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ヘブライズムの哲学~存在の優位性(2)~

存在の優位性の思想について、少しずつ踏み込んでいきます。

前回、創世記の一節をご紹介しました。その創世記は天地の創造から始まります。

はじめに神は天と地とを創造された。
『創世記』(1:1)

ここから、作用因の目的因に対する優位性を見出すことができます。作用因と目的因との関係については、以前マルタとマリア(作用因と目的因)において触れました。

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そこでは、イエスが目的因を象徴するマリアを、作用因を象徴するマルタに対してポジティブに扱ったことを示しました。

目的因と作用因の関係は幾重にも重なっていて、ヘブライズムの哲学だから目的因がポジティブで作用因がネガティブというわけではありません。しかし、ヘブライズムの特徴は創造主である神が天地を創造したことにあります。これはヘブライズムにおいて作用因が目的因よりも優位にあることの現れです。

この点は今後何度か説明していきますが、運動や作用をありのままに観察する近代科学の発展に繋がります。これがまさに存在優位の思想の特徴です。

それに対して、ヘレニズムのギリシャ神話では確かに天地創造の話はありますが、善のイデア不動の第一動者において明白であったように、目的因が優位にあります。

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以前にも「不動の第一動者のイメージ」において触れましたが、ギリシャの思想において、運動を目的因に従属させる傾向が科学の発展を妨げてきました。

極めて単純化・図式化して言えば、善優位=目的因優位、存在優位=作用因優位ということになります。

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