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BTS "핸드폰 좀 꺼줄래(Could You Turn Off Your Cell Phone)" 沈黙を解除する 〜日本語選びにこだわる和訳歌詞 no.129

いや ところで、その
人が話す時はちょっと…
携帯の電源切ってくれる?

핸드폰 좀 꺼줄래(Could You Turn Off Your Cell Phone)



携帯の電源切ってくれる?
みんな賢そうにしてるけど
俺らは益々馬鹿になるじゃん
携帯の電源切ってくれる?
顔見てメンション飛ばす
'いいね'は俺に必要ない

便所に行くってことまで
お前は携帯で言う そして
センスがあるかのようにほくそ笑むね
俺は 全っ然面白くない
数ヶ月振りに会ったお前
何故急に人気者のフリ?
ロトでも当たったのか?

ロトだなんて 目を覚ませよ
機種変したんだな わが友よ
情報化時代だよ知っての通り
大韓民国の人口の半分以上が
スマートに生きる 21世紀
顔を見て話すのは時代遅れの
遠い国の話

久しぶりに会ったのに
何故にまたそうやってケンカ腰?
スマホ?まずメシ行っとくのが
俺たちってもんだろ
彼女いるのか?
お前の新品の携帯が勿体無い
「軍隊に行ったヨンスみたいに…」は嫌だ
叶えよ 魔法
どこ行く? ああ 俺はあそこに行くよ
ここが一番流行りの店らしい
メシ食ったら何する?
俺ら つまらんネットカフェはやめてさ
いや ところで、その
人が話す時はちょっと…

携帯の電源切ってくれる?
みんな賢そうにしてるけど
俺らは益々馬鹿になるじゃん
携帯の電源切ってくれる?
顔見てメンション飛ばす
'いいね'は俺に必要ない

押して ロック解除
押して ロック解除
ムカついた お前の(タッ)
イラついた お前の(シュウン!)
押して ロック解除
押して ロック解除
封じてくれ お前の(カシャ カシャ)
抑えてくれ お前の(カシャ)

飯を目で食うのか?女のコみたく
写真撮るなよ 俺の食欲が落ちる
まぁたアプデで忙しいんだろうな
facebookそれともTwitterに
人生は3Dだ
俺の顔見てずっとつぶやきまくる

お前はずっとつぶやきまくり
しきりにタップし続けながら
くつくつと笑い 飯粒飛ばして
その携帯にペッぺと撒き散らす
痛い目に遭うべきだろ
ちょっと気ぃ引き締めねぇか?
お前のバッテリーが切れる時
俺らは充電されてると思うか?

携帯の電源切ってくれる?
それかポケットに入れてくんね?
最近みんながスマートになった でも
時代は良くなったが倍せせこましいね
時たま恋しい 互いに顔を見て
話を分かち合ったあの時が
コミュニケーションは増えたけど
俺らの間にはうるさい沈黙ばかり

携帯の電源切ってくれる?
みんな賢そうにしてるけど
俺らは益々馬鹿になるじゃん
携帯の電源切ってくれる?
顔見てメンション飛ばす
'いいね'は俺に必要ない

メッセージも セルカも
俺は全て必要ないんだ
携帯でも メシでもなく
お前に会いに来たんだ
おい これはちょっと違うだろ
俺ら どんな仲なんだよ
笑うだけでも幸せだったじゃんか

携帯の電源切ってくれる?
みんな賢そうにしてるけど
俺らは益々馬鹿になるじゃん
携帯の電源切ってくれる?
顔見てメンション飛ばす
'いいね'は俺に必要ない

押して ロック解除
押して ロック解除
ムカついた お前の(タッ)
イラついた お前の(シュウン!)
押して ロック解除
押して ロック解除
封じてくれ お前の(カシャ カシャ)
抑えてくれ お前の(カシャ)



韓国語歌詞はこちら↓
https://music.bugs.co.kr/track/3637692

『핸드폰 좀 꺼줄래(Could You Turn Off Your Cell Phone)』
作曲・作詞:Pdogg, Rap Monster, SUGA, j-hope


*******


今回は2014年8月に発表されたBTS/防弾少年団の正規アルバム第1集「DARK&WILD」に収録されている "핸드폰 좀 꺼줄래(Could You Turn Off Your Cell Phone)" を意訳・考察していきます。

