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BTS "Answer : Love Myself" 僕という名の星座 〜日本語選びにこだわる和訳歌詞 no.010

あの数多の星を迎えるために
僕はこの世に生まれ落ちたのだろうか
あの幾千の煌びやかな矢羽が
目指す先には僕ひとり

Answer : Love Myself

闇の中で目を覚ます
胸騒ぎに不安を覚えて
鏡の中の僕と目を合わせる
怯える瞳に
これまで何度となく問いかけた

ひょっとして、
誰かを愛する事よりもっと難しいのは
自分を愛することなの?

素直に受け入れるべき事は受け入れよう
僕が下す判断は
僕にとって最善だという事を

僕の人生における太い年輪
それもまた僕の一部
だからこそ今は 僕自身を許そう

投げ出してしまうには僕らの人生は長すぎる
迷路の中では僕を信じて
冬が過ぎたらきっとまた春は来るものだよ


冷ややかな夜
誰のともつかない視線に怯え
見窄らしい僕を隠そうと
しきりに身悶えたけど

あの数多の星を迎えるために
僕はこの世に生まれ落ちたのだろうか
あの幾千の煌びやかな矢羽が
目指す先には僕ひとり


君は僕に教えてくれた
僕には生まれてきた理由があるのだと
僕は僕自身を愛するべきなんだ


僕の呼吸 歩いてきた道
その全てでもって答えるよ
昨日の僕 今日の僕 明日の僕
僕は自分の愛し方をわかり始めてる
余すところなく 残らず全て
みんな含めて僕なんだ


正解はないのかもしれない
もしかすると、これも答えではないんだ
ただひたすらに僕を愛する事さえ
誰かの許しが必要だったんだよ

僕は今もなお自分を探している
でも、もう死ぬのはたくさんだ
悲しかった「僕」 苦しかった「僕」
きっともっと、美しい「僕」

そう、この美しさが存在すると認める心が
僕自身の愛へと向かう道
最も必要な僕らしいこと

今、僕のために歩み出すことは間違いなく
僕のための行い
僕のための振舞い それが
僕のための幸せ

僕が何を得たのかを見せてあげる
怖くないよ それは
僕の存在そのものだから

自分を愛そう


始まりの最初から
終わりの最後まで
答えはただひとつ

なぜしきりに隠そうとばかりするの?
その仮面の下に

失敗で出来た傷跡までもが
全部自分という星座の一部なのに


君は僕に教えてくれた
僕には生まれてきた理由があるのだと
僕は僕自身を愛するべきなんだ


僕の呼吸 歩いてきた道
その全てでもって答えるよ

僕の中には相変わらず
上手くいかない僕がいるけど

君は僕に教えてくれた
僕には生まれてきた理由があるのだと
僕は僕自身を愛するべきなんだ

僕の呼吸 歩いてきた道
その全てでもって答えるよ
昨日の僕 今日の僕 明日の僕
僕は自分の愛し方をわかり始めてる
余すところなく 残らず全て
みんな含めて僕なんだ


韓国語歌詞はこちら↓
https://m.bugs.co.kr/track/31203513

『Answer : Love Myself』
作曲・作詞:Pdogg , 정바비 , Jordan “DJ Swivel” Young , Candace Nicole Sosa , RM , SUGA , j-hope , Ray Michael Djan , Ashton Foster , Conor Maynard


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BTS "Answer : Love Myself" は、リパッケージアルバム「LOVE YOURSELF 結 'ANSWER'」収録の楽曲です。

「LOVE YOURSELF」をテーマに掲げてきた一連の作品群において、"Answer" というその名の通りストレートに、わかりやすく答え合わせをしてくれる曲になっています。

さてここから今回も、歌詞の内容を自分勝手に深読み、考察(考察中の和訳は直訳)していきたいと思います。



1.自身との対話

この曲は「僕」と(「僕の中の僕」=)「君」との対話から始まります。「너」や「니」は「君」「お前」にあたる語ですが、後で出てくるもうひとつの「君(You)」との差別化を図るため、今回の私の意訳では状況によっては「僕」や「自分」と訳しています。

※私が翻訳(意訳)・考察した他の曲(「Save ME」「I'm Fine」「Inner Child」)にも「僕」と(「僕の中の僕」=)「君」が登場しているのでよろしければご一読ください。複雑な解釈になっていますが、そういう目線でこれらの曲を聞くとこの曲の内容も一層深くなるのではと思います。

