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生成AIが広げる専門職ジュニア層とシニア層の距離 − AI時代にどう強いチームを作るか

こんにちは、NEWhでBusiness Designerをやっている飯野です。

NEWhでは、Business Designerが持ち回りで毎週Business Designに関する記事を更新しています。私もその仲間になりましたので、早速記事をかくぞーーーーーという気持ちです!
いままでのマガジンは下記から読めますので、ぜひご覧になってください。

さて。みなさんも察するところかと思いますが、「ビジネスデザイン」と言ってもスコープが非常に広く、何を書くか正直迷うところ。
ということで、自由に(?)最近の個人的なビジネスでの興味関心について書きます。
それはこのAI時代に『どうやって強いチームを作るか?』ということです。

いろんな情報にアクセスしやすくなった今、いい市場・いいビジネスには競合も多く、競合他社に勝てる強いチームを作れるかどうかが、強いビジネスを作れるかどうか、ということと近い意味を持つようになってきています。

本当に参入障壁が高く、自社アセットとアイデアとビジネスモデルだけで勝ち切れるケースもあるのかもしれませんが、かなり稀なケースでしょう。
つまりは、繰り返しになってしまいますが、強いビジネスを作るためには強いチームは必須条件です。

生成AIは人材育成の味方・・・なのか?

じゃあどうやって実行できるチームを作れるか、という話になるのですが。そうすると必然的に、人材教育をどう行うか、ということに頭が切り替わっていくわけです。

生成AI時代の人材育成については、NEWhの取締役小池さんの記事に記載があります。

「AIが人間の仕事を奪うのではないか」「若手社員の下積み業務が代替されて、成長機会が失われるのではないか」という懸念の声も多く聞かれます。私も当初は、人材の育成には一定レベルの経験量が必要であるという考えから、これらの懸念に同意していました。しかし、現在は事業開発やnoteの記事作成で生成AIを積極的に活用してきた経験を通じて、この考えが覆されることとなりました。

小池さんnoteの冒頭より

ぜひ上記の記事も見ていただきたいですが、わかりますわかります、わかるんですけど、たぶんこれはですね仕事ができるの人が前提の話でありまして、僕はやっぱりこの生成AI時代に人材育成に悩む人は多いと思っていて、ごにょごにょ。

本人から逆でいいという許可も得たので、逆のことを書きます

ということで、ここからはちょっとだけみなさんの思考を広げる意味でも、この冒頭に書いてある「懸念」を掘り下げていこうかな、と思います。すみません、前段が長くなってしまいました。
(社外向けのnoteで社内の人のnoteに反論するみたいな感じになってしまいますが、まあこういうことをできるのもNEWhの雰囲気の良さだと思っていただければと思います🙂)

そもそも生成AIがビジネスに活用できる人は、育成フェーズにいない

人材育成、と言っても幅が広いので、今回のnoteではコンサル業界など、専門性の対価として費用をいただく業界に特化した話として書きます。事業会社の場合はまた違うと思うので、次回などに回します。
その前提で見ていただけますと。

前に生成AIと仕事の生産性に関する下記ツイート(ポスト?)をしたときにそれなりに反響をいただきました。やっぱり、多くの人が同じことを感じているのでしょう。

そしてもう少し踏み込んで考えたときに「生成AIを活用できる人」っていうのは、いくつかの前提条件があるのかな、と思い始めました。

  • ビジネスを俯瞰レベルで見れていて「どの工程で、どんな課題があり、その解決に生成AIが使える」っていうのが分解できている人

  • 生成AIが出してきた解答に対して、怪しそうなところ、もしくは改善できるところなど「質」の判断ができる人

  • 生成AIのメリットデメリットを理解した上で、メリットになりえる部分に使える人

  • 新しいテクノロジーをとりあえず使ってみて試しながら、トライアンドエラーをして自分の業務にフィットさせられる人

などでしょうか。項目同士が被っている部分もありますし、MECEにはなっていないですが、何が言いたいかというと、そもそもこの条件を満たしている時点で、育成対象の人ではないのでは?やっぱりそもそも仕事できる人じゃない? と思いませんか?