彼らの活動履歴の全貌を俯瞰する際には、ある地点に刺さる楔を無視することはできません。
2016年5月にARMYを自称する一般人が公論化した、歌詞やSNS上の発言内容に対する「女性嫌悪(ミソジニー)問題」。同年7月に公式謝罪が行われたことで、その後の彼らの表現活動はこの問題をクリアできるものに移行します。2017年のインタビューでRMは、歌詞を書く際は女性学の教授など客観的に見ることが出来る専門家の検収を受けることもある、との旨の発言をしています。

当時、歌詞の一部が女性嫌悪だと指摘された楽曲のうちのひとつがこの "핸드폰 좀 꺼줄래(Could You Turn Off Your Cell Phone)" になります。

ただし調べてみるとこの楽曲は上記で取り上げた公論化の発起人のSNSアカウントにより直接名指しされたものではなかったようで、同時期に同じ疑問を持つ方々により掲示板や別の関連記事等で取り上げられたことが今日に至っても問題があったらしい●●●と伝聞されている理由のようです。

もし、この時点で該当箇所がどの部分なのかまだご存じでいらっしゃらない方は一体どこが問題なのかを考えながら、また、既に経緯を把握されている方もあらためて、世論ではなく自分自身の感覚に向き合ってこの記事を読み進めていただくのも良いのではないかと思います。



1.新しいSong Form

リリース当時のSUGAによるアルバムレビューには、この楽曲の制作過程にまつわる興味深い話が含まれています。

このトラックのような場合は、僕たちが作業をすると共に、幾らかすごく苦労がたくさんありました。なぜなら、なんか…僕たちの…何というか 'Song Form(楽曲形式)' 自体が、ほぼその曲自体がすごく限定的な感じなので…ラップを16小節か12小節ひとりでやって、フックをして再び12小節・16小節、あるいは、ラップをしてフックをして、ブリッジをしてフックを出す…ややこうなるような構成がとても…多く繰り返すなかで、今回の曲のようなラップラインがちょっと短い小節であちこちでラップをしつつフックで多めにやる、そんな構成でやってみました。
―― 「SUGA의 DARK&WILD Album review」より抜粋して和訳

https://www.youtube.com/watch?v=OgSqDPetZ3A&t=990s

フック、ブリッジは楽曲を構成するセクション名。

同じような構成を持つ楽曲をこれまで多く繰り返すうちにややマンネリ化していた「Song Form(楽曲形式)」を敢えて意図的に壊すため、ラップラインの担当箇所を通常より短めに、また、形式にとらわれず様々な場所に積極的に取り入れることを試みた、とのこと。

「自らの手で自らを躊躇せず打ち壊すことができる」のはモノを創る人間、アーティストにとっての必須スキルでもあります。
この時点で彼らはまだデビューから数えても1年と少し。プロとして活動しているのですからできて当然と言えば当然なのですが、プロだからといってこれができる人間ばかりではありません。

若くして自らを客観的に見る力を持ち合わせる彼らは、その後もこのスキルを存分に発揮し、様々な変化を見せる姿は既に皆の知るところです。


2.スマホ依存に物申す

iPhoneの登場とAndroidの発表があった2007年以来、世界規模で普及率を上げてきたスマートフォン。楽曲リリース当時(2014年)はOSのバージョンで言うとAndroid4→5iOS7→8の頃です。

前出のアルバムレビューでは、スマホの普及によって人間のコミュニケーションは増えたのに比べ、沈黙もまた増えていることをきっかけにした曲であると解説されています。

最近スマートフォンがどうも…みんながスマートフォンを持っているからなのか…僕の歌詞…僕が書いた歌詞にあるように疎通は多いのにすごく沈黙が多いと思いました。なので、疎通は多くなったけれど…その疎通は多くなったことに比べて、すごく沈黙が多くなったのだということです。
―― 「SUGA의 DARK&WILD Album review」より抜粋して和訳

https://www.youtube.com/watch?v=OgSqDPetZ3A&t=990s

2014年12月の記事に、韓国のスマートフォン普及率が掲載されていました。
これによると、当時の韓国の人口の約7割がスマホを保有しているとされています。(ちなみに同時期の日本は約5割)↓

