BTS "21세기 소녀 (21st Century Girl)" 'Love Myself'前夜 ~日本語選びにこだわる和訳歌詞 no.131
21세기소녀 (21st Century Girl)
君には価値がある 完璧だ
心を砕くにふさわしい
君は尊みに溢れ気高く
それでいて可愛いんだ
光輝く 光が
君は 真理であり道理
万一誰かが君を再三悪く言う
そいつらに教えてやれ
君が俺のものだと伝えに行け
他の奴らが何と言おうが
この世間が何と言おうが
君は俺にとっての最高 君のままで
絶対に 縮こまらないで
誰が何と言おうとも君は大丈夫
強いよ君は、と言っているんだ
君はハッキリと答えるよ
20世紀の少女たちよ
(君の人生を生きよ こっちにおいで)
21世紀の少女たちよ
(心配要らない 新たな女性というもの)
言うよ 君は強いのだと
言うよ 君は申し分ないのだと
全ての女性たちよ その手を掲げて
21世紀の少女よ その手を掲げて
全ての女性たちよ その手を掲げて
今 叫べ
君が通り過ぎるね 男たちが言う
「あの子何だ?一体誰なんだ?」
ショックを受けるね 女たちが言う
「この子はまた何よ?一体誰なの?」
(愛し君よ)絶対に引き下がらないで
(そうだよ)奴らに君を合わせるな
(君は僕のもの)君は十分に美しい
心配しないで 君は美しい
君は 君は 君は
20世紀の少女たちよ
(君の人生を生きるんだ こっちにおいで)
21世紀の少女たちよ
(心配しないで それが新しい女性像)
言ってよ 君は強いのだと
言ってよ 申し分ないのだと
思い切ってごらん
全ての女性たちよ その手を掲げて
21世紀の少女よ その手を掲げて
全ての女性たちよ その手を掲げて
今 叫べ
みんな 君を愛したい
誰もが君を愛すだろう
他のことは気にしないで
みんな君を愛したいのさ
誰もが君を愛するだろう
君は愛されて当然なんだ
全ての女性たちよ その手を掲げて
21世紀の少女よ その手を掲げて
全ての女性たちよ その手を掲げて
今 叫べ
全ての女性たちよ その手を掲げて
21世紀の少女よ その手を掲げて
全ての女性たちよ その手を掲げて
今 叫べ
韓国語歌詞はこちら↓
https://music.bugs.co.kr/track/30413072
『21세기 소녀 (21st Century Girl)』
作曲・作詞:Pdogg, "hitman"bang, Rap Monster, Supreme Boi
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今回は、2016年10月にリリースされたBTS正規アルバム第2集「WINGS」に収録されている "21세기 소녀 (21st Century Girl)" を意訳・考察していきます。
この楽曲は2017年2月に発表された2枚目のリパッケージアルバム 「YOU NEVER WALK ALONE」にも収められています。
当時V LIVEで公開されたビハインドエピソードでは、この楽曲の歌詞は全てRMによって書かれたことが本人により明かされています。
1.'男性から女性へ'という視点の終焉
21st Century Girl__「21世紀少女」という名のこの楽曲は、バンタンの歴史を俯瞰する上で絶対に省くことのできない「女性嫌悪(ミソジニー)問題」の提起を受けた後にリリースされたものであり、バンタン楽曲における〈男性から女性へのメッセージ曲〉としては今のところ最後の楽曲とも言えるものです。
当マガジン収録記事no.127~no.130でご紹介した楽曲は、2016年5月に自称ARMYのSNSアカウントによって歌詞に女性嫌悪表現があると指摘を受けたものになります。
※下記ホルモン戦争の記事では、問題提起があった2016年5月当時韓国で起きていた、女性嫌悪を社会問題とする機運の〈きっかけ〉について触れています。
同年7月に公式謝罪が行われたことで、その後の彼らの表現活動はこの問題をクリアできるものに移行します。
ところが、この "21세기 소녀" の歌詞に対してもリリース2日後には遺憾のコメントが寄せられています。
この曲が「ミソジニーを脱却した曲」であると紹介されているものもお見掛けしますが、"21세기 소녀" にも嫌悪表現があると指摘が入っている、というのが実情です。
この指摘に対する事務所のコメントはなく、また、問題を提起したSNSアカウントもこの楽曲に対するコメントを最後に新規の投稿はストップしています。
謝罪が重ねられることはありませんでしたが、以後バンタンの楽曲から男女が明確に区別された歌詞が姿を消したことからも、相当の気遣いがテーマ設定・詩作の過程で為されることとなったのは明確です。
2.誰もが'21世紀少女'となり得るために
では "21세기 소녀" の歌詞のどこが指摘を受けたのか。
結論から言うと「全て」です。
