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妊娠中もワークアウトを楽しもう(n=1)

ついに産育休開始。出産まであと数週間。まだまだ先のことだと思っていたのに、あっというまにこの時期を迎えてしまったなぁ。

せっかくなのでサイクリストの妊娠体験記として、ここまでの思い出をつらつらと書いておこうと思います。もし同じ体験をされているサイクリストの方がいらっしゃったら、これも一例ということで参考にしてください。

※妊娠中の運動については、ご自身で調べたり、病院で確認をとったりした上で、安全第一で行ってください!末尾に参考文献URLあり

◆妊娠発覚、ライドもワークアウトも完全中断

妊娠が分かったのは2022年11月。初期はまだ何があるか分からないので、とにかく安静にせねばということで、外ライドもワークアウトも完全に中断した。この頃はまだおなかはふつうだし、目立った症状もなかったので、軽くなら乗れないこともなかったけど、やはり授かったものを大切にしたいという気持ちが強かった。生まれてこの方、ここまで日常生活に気を遣って過ごしたことはないと思う。

ほどなくして凄まじいつわりの到来。いつ吐き気が来るか分からない・・・安静にせねばも何も、それしかできん。正直、健康優良児の自分なら案外大丈夫やろ、と思っていた。舐めてました。ごめんなさい。袖ヶ浦エンデューロにも出るつもりでいたんだけど、まったくそれどころではなかったね!

実際の症状や程度は人によるけど、わたしの場合はこんな感じ。おかげさまでナチュラルに減量した。

  • 真水が気持ち悪い: お茶、ビタミン系飲料で乗り切った

  • 基本的に何かを食べようって気にならない: おかゆ、うどん、おかゆ、うどん・・・

  • とにかくすっぱいものが食べたい: 梅干し、ポン酢、ベリー系、柑橘系などを大量摂取

  • 食べ物を見たり嗅いだりすること自体は大丈夫: 根本的に食い意地が張っているからか!?

◆妊娠中の体重管理の過酷さに直面

12月中旬くらいになると、うそのようにつわりが落ち着き始めた。食欲も驚異の大復活を遂げ、半月もしないうちに体重はもとに戻った

大変だったのはここから。母子ともに健康的な状態で出産を迎えるために重要なこと、それは体重管理である。妊娠中はどうしても体重は増えるもの。一方、増えすぎると妊娠高血圧症候群の原因になり、胎児の発育にも影響が出る。厚生労働省では以下のような基準が示されていて、病院でも基本的にこれに則った指導が行われる。

妊娠中の体重増加量の目安

出典: 厚生労働省「妊産婦のための食生活指針」(2006年)、「『妊産婦のための食生活指針』改定の概要」(2021年)を基に筆者作成
注:改定後は「増加量を厳格に指導する根拠は必ずしも十分ではないと認識し,個人差を考慮したゆるやかな指導を心がける.」とされている

見ての通り、基準自体は改定されていて、改定後の目安は運用も含めてかなり緩和されている。が、実際にどういう風に指導するかは、病院によって違う。わたしがかかっているところは結構厳しめで、いただいた資料や口頭説明から改定前の基準が前提になっていそうなことが分かった。

体重ってそんな簡単に増えるもんなん?と思うかもしれないが、増えるんだなーこれが。体重増加の内訳はざっくりこんな感じ。

妊娠前対比の主な体重増加の内訳

出典: 自治体、医療機関の公表資料を基に筆者作成

生活スタイルを何も変えなくても、これくらいは自動的に増えてしまうし、なんならもともと運動習慣があった人ほど初速は上がる可能性がある。必要だから増えるものとはいえ、無理のない範囲でコントロールしていくことが欠かせない。

わたしも3回目の健診あたりでするっと1.5kg/月くらい増えてしまって「もうちょっとゆるやかにいきましょうね~^^」と軽く注意されてしまった。おそらくだけど、運動量が極端に減ってしまったことで、身体の水分量が以前より多い状態になっていたのが一因と思われる。

だってしょうがないじゃないかぁ!と言いたい気持ちがなかったわけではない。が、それ以上に体重のことで注意されたショックがでかかった。もう絶対怒られないぞ★と決意を固くする。

さっきの内訳でいくと、1番やりようがあるのが脂肪分、次いで水分といったところ。結局のところ、適度な運動とバランスのいい食事がすべてを解決するのだ。そんなこんなで、食事メニューもさることながら、妊娠中ってどれくらいの運動強度なら維持できるんだろう、というのを真剣に調べることになった。