歌詞の中ではこの状況が以下のように言及されています。↓

알다시피 대한민국 인구
(ご存じの通り 大韓民国 人口)
절반 이상이 스마트한 21세기
(半分以上がスマートな21世紀)
얼굴 보고 얘기하는 건 한물간 먼 나라 얘기 ※1
(顔を見て話をするのは時代遅れの遠い国の話)

※引用文に付けた和訳は直訳
https://music.bugs.co.kr/track/3637692

※1 한물가다…旬が過ぎる、すたれる(参考

スマホを持つことによってすっかり人が変わってしまったように見えたのは、数か月ぶりに会った友人。顔を見て語り合う仲だと思っていたのに、目の前にいてもメールで会話しようとする。
スマホを持つことでスマートになった人間だけど、友人との関係はぎくしゃくしていくばかり…。

文明の利器を手に入れた時、その力を使いこなせるか否かは個人の器にかかっています。
この歌詞の中のチングは、スマホを手にしたことによって人とのコミュニケーションの取り方が以前と変わってしまったことが明確です。それが進化なのか退化なのか判断することは難しいですが、少なくとも歌詞の主人公にとっては、なかなかにもどかしい変化であったようです。

2014年当時二十歳前後だった彼らは、スマートフォンの急速な普及の波を最前線で体感していた世代だったと言えるでしょう。だからこそ感じることが出来た「沈黙」の存在。
〈それ以前〉と〈それ以後〉の両方を知っているが故に感じた違和感は、〈それ以後〉しか知り得ない現在(2024年)の同じ年頃の子たちにとってはもう、年寄りの小言くらいにしか聞こえないかもしれません。


3.本音が噴き出る5秒前

スマートフォンを手にして人が変わってしまったチングに対して感じた違和感はやがて苛立ちへと変わり、折角久しぶりに会ったにも関わらず、ふたりの時間はどんどん険悪な雰囲気になっていきます。

오랜만에 만났으면서 왜 또 그렇게 싸워?
(久しぶりに会ったのに、何故またそうやって争う?)
폰? 일단 밥 한 끼가 우리다워 ※2
(スマートフォン?とりあえず飯一食が俺たちらしい)
여자친구는 있냐? 니 새 폰이 아까워
(彼女はいるのか?お前の新しいスマホが勿体無い)
'군대 간 영수처럼..'은 싫다 이뤄져라 마법
(「軍隊に行ったヨンスみたいに…」は嫌だ 叶えよ魔法) ※3
어디 갈래? 아 나 저기 갈래 여기가 제일 핫스팟 같애
(どこに行く? ああ 俺あそこに行くよ ここが一番ホットスポットみたい)
밥 먹고는 뭐해 우리 식상한 PC방은 그만
(メシ食って何する 俺たちつまらないネットカフェはやめて)
아니 근데, 그 사람이 말할 때는 좀..
(いや ところで、その 人が話している時はちょっと…)

※引用文に付けた和訳は直訳
https://music.bugs.co.kr/track/3637692

※2 답다…~らしい(参考
※3 영수(ヨンス)…韓国人男性に見られる名前。2014年9月には、1940年代に最も多くの子どもに付けられた名前だったとして記事にもなっています。
多くの韓国人男性が歩む道を一般的な名前を持つ〈或るヨンス〉に投影し、「そのようになるのは嫌だ」としている部分になるのだと思われます。しかし、その道から離れたいという希望は魔法でも使わない限りまず叶いません。

この「ヨンス」のくだりを読んで思い出したのは、バンタンデビュー前の2013年3月にSoundCloudに投稿された "어른아이(大人子ども)" という楽曲です。

アメリカのラッパーCommonによる楽曲 "Celebrate" を原曲としたこの "어른아이(大人子ども)" は、デビュー後にMVも作られ公開されています。

歌詞の中には、年齢の上で〈大人〉になったことにより現実のものとなった「国防の義務」についての言及があります。

국방의 의무, 그건 청춘 사망선고야
(国防の義務、それは青春の死亡宣告だ)
――Bangtan Blog 「어른아이 by Rap Monster, Suga & 진」2013.3.13 
SUGAパートより抜粋

https://btsblog.ibighit.com/92

当時満20歳になったばかりのユンギが兵役に就くことについてどんな思いを抱いていたのか、このひと言で明確に伝わってきます。

この記事を書いている2024年に至るまでの約10年の間に徴兵制度を取り巻く状況も変化しました。2024年の時点での制度の概要および兵役履行中の20代の方へのインタビューが掲載されている、小学生向けの解りやすい記事がありましたので貼っておきます。↓

