが、新規顧客獲得も考えると人員拡充が必要だとわかっていたので、一気に業務委託の方に入って頂いたり、他部署に応援を要請して兼業してもらったりしました。

ただ、チームを増員するなかで、どうしても業務委託の方々に社内のメンバーと同じ熱量を持ってもらうことが難しいと感じ始めました。社員と違って彼らにとって我々の仕事はいくつかあるうちの一つでしかありません。そもそも契約の形態上、切り分けられた業務に責任を持ってもらうのが道理で、それ以上を求めること自体が間違っていたのかもしれない。

求める人物像については、スキル以上にミッション共感、バリューフィットが非常に重要だと再認識しました。クライアントに尽くす姿勢や、利他的で周囲を引き立てる素養がある人の方が向いているのではないか。我々がこの事業で向き合う大企業は、これまで長らく素晴らしい商品やサービスを社会に提供し続けてきた。そんな企業に対し、価値の生み出し方を改めましょうというご提案をするわけです。だからこそ誠実で、ひとつひとつの物事を敬い、細部にまで誠意ある対応ができるヒトが必要である、そう思いました。

この事業を運営するにあたり、必要な人物像が徐々に明確化されていったのです。

社会の中で必要とされる存在になりたい

現在は、2度目の新規事業立ち上げ2年目で引き続きクライアントへの価値提供に奔走しています。足りないことを挙げればキリがないですが、少なくとも私は自分たちのサービスでメディアの在り方が進化し、より良い社会へ前進させる可能性があると思っています。

実績を積み上げることと合わせて、僕らの作ろうとしている世界観を世の中に対して発信することにも力を入れていきたいです。幅広いステークホルダーの方々からこのサービスがしっかり支持され、社会で存在感を示している状態にしたいです。そのためにも、まずはこの事業に共感をし、一緒に戦ってくれる仲間を集めなければと思っています。

いつかサッカー業界へ貢献をする。それも、既にあるサービスをお手伝いするのではなく、業界全体を良くするようなダイナミックで、インパクトの大きな貢献がしたい。私自身はサッカー選手という形でその姿を世の中に見せることは出来ませんでした。それでも、クラブチームの経営に携わり、業界に関わる人たちが幸せになるためのモデルづくりを通して、サッカー業界で活躍する姿を世の中に示していきたいと思っています。

実は心のどこかには、23歳で会社を出ていくことになったことも引っかかっているのかもしれません。あの当時は実力不足で何もできず会社に迷惑ばかりかけてしまったけど、あと少しで手土産を持って業界へ戻って行ける。それができてようやく、心の中のわだかまりが解消できるのかもしれません。

こう話すと、個人的な想いに仲間やお客さんを巻き込んでくれるなと、思われるかもしれません。ただ僕は、関わる全ての人がそれぞれで抱える「個人的な想い」を達成する場所としてこの事業(機会)を使ってほしいなと思っています。自分も含めた全てのステークホルダーの自己実現に向けて、残り少ない30代を駆け抜けていければと思います。

編集・執筆:種石光(NewsPicks Creations)
デザイン:武田英志(hooop)

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https://creations.newspicks.com/



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