“Answer : Love Myself” がわかりやすい、と思ったのは、ここでは「僕の中の僕」=「君」が鏡に映る自分である事が冒頭で明記されているからです。

「自分の中の自分との対話」という決して誰の目にも見えない複雑な関係性が「鏡写しになった自分と目を合わせる」という行為でわかりやすく表現されているので、対話の相手が自分自身だという事がイメージし易くなっているなと感じました。

そして「自分を愛す(認める)事の難しさ」が長年抱えている問題である事が打ち明けられ、こんな結論を出しています。

솔직히 인정할 건 인정하자
(率直に認めるべき事は認めよう)
니가 내린 잣대들은 
(君が下ろす物差しは)
너에게 더 엄격하단 걸
(君に更に厳しい事を)

https://m.bugs.co.kr/track/31203513

上記はほぼ翻訳機そのままの直訳です。ちょっと意味が「?」だったので、私は「君が下す判断は 君にとって最善だという事を」と意訳をしてみました。

自分に対して厳しくなる時って、何でこんな事もわからないんだ、できないんだって自分を卑下しがちな時でもあります。
でもそのままでは理想と現実が伴わないまま進歩しない。

自分の判断に自信を持ち、それが現時点での最善であると認める事が、前進するためには必要なんだと説いてくれている一節なのだと思います。

そしてこの後、またひとつ素敵な表現が出てきます。

니 삶 속의 굵은 나이테
(君の人生の中の太い年輪)

https://m.bugs.co.kr/track/31203513

樹木の年輪はひとつの層が出来上がるのに時間がかかればかかる程太く分厚くなるもの。
悩み苦しんでも歩みを止めずに時間をかけて出した結果もまた自分の一部だから、だからこそ頑張っている自分を認めてあげよう、と。

こういう言葉って、彼らと同年代の方の心に刺さるのはもちろんだと思うのですが、私みたいにその倍近くの長さを既に生きてきた人にも絶対ブサブサ刺さると思うんですよね。

人生無駄なことなんてひとつもないと、本当の本当にそう思います。


2.僕がここにいる理由

SUGAのラップが終わった後の部分は、アイドルアーティストとしての彼らの視点で語られていると思われます。

저 수많은 별을 맞기 위해
(あの数万もの星を迎えるために)
난 떨어졌던가
(僕は落ちたのだろうか)
저 수천 개 찬란한 화살의
(あの数千もの煌びやかな矢の)
과녁은 나 하나
(的は僕ひとり)

https://m.bugs.co.kr/track/31203513

数多の星、輝く矢と表現されているのは世界中の人々から放たれてくる彼らに対する反応であり、自分を目掛けて真っ直ぐに目指してくるそれらの「標的」になるために「(生まれ)落ちた」のだろうか、と自問しています。

文字通り星の数ほどの数えきれない人々が自分に目を向けているという状況、考えてみたらちょっと足がすくむというか…数多の視線の中には彼らにとって肯定的な色のものだけではなく、残念だけど否定的な色のものも含まれていますし、何よりその全てひとりひとりが誰なのか、その真意は何なのかを全て把握できる訳でもない。

そんなアンバランスな関係を直接的に言い表す「하나(一)」対「数千、数万」という数の対比がとても印象的です。

このような推測より私は、直前の節にある「차가운 밤의 시선(冷たい夜の視線)」を「誰のともつかない視線に怯え」と意訳しました。
そんな恐怖にも近い思いとの戦いは「초라한 날 감추려 몹시 뒤척였지만(見窄らしい僕を隠そうと しきりに寝返りを打ったけど)」と、逆説の接続詞でしめくくられています。

これは、彼らはその得体の知れない数千・数万の人々を相手にどうやって生きていけば良いのか、その答えを知り得た、という事を明示しているのではないかと思います。

そこまで思い至ると、上記で引用した「저 수많은~나 하나」までの部分がただの自問自答ではなく、覚悟決意が含まれた気付きの言葉に聞こえてくるようです。誰もがなれる訳じゃない「的」になる事を受け入れる、という使命感にも近いものが、そこに生まれているのではないかと思うのです。

