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気になったのは、見えなくなったもの

2023年、コロナ禍以降のバングラデシュ


2023年4月、バングラデシュの首都ダッカを訪れました。

2020年の新型コロナ流行以降、一時はバングラデシュでも大規模なロックダウンなどが行われていましたが、現在はすっかり活気あふれる街並みへと戻っています。ちなみに4月〜5月は、バングラデシュは夏の季節で、連日40度を超える猛暑でした。

街中にはまだマスクをしている人もいますが、どちらかというと感染症よりも大気汚染が原因といった感じです。それもそのはず、バングラデシュは急激な経済発展を遂げており、首都ダッカは人口密度が世界一と言われるほどです。急速なスピードで自動車が増え、渋滞が毎日発生しています。そうした経済成長の副作用として首都では深刻な大気汚染が発生しています。

バングラデシュへの渡航自体は2022年9月ぶりだったので、約半年の時間が経った程度でした。
そんな今回の渡航では、5年前に住んでいた場所を訪れました。そこでは、その街の大きな変化に衝撃を受けました。

5年前に住んでいた地域は、劇的な変化を遂げていた

2018年に1年間住んでいた首都ダッカのある街は、当時はまだ舗装されていない道も多く、路地に入ればスラムがあったり、鶏が駆け回っているような場所もたくさんありました。建物が密集した中で生活を送る人々の姿があったり、狭いスペースの中でクリケットやサッカーをして遊ぶ子どももたくさんいました。

そして今年、5年ぶりに訪れたこの街は、まるで姿を変えたかのように整備が行われていました。イメージで言うならば、タイのバンコクに似ているとすら思いました。

道はきれいに舗装され、複数の車線が走る大きな道路もできていました。真夏の太陽に照らされた道路は黒々と光り、車は颯爽と走っていきます。その様子はどこか洗練を感じさせるような姿でした。


気になったのは、見えなくなったもの

その中で、ある種の洗練さを備えていく街の姿になくなったものがありました。それが、道沿いに生活する人々の姿です。
以前も火災や散発的な警察の取り締まりによりスラムが撤去されたり、移動が突如行われることがありました。

おそらくですが、今回も開発の中で移動が行われたのではないかと想像します。公共の福祉のためという点では合理的な判断ではあるかもしれませんが、今どこに暮らしているのだろうか、という率直な気持ちが胸の中に湧いてきました。

ジュマ・ネットとしては平和促進やマイノリティの権利などを中心に活動しているため、近年はダッカに住む人々とあまり関わった機会はなかったのですが、以前この地に住んでいた時にはそうした人々と話をしたり、生活を垣間見させてもらうこともありました。

彼らもまた違うカテゴリでのマイノリティであり、急激に変化する社会の中で、大きな波にさらわれるように生活が変わっていくことを思わされました。
とはいえ、何かできるのかと言われればそんな力もなく、何かをすることが果たして正義なのかもよくわからず、というようなもやもやした感覚も同時にありました。

時間にすれば長くて数分間のことではあったのですが、あの時の映像が帰国後も強く残っています。

本当はもっと深堀りする余地も必要も残されているとは思いつつ、怖さもあり、今回はこのあたりで一度区切りにしようと思います。

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