生成AIに限らず、新しいテクノロジーや活用方法がまだクリアに定まっていないものを自身のビジネスに活かせる人って、自分のビジネスや分野についてそれなりの理解度を持っている必要もあり、それができる時点である程度シニア人材(※)なのかな、と予想します。

つまりは、ジュニア層(※)で、生成AIを業務にバシッと活用できる人材はそこまで多くないのではないかな、と。

(※この記事ではジュニア層:1-5年目ぐらい、シニア層:難易度が高い業務ができる役職者、のようなイメージで使っています。議論を簡易化するためにミドル層はワードとしては使っていませんが、ジュニア層にいれていただいてもシニア層にいれていただいても構いません)

生成AIでジュニア層とシニア層の距離は広がる

ここまでは現段階での話をしてきましたが、ちょっとだけ視点を未来に飛ばしてみます。
これは答えもない問いですが、思考実験としては意味があるので、ちょっと頭を回転させてみて、生成AIが普及するとどう仕事のやり方が変わり、どう未来が変わるのか? を考えてみます。

生成AIのほうがマシなアウトプット出すじゃん ハラスメントがおきる

なんか強めの語句を使ってしまっていますが、思考実験なので……。
さて、生成AIを使って超人化したシニア層(※)からすれば、ジュニア層が出してくるアウトプットが「価値のあるものなのかどうか」の判断基準に「生成AIのアウトプットと比べてどうか?」という基準は入ってきてしまうはずです。
(※そんなシニア層ぽこぽこ生まれねーよ、とかは言わないでくださいね)

ただ前述の通り、生成AIをほんとうの意味でうまく活用するためには、ビジネス理解・経験が必要です。そして「生成AI自体を活用できる」と「生成AIをビジネスに活用できる」の間には距離があります
つまりジュニア層のアウトプットは、シニア層が生成AIを使って出した情報よりも質やインサイトの観点で劣ってしまう可能性があります。仮にその場合、見出しの通り「生成AIの方がマシなんだけど?」という状況になってしまい、ジュニア層に仕事を任せる意味ってなんなんだろう、と再考する必要がでてくるかもしれません。

「仕事ができる人」ができる範囲が広がり、ジュニア層に仕事が来にくくなる

生成AIだけに限らずノーコードツールも多くできてきており、職種ごとの壁は薄くなっています。マーケターがちょっとしたエンジニアリングをしたり、デザイナーがビジネスサイドの動きをしたり……というような動きはこれからもっと活発になっていくでしょう。
これはいい効果もありますが、できる人にとっては「わざわざこの仕事、他の人に頼む必要があるか?」と自問することになり、場合によっては「自分でやった方がクオリティも高く、早くできる」状態になります。
これは、スキルを学び中の人に仕事が回りにくくなってくることを意味します。
また、雑務周りも同様のことが起きます。そこまでスキルがそこまで必要でない仕事はソフトウェアで(もしくはソフトウェアを活用できる人で)代替できる未来はどんどん加速するでしょう。

仕事が短縮されるため、ビジネス的には単価をあげたくなる。シニアに仕事が寄りがちに

どんどん仕事が効率化されると、3ヶ月でやっていたものが1.5ヶ月でできる……なんて事例もこれからどんどんでてくるはず。となったときに人工(にんく)ビジネスをやっている会社は、その会社を存続させるため今までとビジネスの方法を変えなければなりません。
例えば、プロジェクト期間が短くなった分、案件数を増やすことで今までと同じ売上を確保するいうことも考えられますが、そのためには新しい案件を獲得するための営業工数が必要になります。つまりは、その営業工数分、以前と比べて利益はマイナスになってしまうわけで、どうしてもプロジェクト単価をあげざるを得ません。

となると、顧客対面は優秀なメンバーに任せたい力学が働くわけなので、いままでジュニア層で対応していた案件も、シニア層で対応せざる得ない、なんてことも容易に想像はできます。