そして、この曲のサビにあたる以下の部分が、彼らが出した答えになっているのかなと思います。

You've shown me I have reasons
(君は僕に理由があると示してくれた)
I should love myself
(僕は自分自身を愛するべきだ)

https://m.bugs.co.kr/track/31203513

この ’You’ はARMYさんたちの事なのかなと思います。

数千・数万に対する「ひとり」の重みを受け入れると共に、その意味や使命を全うする事が自分が存在する ’Reasons’ である。

それに気づかせてくれたのは ’You’ なんだよ、と。

曲中で何度も繰り返されるこの彼らの気付きは、聴いているこちら側にも確かな自信と安堵を届けてくれるものになっています。


3.自分の美しさに気づくこと

とはいえまだまだ、自分とは何者であるかを考え悩み、自身との対話をし続ける「僕」がいます。
それでも「더는 죽고 싶지가 않은 걸(もう死にたくはないよ)」と自分を押し殺してまで生きていく事をはっきりと拒んでいます。

どんな自分も愛してあげるには、どうしたらいいのか?

ここで出てくるナムラップの妙がこちら。

슬프던 Me
(悲しかった自分) 
아프던 Me
(痛かった自分)
더 아름다울 
(もっと美しい自分)

https://m.bugs.co.kr/track/31203513

「美」という漢字は「미[mi]」と発音するそうですので、直前の2つの ’Me’ から考えてもこの「美」は「自分(Me)」とのダブルミーニングですね。
目でも耳でも意味が深まるこの構造。(大好物)

その直後から始まる「どんな自分も自分の美しさの一部であると認めることが道だ」と伸びやかに説いてくれるホビパートがまた、たまらなく好き!(このホビパートも、発音が[mi]で終わるふたつの文で始まるんです。とっても気持ちいい)

しかしながら失敗や後悔で悲しみ傷ついた自分も自分なのだと認めようとしても、つい隠してしまいたくなるのが人間というもの。
そんな後ろ向きな気持ちを払拭してくれるのが次の一節です。

내 실수로 생긴 흉터까지
(僕の失敗で出来た傷跡まで)
다 내 별자린데
(全部僕の星座なのに) 

https://m.bugs.co.kr/track/31203513

この部分は、2018年の国連総会のスピーチ中の以下の一節とリンクしています。

These faults and mistakes are what I am, making up the brightest stars in the constellation of my life. 
(失敗やミスは僕自身であり、人生という星座を形作る最も輝く星たちなのです。)

https://m.bugs.co.kr/track/31203513

人生を星座に例えるならば、ひとつひとつの星はこれまで起こった出来事の全て。明るい星もあれば暗い星もある。大きな星もあれば小さな星も。それらを残らず繋いで出来上がった星座こそ、美しく輝かしい自分そのものである…。

私自身元々天体の話が大好きで、より一層この「星座」の例えにしびれました。天才的ワードセンス。このくだりだけで白米が何杯でもいける。

どんな自分も全て愛すべき自分。
そう思えるようになるためには、どんな自分にも輝きや美しさが備わっていると気づく事だと教えてくれているのだと思いました。


4.出した答えのその先に

自身の存在理由を見つけつつも「정답은 없을지도 몰라(正解は無いかもしれない)」「어쩜 이것도 답은 아닌 거야(ひょっとしたらこれも答えではない)」と正直に打ち明けている場面があります。

ラスサビにて追加されている以下の一節もまた、自分の中に理想に届かない部分が残っている事を自覚しているような描写です。

내 안에는 여전히 서툰 내가 있지만
(僕の中には相変わらず つたない僕がいるけど)

https://m.bugs.co.kr/track/31203513

ここも逆説の接続詞でしめくくられています。
自分の中の満たない部分、つたない部分、誰にも見せたくないようなそんな部分の存在を決して否定せず、それでも自分を愛してみる。
そんな静かな決意が、この逆説接続で表現されているのだと思います。

自分の愛し方を現在進行形で学んでいる途中だ(I’m learning how to love myself)と呟く彼らの星座が、これからも謙虚におごそかにそこで輝くのを、できるだけ長く、ながーく見守っていきたいなとあらためて思った次第でした。


ちなみに、この曲のビハインド動画はこちら

ナムさん大絶賛の一曲であることがわかります。(45:56~)

最後まで読んで下さりありがとうございました。


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