やや唐突感のある「'軍隊に行ったヨンスみたいに…' は嫌だ」の一行には、青春を犠牲にして果たさなければならない義務に対する本音が溶かされているのかもしれません。

本音と言えばこの後、人の話も聞かずにスマホの画面に目を遣り続け、目に余る態度をとるチングに対していよいよ堪忍袋の緒が切れ本音が噴出する瞬間がやってきます。
その時のセリフこそがこの楽曲のタイトル「携帯電話の電源切ってくれる?」なのです。


4.沈黙ロックを解除

ポスト・コーラスでは、スマートフォンの操作に由来する表現が並びます。
サウンドを表現するオノマトペや「押す」「ロック解除」といった具体的な動作が取り上げられた語呂の良い軽快な歌詞となっています。

밀어서 잠금 해제 밀어서 잠금 해제 ※4
(押して ロック解除 押して ロック解除)
미웠어 너의 (탁) 미웠어 너의 (쉬웅~!) ※5
(憎らしい お前の(タッ) 憎らしいお前の(シュウン))
밀어서 잠금 해제 밀어서 잠금 해제
(押して ロック解除 押して ロック解除)
눌러줘 너의 (찰칵 찰칵) 눌러줘 너의 (찰칵) ※6
(抑えてくれ お前の(パシャ パシャ) 抑えてくれ お前の(パシャ))

※引用文に付けた和訳は直訳
https://music.bugs.co.kr/track/3637692

※4 밀다…手のひらで押す参考
※5
タッ…効果音素材のサイトで「탁」を検索してみたところ、おそらくiPh○neロック時に鳴るサウンドではないかと思います。
쉬웅シュウン…おそらくメール送信時のサウンド。
※6
・누르다…指で押す、押さえる、抑える(参考
・찰칵…カメラのシャッターを切る音。(参考

「押す」の意味を持つ単語がいくつかある中「밀다ミルダ」と「누르다ヌルダ」、このふたつの用途の違いに目を向けると、スマートフォンの操作を歌っているのだと思いこんでいた部分は実は全く違う視点で書かれているのではないか、という推測にたどり着きます。

スマホのロックボタンは通常指で押して解除するもので「누르다」を使用するのが自然かと思われますが、歌詞の中では「밀다」が使用されています。
手のひらで押してロック解除、つまり、スマホに気を取られて沈黙しているチングのことを手で小突いて「ロック解除」しようとしているのではないか、と。

歌詞の他の箇所にも「맞아야지 정신 좀 들겠냐(叩かれるべきでしょ 正気を取り戻すだろうか)」とあるので、正にそれを実行しているのではと思われます。

また、シャッター音「찰칵」に対して「누르다」を使用している点は一見シャッター(ボタンを指で)押してくれ、と言っているようにも取れますが、スマホを手放せと言いたい主人公の気持ちからしてここは「抑える」の意を取り、(写真を撮りたい衝動を)抑えてくれと言っているのではないかと。

この「シャッターを切るのを我慢しろ」という気持ちがより具体的に描写されているのが次の歌詞です。

음식을 눈으로 먹냐 여자애들처럼
(食べ物を目で食べるのか?女の子みたいに)
사진 좀 찍지 마라 내 입맛 떨어져
(写真はちょっと撮るな 俺の食欲が落ちる)
또 업뎃하기 바쁘겠지 얼굴책 아님 짹짹이에 ※7
(またアップデートするので忙しいのだろう facebookそれともTwitterに)
인생은 3D야 내 얼굴 보고 짹짹대 ※8
(人生は3Dだよ 俺の顔見てずっとつぶやきまくる)

※引用文に付けた和訳は直訳
https://music.bugs.co.kr/track/3637692

※7
・얼굴책…顔(face)+本(book)=facebook(参考
・짹짹이…짹짹(小鳥の鳴き声:チュンチュン)から転じて、青い鳥のアイコンで親しまれたTwitter(現 X)を指す言葉になった。(参考
※8 ~대다…しきりに~しまくる、ずっと~しやがる(参考