これらをまとめると、ジュニア層とシニア層の経験の差がさらに広がる構図になりえますし、仕事やプロジェクトを一緒にやっていく機会も少なくなる可能性もあります。その場合直接的なコミュニケーションも減るので、組織の暗黙知も引き継がれなくなります。
そしてジュニア層が成長するための経験の機会はごっそり抜ける可能性すらあります。
となると、さらに人材育成が難しくなる。ふむ、どうしたものでしょうか。

生成AIの使い方は学べるが、どうビジネスに活かしていくかは簡単に学べない

さて、いろいろ考えてみたわけですが、短期的に見ると、ジュニア層に仕事を任せる意義は減ってしまうわけで、その反面シニア層は忙しくなってしまう可能性もあるので、人材育成の意義を見出すのもそのリソースの捻出もどんどん難しくなるのでは? と個人的に思っています。

もちろん中長期的には人材育成をしないとその会社は困ってしまうわけなので、優先度は低いというわけではありません。ただ、いままでの人材育成と方法も大きく変わりますし、なかなかに困る会社も多く増えてくると思います。

そして、この記事自体も「なんだか難しい時代だよね!」で終わってしまうと片手落ち感があるので、最後に僕なりの「こんな風にすればAI時代の人材育成ができるのでは……?」を考えてみます。

ただし、これは企業側がどう育成プランを提供するべきかというよりは、学ぶ側がどういう意識で日々取り組めばいいかという観点です。

ビジネスのフレームワークをもう一度叩き込む

生成AIを活用するために、ビジネスをいくつかの観点で分けることが重要だと思っています。というのも、必要な問いが立てられなければ、生成AIは使いこなせないわけで、そのためにはある程度領域を絞った質問をする必要があるからです。

そこで、ビジネスフレームワークの理解、はこれまで以上に重要になると考えています。SWOT、3C、PESTなどなど、なんでもいいのですが、多くの手法を知っておいて、どういう条件でどのフレームワークを使うのかを理解しておくと、生成AI活用の第一歩としてはとても楽に始められます。

また、生成AI自体は多くの情報を短時間で吐き出せてしまうが故に、人間がまとめにくい、というデメリットもあります。そこでもフレームワークを使った情報整理は大きな意味を持ちます。

仮でもいいので自分で考えてつくって回して、「決める」という経験を貯める

おそらく経験は会社から与えられるものではなく、自分から取りにいくものになるでしょう。そしていまはありがたいことに生成AIを活用すれば、いくつもケーススタディを確認できるし、解くことも、ケースと解法について相談することもできます。

特に、これからは得られる情報が飛躍的に増えることでいままで以上に「なぜこの戦略なのか、なんでこの方法なのか」を説明する能力や決め切る能力が必要になってきます。その部分の経験をとにかく増やしておくというのは非常に重要なことです。

特にこれから、専門人材に求められるのはこの意思決定の能力だと実感しています。ロジックや自分の意思なども出し切りながら、周りを納得させ巻き込んでいくのは(少なくともいまは)人間しかできません。
そしてその機会は狙って得ようとしないと、得られない希少性が高いものです。


こんなに長文を書くつもりはなかったのですが、長くなってしまいました……。

弊社の小池さん作成の図にもあるように、このループに入れると生成AIを活用して自己学習をどんどん続けていくことはできるし、生成AIは最高の学習パートナーになります。その意味では、生成AIが人材育成に与えるメリットも大きいです。

一方、じゃあその学習ループにどうやったら入れるんだっけ? はいろいろな企業、特に今回題材にしている専門性を商材にしている業界の人材育成で抱える課題になってきそうだな、と感じています。

とこの流れで、この件を紹介するのも嫌らしいと思いながら、紹介しないのも変だと思うので、NEWhで提供をスタートした「新事業AI活用人材スプリント」のリンクも貼っておきます。僕が長文で書いたあたりも回収できるような内容になっています!

それではーーー!
これからも記事を書いていくのでよかったらマガジンも(良ければ私も)フォローおねがいします。フィードバックなどもあればぜひいただきたいです!

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