ぎっくり腰と手のケガと

 新年あけましておめでとうございます。
 本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 12月31日は個人的に受難の日でした。デッキブラシで床をごしごしこすっていて昼頃にぎっくり腰をし、夕方には長い材を切っていて、弾けた切片で右手親指をバスッと切りました。
 切り傷のほうは、ショックで呆然となっている間に水道水でごしごし洗ってキズパワーパッドを貼り付けて処置終了。皮膚への施術は傷口がふさがってから考えます(もうふさがった。速い)。

 ぎっくり腰は、もうちょっと手間が掛かりました。
 まずは、ただの筋肉的な不具合か骨・関節にまで及ぶ不具合かを感覚的に自分なりに判断します。腰がぱちってなった瞬間、反射的にしゃがみこんで動けなくなったけれど、骨・関節を傷めたような〈怖さ〉は感じなかったから、たぶん、ただの筋肉症状。
 とすればいまの私の歳なら炎症のピークは24時間後だから明日の昼が一番痛いはずで、それまでの間はそこそこ動けるはずだから……と考えて、とりあえず手近にあった竹の編み針で右腕に応急的に施術して、あんまり効いた気配はなかったけれど、まあいいや、ともかく様子を見ながら掃除の続きをまずは済まそう、と予定の作業に取りかかる。

 ぎっくり腰は、寸止めで回避できそうなら先に施術するのが最善ですけれど、もうすでにしてしまったのなら少々急いだところで大差はありません。だからそれより、ちょっとでも動けるうちに始めかけた片付けを終わらそうぜ。で、長い材を切りにかかって手を切る私。何やってんだか。


 そんなこんなで、なんだかんだが落ち着いてからじっくり施術を始めると、どうやらぎっくり腰の原因は右すね・ふくらはぎの癒着のようでした。
 赤ちゃんの頃に右側面から転落・着地している私は、基本的に右半身に癒着が多い。これまでにだいぶあちこち施術してずいぶん良くはなっていますが、それでもまだごくまれに、剥がし残した癒着が不具合を引き起こす。編み針で施術して効果の薄かった右腕も、どうやら本丸らしい右脛・ふくらはぎも、転落に由来する癒着です。張り切ってごしごし床をこすったけれど、癒着で伸び切れない右手足を支えるために余計な負担が腰に掛かりぎっくり腰になった、と想像すると納得できます。


 実は私が本格的なぎっくり腰をするのは初めてのことです。せっかくの機会なので、いろいろ試す・観察する。

 で、一つ目の収穫は〈ある種の腰痛の人に私がお奨めしたい筋トレのありよう〉がわかったことでした。これは私の長年の課題でしたから、解決して嬉しい。これだけで初ぎっくりの元は取れたようなもんです。
 ずいぶん以前になりますが、ヘルニアでお困りのお客さんに施術させてもらっていたことがありました。毎度毎度、施術はそこそこ手応えがあるのに症状がさっぱり改善しない。困り果てて改めて話を聞くと、痛みがあまりにひどいから自分なりにトレーニングをしている、と言われました。そのかたが当時、私の整体と同時に掛かっていた主治医お奨めのトレーニングだったか何かです。内容を聞くと私にはとても賛成できないものだったけれど、なんせそのかたの主治医ですから、あっさり否定はしにくい。そしてご本人は熱心にされている。努力への意志が感じられたので、ただ「それアカンから、ちょっとやめてみて」と言うだけにはできず、でもそのときの私には代案が思いつかず、大いに困りました。
 今後のためにも、せめて代案を見つけなきゃな……思い続けて数年。それが今回、自分が腰痛当事者になってみて、これならお奨めできそうと思える筋トレが見つかりました。根の深い腰痛をお持ちのかた、体幹筋を鍛えたいとお考えのかたに、〈試してみること〉をお奨めしたい。もちろん、合わなかったらすぐやめてください。

