見出し画像

「アフロ民藝」というパワーワード

ここ数年、民藝展があちこちで開かれ、ちょっとした民藝ブームです。2021年は民藝運動を主導した柳宗悦の没後60年、2025年は民藝運動から100年。

でも、民藝じゃなくアフロ+民藝って何?

東京・六本木の森美術館で開催中の「シアスター・ゲイツ展」にその答えがありました。シアスター・ゲイツ氏はアメリカ・シカゴ生まれの「ブラックアーティスト」。彼は20年前に愛知県常滑市で陶芸を学び、日本の民藝運動に関心を持ったそうです。「アフロ民藝」について、本人はこう表現しています。

米国におけるブラック・パワー運動、黒人解放運動と同様、民藝運動は、西洋文明が瞬く間に侵食してくるなか、極めて特有な伝統や歴史を大切に守り継ごうとしました。(中略)共通していたのは、地域性を称え、美への意識を高め、文化の力を尊ぶ、揺るぎない態度でした。「アフロ民藝」とは、私の芸術の旅路においてこの2つの最も重要な運動を融合させる試みなのです。

公式サイトより

二元論で語る横着さを理解しつつ書くと、多数派に対する少数派、中央に対する周縁、帝国に対する民衆、美術に対する工芸……、アメリカの公民権運動と日本の民藝運動に共通点を見い出し、その2つを結びつけるというコンセプトに興味をそそられました。

黒人に関する本で埋め尽くされたライブラリーが突然現れたり、日本の民藝品とブラックミュージックがコラボしたディスコがあったり。想像より作品数は少なく、本音を言えばもっとカオティックであってほしかったのですが、アフロ民藝というパワーワード自体が問いになっていて、中身は何でもいいとすら思えました。

編集者として特に気になったのは雑誌「EBONY」。「LIFE」の黒人版をという考えのもと1945年に生まれ、瞬く間に成功を収めたとか。かつて雑誌はカルチャーの発信源であり、コミュニティそのもの(ときに分断を生む装置にもなる)だったのです。

……といろいろ思いを馳せていますが、高い天井の下で好きなように楽しむのが良いと思います。企画は尖っていますが、包容力のある場です。

Editor's Pick
・「企業文化を変えること=“空気”を変えること」パナソニック コネクトが男性育休92%を達成するまで

(2024.7.18)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?