折角「あの頃のように」メシを食いに来たにも関わらず、自分のことはほったらかしでスマホにばかり気を取られているチングの様子に相当苛ついた様子の「俺」は、目の前の食べ物を口に運ぼうとせずスマホで写真を撮りまくるその姿を「目で食うのか?女の子みたいに」と揶揄します

実際のところ、「スマートフォンのカメラで写真を撮る」という行為は本当に「女の子」によく見られる行動なのか。
この疑問について考えるにあたり参考になりそうな記事が、楽曲リリース当時(2014年8月)の朝鮮日報電子版にて掲載されていました。
この記事によると、スマートフォン付加機能の内「ネット以外に好んで使うもの」を問う当時のアンケートにて、男性の約5割が「音楽鑑賞」、女性の約5割が「動画・写真撮影」と回答したとのこと。↓

スマートフォンで写真を撮る姿が「女性的」だと表現したこと自体については、あながち間違ってはいなかったのかもしれません。男性の半分がスマホで音楽を聴き、女性の半分がスマホで写真を撮っている光景を想定すれば「女性はスマホで写真を撮りがち」という判断を脳が下すのは自然な流れです。

「食事を目で食うのか?女の子みたいに」

この一行に問題があるとすればそれは「男性が持つ女性に対する偏見」の存在よりも、数の上で明らかであった「女性はスマホで写真を撮りがち」という事実を用いて誰かを皮肉ろうとしたその気持ちにあると私は思います。
例えば「男性はスマホで音楽を聴きがち」という事実を用いて誰かを皮肉ったとしても、同じ問題がそこに生まれるということです。

「嫌悪感」というものの源は、ひとつの共通項を持つ集団の中で多数派への同化を強いられた際に少数派が感じる拒否反応であり、その嫌悪を理由に相手を糾弾する行為の原動力は「勝手にひとくくりにするな」という気持ちを周りにわかってもらえない事への憤りです。

その憤りが向こう側にもこちら側にも上手く伝わらず、少数派である自分の存在がないがしろにされ続けていると「お前たちの理解が足りないのだ、なぜこんなこともわからないのか」とさらに周囲に対する怒りが募り、攻撃性も持って片っ端から批判を浴びせたり、諸悪の根源である嫌悪を感じさせた側に対して謝罪を要求するに至ってしまう。

「100%女の子がスマホで写真を撮る」のではない以上必ず存在する「スマホで写真を撮らない女の子」たちまでをも「女の子」としてひとまとめにし、「誰かを皮肉るためのネタにしこと」が問題の本質であるとするならば、そこに女性嫌悪を絡める必要性はあったのかどうか個人的には疑問があります。
なぜなら前述したように「女性はスマホで写真を撮りがち」という事実がある以上、この問題の解明に性別間の軋轢の歴史や習慣は関係がないと思うからです。
確かにそこに嫌悪の源はあるけれど、性別間の偏見について議論をする場ではなかったのではないか、そう私は感じました。




こんなことを書いていると「そもそも歌詞に性別を持ち込むこと自体が偏見、差別なんだ、勉強しろ」とご指摘をいただきそうですが…。

とはいえ、自らの記憶を頼りにすることでしか創作ができない人間という生き物が、自身の生まれ持ったものをごっそり無視して「誰の怒りも買わない表現」を目指すということは、限りなく死に近い、傀儡として生きるも同然のことなのではないかと私は思います。

偶像アイドルなのだから模範的な行動をとるべきで崇拝されるに値する存在でなくてはならない、という偏見●●を持つ者が、彼らに生まれ持ったアイデンティティを捨てさせ「誰の怒りも買わない表現」を求めるのは余りに残酷なのではないかと。

この楽曲の歌詞に問題を見出そうとするなら、人からされて嫌なことは人にしない、という基本中の基本にのっとって考えるだけで十分なのではないでしょうか。
糾弾を目的としたそれ以上の深読みが必要だと判断できないのは私の経験値が足りないからかもしれませんが、誰だって皮肉のネタにはされたくないもの、そこに気付くだけでも良かったのではないかと思うのです。

皮肉…私も口が滑りがちなので、気を付けねばとあらためて。




今回も、最後までお付き合いくださりありがとうございました。
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