 まずは両手で掴める丈夫な何かを見つけます。私が使ったのはベランダの柵でした。しっかりした机の足とかでも代用できると思います。両手を伸ばしきった状態で柵が掴めるくらいの位置で、両足を抱え込むように小さくしゃがむ。ここまでが準備姿勢です。で、地面と柵を両手両足で突っ張るように押しながら、腰・骨盤を後ろにぐうううっと押し出すようにりきみます。息はゆっくり地味に吐く。イメージは、手足の押し・突っ張りを利用して、前傾状態に固まった骨盤をゆっくり押し立てていくような感じなのですが、このときおしりはあまり上げない。手足で押すと言っても手足先でぎゅうぎゅう押すことはせず、肩甲骨・骨盤をその場で力ませるようなイメージです。
 別のイメージで言うと、準備姿勢をひらがなの〈つ〉の字に当てはめて、それを横長の〈つ〉にぐぐっと引き延ばしていく感じです。手先・足先とおしりを、それぞれ逆方向に押してゆく感じですが、これも〈つ〉の字の先っちょ(起筆と終筆のところ)を伸ばすというより曲がり部分をもっと鋭角に曲げていく感じです。説明しといて何ですが、この動作自体に、それなりのコツが必要かもしれません。

 私のぎっくり腰はかなり低い位置の筋肉が原因だったらしいので骨盤を立てるイメージでしましたが、高い位置の人であれば腰を丸めるイメージのほうが合うかもしれません。ともかく、痛くなく・気持ち良く安定する場所を探しつつ、ストレッチでなく筋トレを心掛けてしてください。腰を伸ばすではなく、下腹を後ろに納めていく! 手足とおしりをそれぞれ前後方向に押し伸ばす・押し出す!です。
 時間とか頻度は適当で構いません。気が済んだら終わり。飽きたら終わり。緩く息をしながらむうう……と力むだけなので、気が向いたらする、くらいの意気込みで。


 そしてもう一つ私が観察していたのは、ぎっくり腰の名残りの痛みがどれだけ続くか・しんどいか、でした。
 理屈的には、原因の癒着が剥がせれば後は筋肉が自力で弛んでいきますから、痛んでいる腰に施術する必要はありません。ただそれだと、症状が改善するまでにそこそこ時間が掛かります。この時間が、どれほど耐え難いものかを味わってみたかったのです。
 で、わかったことは、これがなかなかに痛い……。動き始めのことごとくが不安だし、不安なだけじゃなくて実際に大抵痛いし、腰砕けのへっぴり腰でよろよろ歩くのは気が滅入る。そして寝返りが打てない。そもそもすんなり寝転べない。連休だったから良いけれど、これで仕事だとまず自転車に乗るのが嫌だ……。

 パチッとぎっくり腰をすると、その時点から炎症反応が始まります。その炎症が落ち着いて、炎症現場の後片付けが済むまでの期間はどうやったって痛いものなのだ。現場付近の筋肉を伸び縮みさせて、血流を通して、痛み物質の片付けが済むまでは我慢我慢、なのだ……と、自分に言い聞かせてみるけれど、そうは言ってもふつうに痛い。
 整体屋として優先すべきは対症療法でなく癒着剥がし!が私の信念だったけれど、ぎっくり腰で来院されたお客さんに対しては、対症療法も私の仕事、と、考えを改めたほうが良いのかしらん。……が、でもまあ、そうは言ってもホントに痛かったのは精々翌日までだったからなあ。その次の日からは、恐々ではあったけれどママチャリにも乗っていたしウロチョロ買い物にも出てた。〈対症療法に時間を使って癒着剥がしが不十分になる可能性〉と〈徹底的に集中して、必要な癒着剥がしはその日のうちに終える〉を比べるなら、そりゃあ癒着剥がしを採るよなー、とも思ってしまう。まあ、よっぽど痛かったらすぐ来てね、と言うようにはするけど、1~2日様子見て軽快するなら、やっぱりそのほうが良いよな――と、自分の喉元を過ぎればやっぱり熱さは忘れます。ははは。


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 1月1日の地震は、大阪でも揺れました。私は、ちょっと揺れたら南海トラフ・上町地震を警戒する堺市民なので今回も揺れの長さに怯えましたが、大阪だったからこの程度で済んでいたのか……テレビを付けて、言葉を無くしました。
 日本海側が雪の多い地域なのは知っているけれど、せめて今年だけは穏やかで雪少なめの暖冬であってほしいです……。

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