遺憾のコメントは、歌詞に登場する「21世紀少女(=強くて申し分のない少女・女性)」の定義自体に「誰のために強くならなければならないのか。誰の基準に合わせなければならないのか。弱くても十分でなくても女性たちは皆21世紀少女(新しい時代を生きる女性)である」という見解を示しており、21世紀少女が何たるかは(男性である)彼らが決めなくても良い、としています。
女性賛歌を目指しながらも嫌悪表現だと指摘された "ホルモン戦争" と比べると、男の性欲丸出しの表現は鳴りを潜め、女性をひたすら讃える表現に絞られている "21세기 소녀"。
もうここまでくると何を書いてもダメ出しを食らうのではと絶望的になりますが、再びこのような指摘を受けてしまった理由は明確です。
それは「価値」というものには必ず「基準」があり、「誉め言葉」自体が或る「基準」に基づくものであるからです。
他より優れているから、という漠然とした基準に基づいた価値はあくまでも個人的で相対的でしかないのに、新しい時代を生きる全ての女性は強くて申し分がない、と絶対的な価値を一方的に付与しようとしている。
"ホルモン戦争" と同様、主語と言いたい事の大きさが釣り合っていなかった、誉め言葉を言ってもらって嬉しくない人はいないはずという先入観が裏目に出てしまった、ということになるのではないかと思います。
冒頭第一声から「君には価値がある」と始まる歌詞は、終始女性を褒め称え、自分はそんな女性たちの「味方」であることを表明するものになっています。
※1 work it…なんとかする、うまくやる(参考)
※2 귀티…高貴な感じ、気品(参考)
※3 뭐라건=뭐라(何と)+하건(言おうが)(参考)
★~건=~거나(~しようと、~だろうが)の省略形(参考)
※4 쫄다…ビビる(参考)
※5 누가 뭐래도=누가 뭐라해도…誰が何と言っても(参考)
気持ちはわかるんです。どこを切っても女の子は最高!自信もって!応援してる!と言いたい気持ちであふれているから。
女だというだけで傷つけられてきた人たちに寄り添いたい、という気持ちを、文字通り「少女」を主語にして表現することに何の間違いがあるのかという意見もあるかと思います。
ただ、少々うがった見方が許されるならば、相手が女性だからああしてあげようこうしてあげよう、という考え方だけでは、結局女性はいつまでたっても女性という名の舞台に一方的に立たされたままなのではないでしょうか。
たまたまここでは男性であるバンタンが男性目線で女性に向けて歌った歌詞なのでこのような構図になっていますが、これが他のどんな分割された状況(性別、人種、国籍、年齢、職業など)であってもありとあらゆる場面で同じような違和感は生まれるのだと思います。
万人に受け入れられる表現を目指すことの難しさをあらためて痛感します。
3.'Love Myself'前夜
歌詞に入った指摘により明確な性別由来の表現を封印した彼らは、その一方であらたな「賛歌」の方法を模索していきます。
それこそがあらゆる分別を超越した「自己」への賞賛、「Love Myself」です。
"21세기 소녀" には、やがて確立されるバンタンの「Love Myself」への想いの片鱗を窺い知ることができる部分があります。
※6 쟤…あの子(参考)
※7 넋이 나가다…驚いて魂が抜ける→衝撃を受ける(参考)
※8 얘…この子(参考)
外野が何と言って来ようと、君は引き下がらなくていい。
周りに合わせることは無い。
君は君のままで美しい、心配しないでと説くこの姿勢は後のLOVE YOURSELFシリーズに引き継がれる重要なテーマであり、性別由来の表現を封印した彼らに残された、あるいは授けられた運命の蜘蛛の糸であったのではないかと思います。
社会情勢を背景に、歌詞という不可侵とも言える領域で展開されたバンタンの音楽活動におけるミソジニー(女性嫌悪)の問題。
この件に対する対応実績は日本人プロデューサーとのコラボ案件が白紙になった件にも少なからず影響を与えるなど「道を正す」という名分の元に事あるごとにその都度ファンダムによって引用され、抑止の根拠とされることになります。
この実績をひとつのきっかけとして、より多くの人の生まれながらの個性を尊重する為に国籍や性別を感じさせないモノ作りを心掛けてきた彼らは、他でもない彼ら自身の生まれながらの個性に蓋をすることで、ある意味ファンダムから与えられた「役目」を務めてきたのだと私は思います。
このことが生身の人間としての彼らひとりひとりに与えた影響は、それこそはかり知れません。
まだ見ぬ未来の彼らの音楽が今後どこにどう向かって行くのか、本当に楽しみでなりません。ひたすら思いのままに自己表現して欲しいと思っています。
今回も最後までお付き合い下さり、ありがとうございました。
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