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BTS "A Supplementary Story : You Never Walk Alone" 日本語選びにこだわる和訳歌詞 no.026

僕は決してひとりじゃないよ
つないだ君の手
君の温もりを感じられるよ
君は決してひとりじゃないよ
僕を感じてみて
君も、ひとりじゃないんだよ

A Supplementary Story : You Never Walk Alone


神は何故こうも僕たちを
寂しくさせるのだろうか ああ嫌だ
傷だらけだろうが笑えるさ一緒なら
ひとり歩くこの道の終りに
何があろうと
足を踏み出してみるさ
時には疲れて痛くても
大丈夫 君のそばだから
君と僕 一緒なら笑えるから


飛びたくても僕には翼が無いよ
でも 君のその手が
僕の翼になるよ
暗く恐ろしい事は忘れてみるよ
君と一緒に


この翼は痛みから芽生えたけど
光に向かう翼なんだよ
苦しくて痛いとしても
飛んで行けるなら飛ぶつもりだ
もう怖くないように
僕の手を握ってくれる?
君と僕 一緒なら笑えるから


僕が選んだ道であり、
皆全て僕が作り出した運命だとしても

僕が犯した罪であり、
この人生の全てが
僕が成すべき償いにすぎないとしても

君は一緒に歩いてくれよ
僕と一緒に飛んでくれよ
空の終わりまで手が届くように
こうして痛くても
君と僕 一緒なら笑えるから


僕は決してひとりじゃないよ
つないだ君の手
君の温もりを感じられるよ
君は決してひとりじゃないよ
僕を感じてみて
君も、ひとりじゃないんだよ


おいでよ
そうやって 這ってでもさ
そうやって 歩いてだって
そうやって 走っておいで
そうやって 飛んできてよ


この道がまた遠く険しくとも
一緒にいてくれるかい?
倒れて時には傷つくとしても
一緒にいてくれるかい?


僕は決してひとりじゃないよ
君と僕 一緒なら笑えるから
君は決してひとりじゃないよ
君と僕 一緒なら笑えるから
君と僕 一緒なら笑えるから


韓国語歌詞はこちら↓
https://m.bugs.co.kr/track/30547151

『A Supplementary Story : You Never Walk Alone』
作曲・作詞:Pdogg , RM , SUGA , Supreme Boi , j-hope , "Hitman" Bang


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今回は、BTSの2枚目のリパッケージアルバム 「YOU NEVER WALK ALONE」収録の "A Supplementary Story : You Never Walk Alone" を意訳しました。
フルアルバム第2集「WINGS」の「外伝」と位置付けられているこのアルバムの、最終トラックとして収められています。


1.なぜ「歩く」なのか

タイトルの「YOU NEVER WALK ALONE」は、ど直球で訳すと「あなたは決してひとりで歩かない」です。"don't" ではなく "never" が用いられていることで、日本語もやや強めの否定文になります。中学校で習った "never" についてあらためておさらいしようと詳しい解説を読みました(^^;)

「君は決してひとりで歩かない」のままだと若干ぎこちないので「君は決してひとりじゃない」と意訳することにしたのですが、そもそもなぜシンプルに「YOU ARE NEVER ALONE(君は決してひとりじゃない)」ではなく「YOU NEVER WALK ALONE」だったのだろうかと疑問に思いました。

単純に語呂の問題だったのかもしれませんが、この曲が披露された「2017 BTS LIVE TRILOGY EPISODE III THE WINGS TOUR THE FINAL」のアンコールセットリスト、そしてVCRの内容を鑑みると、「WALK」という行動に込められたものの一端を感じ取る事ができる気がします。

【THE WINGS TOUR THE FINAL アンコール セットリスト】
~VCR~
・A Supplementary Story : You Never Walk Alone
Best Of Me
(Road)
Born Singer
봄날 (Spring Day)
Outro : Wings

"A Supplementary Story : You Never Walk Alone" の前に流れたVCRは映像に長めの韓国語の文章が文字で添えられたものでした。それを書き取った上で以下の通り和訳をしてみました。

どれ程多く歩けば
少年は男になれるのか
学校と家
路地と海
崩れた机の引き出しの中
幼いあの日の空を閉じて
行き止まりのは迷路の入り口
掌の上には烙印のような血の痕
翼の骨を伝い駆け上がる痛みは
飛び立とうとする夢

見えない海を探して少年は歩くんだ
少年の心臓は七つ
七回の鼓動がひとつの前進
視野が一旦反転するとひとつは七つ
走ろうとすれば必ず転ぶこと
背を向ければ断崖絶壁
たゆたう誘惑の世界で
少年は閉じた目で何を探すのか

カーテンを開けて鏡をぶち壊したら
破片の中にが開けたんだ
外は内 内は外
ねじれて絡み合う世界
全ての事が交叉路
しっかりと背を突き合わせた
ふたつの世界が
絶え間なくひとつになるんだ

