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2 大峰奥駈道は見送ることに

2022年10月21日

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2008年の春先、ちょうど日本に帰っていたぼくは、ネパールで2001年にあったテラバーダ僧の友人のすすめに従って、熊野古道を歩いてみようという気になっていた。

毎年、帰国時にはお大師様の祀られている高野山に参詣に行っていた。そこから熊野までも近い。

なんとなく縁のある真言密教、お大師様のことを思い浮かべると、そこを起点にして歩き始めるのが良いだろうと思った。

もう一案あった。

吉野から大峰山を通って大峰奥駈道という修験道者が修練をしながら熊野へ抜けていく1週間ほどかかるルートだ。それも頭をかすめたが、宿泊できる場所、携行する食糧の重さ、炊事道具、テント、飲料水の補給場所、ルートの峻険さなどを考えると、自分には不明な点が多すぎて、ひとりで歩くには難易度が高すぎると思い、その考えは断念した。

スペインのフランシス・カミーノ沿いにはたくさんの巡礼宿、カフェ、バー、スーパー、雑貨屋があり、たくさんの巡礼者が歩いている。そんなルートと得体の知れない熊野古道<大峰奥駈道>では難易度が全然違うのだ。

2回のスペイン巡礼で合計1,800キロは歩いて、歩くことは日常の一部になってしまったが、今度は山の中を登ったり降ったりを繰り返す。膝への負担も半端ないだろう。そんなことが不安とともに頭をよぎった。

それでも2005年以前は、1日10キロ以上歩いたことがなかったぼくにしてみれば身体を使って踏破する物理世界は格段に広がった。無理をせず、徐々に、更なる世界の拡張に励みたい。そう思えた。

幸いなことに熊野古道が2004年に世界遺産に登録されたことをきっかけに、さまざまな観光資料が配布され始めていた。その中に熊野古道のルートを仔細に案内する巡礼マップがあった。これはぼくが古道を歩く上で大いに参考になった。高野山の宿泊案内所に行くと、小辺路、大辺路、中辺路、熊野三山とルート毎にマップが並べられていた。

例えば小辺路。

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これは外観図だが、これにはさらに詳しい以下の部分マップが付随していた。

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これだけ仔細な情報があれば、どこで水や食料が補給できるかなんとなく合点がいく。ひとりで歩く安心感にもつながった。

ミーハーな世界遺産めぐりと思っているぼくではあるが、世界遺産に熊野古道を登録して、ルートを調べ、印刷物にして広めてくれた自治体や関係者の皆さんには感謝したい。

この仔(正確には子が正解)細な地図が、ぼくの熊野古道巡礼を決断させる最後の一押しであったと言ってもいいだろう。

比較的フラットなカミーノ・フランシスを歩くスペイン巡礼と違い地図からアップダウンの凄さがわかったので、高野山に参詣したとき、四国巡礼に使う杖を買って歩くことにした。この杖はこの古道歩きで本当に役に立った。

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もし、歩きたいと思ったら、今ではネット経由で、世界遺産<熊野古道>に関わる多くの自治体からこの地図(PDF版)は配布されているので、手に入れて欲しい。

以下は十津川村のサイト。

つづく