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ゴリラ研究の山極先生に学ぶ90分

言葉はもともと不完全なもの。僕は言葉が間違った方向に進化してしまったのではと思っているんです——。

先日、元京都大学総長の山極寿一先生のお話を聞く機会がありました。
「生まれる、死ぬ」がテーマのセッションでしたが、話は広がっていきます。冒頭の話もその一部。

いわく、言葉によって伝わるものには限界があり、言葉だけの伝達ではそこからたくさんのものが抜け落ちてしまう。言葉、文字は発せられると“”化石化”し、その解釈もまた受け手が自由に決める。
共助の組織を作る人数の限界は150人で、それは言葉によってつながった組織ではない。身体性を伴い、喜怒哀楽を共にする経験から生まれる……。

平日の夕方、満席に近い会場では多くの人が聞き入っていたようです。熱心にメモをとる姿がありました。
SNSの時代、言葉は切り取られて遠くまで届き、その結果良いうねりが生まれることもありますが、ニュアンスや気持ちまでも伝えられないために、悲しいことも起きています。

ゴリラの研究で知られる山極先生が登壇するイベントに、なぜ私が参加しようと思ったのか。それを思い出せば納得のいく話でした。書籍も取材された記事もたくさんあるのに、直接話を聞きたいと思ったからです。

その一方で、テキストを中心に思いを伝えてきたのが編集者。編集者の果たすべき役割は広がっているし、広がっていかなくてはならない、という気持ちになりました。

会場から、テーマに寄せて「死についてどのように思うか」という質問がありました。山極先生はまず「老化は美しい」と一言。ゴリラって、老いると手足が真っ白になるんだそうです。その姿は神々しいし、人間も隠居はかつて憧れだったと。もっと聞いていたいと思った90分でした。

五感を使って話を聞いた後なので、本棚にあった山極先生の本の中の言葉が、前より心に入ってきます。

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