そのの上で少年は今 七人
七人でありながらひとり
ひとつの心臓を分け持つ七人の少年
七つの心臓を持ったひとりの少年
ひとりと七人は
水鏡に映った互いの影

どれ程多く歩けば
少年は男になれるのか
は世界の別の名前
夜と昼
交叉路とトンネル
は際限なく分岐して
選択の瞬間はいつもひとり

角を曲がれば
赤かった あの日の花が
まだ咲いているだろうか
夢の方向はどこなのか
恐怖は希望の別の名前
涙は微笑みの別の名前
少年は笑うんだ
一緒だからこそ笑えている

少年は 前進するんだ

太字にしたように、「道」そして「歩く」「前進」という言葉が頻出しています。

(Road)” という曲がその名に背負っている「道」という概念は、彼らが、彼ら自身のこれまでを振り返り、また、これからの未来を思い描くための重要な舞台装置となっています。大切な出発点と、目指している目的・目標があるから「道」という形をとっているのではないかと思います。

この楽曲は、” (Road)” や "Born Singer" 、そして前述のセトリにはないですが "바다(Sea)" などで静かに語られてきたリアルな葛藤を経た彼らが、ここにきて「一緒にいてくれる人がいれば道を歩き続けられる」ことに気づいた喜びを歌う歌なのではないかと思います。

7人一緒なら、ARMYと一緒なら、共に道を歩き続け笑い合える。
決してひとりじゃない、と。

共に道を「歩く」ことにこだわった結果が、「YOU ARE NEVER ALONE」ではなく「YOU NEVER WALK ALONE」という表現の選択に至った理由なのではないかと思いました。


2.一緒なら笑えるから

V LIVEには、ナムさんが「外伝」の発表に合わせて公開したビハインド動画が残っています。
(24:42~が "A Supplementary Story : You Never Walk Alone" についての発言部分)

動画によると、ラップラ3人で同じテーマ「一緒なら笑えるから」で歌詞を書こうという流れがあったようです。

また、「crawl crawl…」の部分をナムさんが書いたとのこと。

おいでよ
そうやって 這ってでもさ
そうやって 歩いてだって
そうやって 走っておいで
そうやって 飛んできてよ

この道がまた遠く険しくとも
一緒にいてくれるかい?
倒れて時には傷つくとしても
一緒にいてくれるかい?

「君はひとりじゃない」と相手に寄り添う言葉、信頼を寄せる言葉が並ぶ中、この部分だけはその相手の気持ちを試すような言葉が並びます。彼らが選び取っている道がどれだけ長く険しいものなのか、それを自身が良く理解しているからこそ、本当に一緒にいられるのかと確かめるように尋ねているのかもしれません。

そして、相手を信頼をしているからこそ、どんな手段を取ってでも自分のところに来て欲しい、という願望も見え隠れしているように思います。


3.小説『デミアン』

アルバム「YOU NEVER WALK ALONE」は一つ前にリリースされた「WINGS」のリパッケージアルバムになりますが、この「WINGS」がヘルマン・ヘッセの小説「デミアン」を下敷きに制作されている事は周知の事かと思います。

この「デミアン」、私も通読してみました。
(以下、あらすじ程度に小説の内容に触れます)

小説を読んでからこの曲の歌詞を読み直すと、小説の内容を想起させられる部分があることに気づきます。

僕が選んだ道であり、
皆全て僕が作り出した運命だとしても

僕が犯した罪であり、
この人生の全てが
僕が成すべき償いにすぎないとしても

「デミアン」は登場人物の男の子たちが少年から青年になる過程を主人公の主観のみで書き切っている作品です。そこには選択があり、過ちがあり、絶望が溢れています。唯一の希望を見つけながらも共に進むことは困難を極め、引きずられるようにして人生を歩んでいきます。

主人公はひとつの選択により罪悪感の沼に落ち、意に反する人生を送る事になっていくのですが、まさに上記の引用箇所は「デミアン」の世界を象徴しているように思えます。

主人公と、彼の人生に深く関わるもう一人の少年は、お互い「君となら」という感覚を頼りに道を交えていきます。「너와 나 함께라면 웃을 수 있으니깐 (君と僕 一緒なら笑えるから)」というフレーズも、小説を読むとまた違った捉え方ができると思います。

正直、人が人なしでは生きていけないという考えに私は未だに疑問を持っています。いいかげんいい大人なので、どんなにイキがっていてもひとりじゃダメなんだと頭ではわかっているのですが、この人なら自分の事を理解してくれる!と思える人に出会えたことがありません。結局、自分のことは自分が大事にしてあげないと、という結論に至ります。

だから、信頼できる親友や家族がいる人がめちゃくちゃうらやましい。
無論、バンタンメンバーのことが眩しくて仕方ありません。

「君は決してひとりじゃないよ」

その言葉が聞きたくて、今日もこの曲に手が伸びてしまうのでした。


最後まで読んで下さりありがとうございました。


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