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大学受験をやめた日 

ベルギーに来てから想像していた以上にたくさんの日本人に出会った。そして一番よく聞かれるのが、なんで高校卒業してすぐイギリスに渡ったのかだった。そう、みなが通る大学進学・大学受験という道を私は自ら断った。今も昔も全く後悔していない。私の人生はそこから始まった。

大学進学が一般的なミドルクラスの日本人家庭からすれば私の選択はかなりの晴天の霹靂であった事は想像に難くない。父は早稲田中退後入り直し国大、母は神奈川の女子大を出て教員をしていた我が家にとって3人兄妹の中で一番成績が良かった私が日本の大学に進学しなかった事は想像以上にショックであったようだ。大学には行かないと初めて口にした時、父から殴られるのではないかというくらい圧を感じた。暴力などをしない人なので絶対にそんな事はないのだけど。父とは高校卒業まで1年程口を聞かなかったし、母は私大の文学部にとりあえず入ればよいのにというスタンスであった。唯一味方をしてくれた母方の祖母は好きなことをすれば良いと言ってくれた。塾や予備校に全く通わなかったおかげで使わなかった教育資金でしぶしぶサポートしてくれた両親に今はとても感謝している。

中学時代に読んだ本からイギリスの教育制度に憧れ、高校時に姉妹校交流で2週間ほど滞在した私は、当時英語がほとんど話せなかったにもかかわらずイギリスに夢中になった。海外に行きたいだけなら交換留学など色々な道はあったはずだ。それでもなお日本の大学に進学しなかったのは理由がある。

一番は人生で多感な18歳という時期を受験勉強に費やすことがもったいないと感じたことだった。若くて全てが魅力的に感じるこの時期に友情でも恋愛でも好きな事を学ぶでも自分自身で選択し経験する何かをしたかった。これは大学受験の意義や将来の職業選択の有無などを理解した今も変わらず思っている。移住した時一番安堵した事は子ども達に受験をさせなくて良いということだし、今ベルギーの大学院にいて学部生が毎回テストに苦しんでいるのを見て若い学生にそんなにテスト勉強をさせなくて良いのにと思ってしまうのです。(あくまで個人の感想です)。ちなみにイギリスの大学学部はそこまでぎちぎちに課題やテストがあったわけではなく、英語には苦しんだけどボランティアをしたり働いたりと大学の外の世界に触れられたことがとてもよかった。

もちろん日本の大学でも入ってしまえば色々楽しめることはわかっていたのだが進学した高校が私服で単位制、校則が全くなくあらゆる行事が自由参加か選択制など一足先に大学気分を満喫してしまったので、日本の大学での自由にそこまで魅力を感じなかったことも大きい。

高校で出会った帰国子女の友達に感化され行けば話せるようになるよーと軽くおされとりあえず行ってしまったイギリス留学。1年間の語学学校とホームステイは今思えば最も充実し学んだ一年だったのではないだろうか。当時切望していたギャップイヤーがまさにこれだったのかも。

英語もたいして話せず国内乗り換え便でスーツケースを紛失しほぼ泣き顔で既に秋も深まる北イングランドのホームステイ先に降り立った私をホストファミリーは本当に温かく迎えてくれた。ホストとしてベテランで英語を話せなくてもヨーロッパの言語だったらなんとなくわかるのよと言っていた彼女の優しさと美味しいイギリス料理に救われた。

最近Voicy(尾石晴さんがお気に入り)をよく聞いているのだけれど親の意向を反して自分の意志を貫く事は思ったより簡単ではないらしい。当時あった根拠のない自信、反抗しただけで親からの愛情を失うわけではないと思えるように育ててくれた両親への感謝を、自分も親になった今より一層感じている。





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