◆上限目安は心拍数150bpm以下、週3時間程度

運動再開の大前提として、妊娠12週頃までの経過が良好であること、流産・早産や各種病気の傾向がないこと、その後の胎児の成長にも異常がないこと、などなどが満たされた状態であることは必須。また、担当のお医者さんにもきちんと確認をとっておく方が安心だろう。

わたしも調子がよくなってきた頃の健診で、もともとロードバイクの趣味があったことを伝え、室内で回すくらいの運動を続けてもよいかと聞いてみた。反応はすごくポジティブで、身体に異常がない限りはむしろ積極的に乗ってください、ただし外は転倒リスクがあるからだめね、という感じだった。

これで心置きなく運動できるぞ~ということで、末尾の参考文献にあるようなものを中心にいろいろと調べた。分かったことはこんな感じ。

妊娠中に推奨される運動内容

出典: 米国産婦人科学会(ACOG)、日本臨床スポーツ医学会産婦人科部会などを基に筆者作成

なるほどなるほど。さすがに時間帯まで考慮するのは難しいけど、よっぽど激しいメニューを選ばなければ、案外ふつうに乗り続けられるんでは??と前向きな気持ちに。

ということで、さっそくTrainerRoad再開!

ちなみに、この数値はあくまで目安で、最大心拍がいくつなのか、もともとどの程度の運動習慣があったのか、などによって許容範囲は異なるので要注意。わたしの場合は最大心拍数がちょうど180bpmくらいなので、基本的には140bpm前後にとどめるのが安全と思われ、それを意識してやることにした。

◆妊娠中の運動目的はあくまで健康維持!

2022年12月。まるまる1か月以上乗っていない状態。とりあえず何も考えずにリカバリーのTaku -1を選んだ。あまりにも久しぶりすぎて心拍計の充電が切れていたので、このときはなしでやった。

中断前の最後にやったTaku -1

再開後1発目のTaku -1

うそだろ・・・脚が・・・信じられないくらい重い・・・・・・ケイデンスを70以上で維持できない。そもそも身体も若干乗り方を忘れていて、うまく力を入れられないので無駄に疲れる。たった30分すら完遂がつらかった。ちゃんと心拍計をつけて負荷を確認しないと危ないと思うレベルだった。

再開後2回目のTaku -1

2回目からはちゃんと心拍計をつけた。ちょっと身体が思い出してきたのか、ケイデンスはそれなりに維持できた。が、やはりというか、以前に比べ心拍数が10近く高い。リカバリーなのに・・・地味にダメージがある。

調べたところ、妊娠中は平常時心拍が10~20は上がるものらしい。赤ちゃんにも血液を送り続ける必要があるので、そりゃそうかという感じなのだが、見かけの数値以上に体感の負荷が大きい。それなりの運動強度は維持したいけれども、向こうしばらくは身体の声を素直に聞いて判断する方針に切り替えることにした。

妊娠中の運動は、強くなるためではなく、健康を維持するためにやるのである、と認識をアップデート。

◆妊娠中期は体調も安定し、徐々に習慣を取り戻す

妊娠20数週くらいまでは、おなかがちょっとずつ大きくなってはいくものの、体調自体は落ち着いていたので、それなりのワークアウト習慣を取り戻すことができた。というか、健診で怒られたくなかったので、意地で続けた。その結果なのか、直接注意されたのはあの1回だけで、その後はむしろほめられることの方が多かった。やったね。

ワークアウト負荷はその日の調子にあわせて80〜100%の間で調整。一定の負荷と継続時間の確保という点でRecessシリーズが1番よかった

習慣の再構築

◆妊娠後期、そろそろ納め時?

意地を貫いたおかげか、妊娠30週を超えるあたりでも体重増加は+7kgくらいにおさまっており、かなりいい感じ。

しかし、ここへ来ておなかの大きくなるペースが急激に上がってくる。ついこの前までジャケットを着れば分からないくらいだったのに、あっというまに自分のつま先が上から見えなくなった。おなかが突っ張るように痛くて、さすがに今日は運動どころではないって日も増えた。

ワークアウトの方も、おなかがずーんと下がろうとするせいか、30分以上同じ姿勢を取り続けるのがつらく、終わったあとに背中や腰が痛くなるようになった。みぞおちあたりまで物理的に圧迫されているので、呼吸もつらい。どれくらいつらいかと言うと、会話で2、3文まとめて話しただけで息が切れる。

この頃にはワークアウト負荷80%がデフォに。それでも心拍がこんなに高い。そろそろ産前のワークアウトは納め時かもしれない。

心拍数が簡単に140に乗る

◆おわりに

こうして書いてみると、長いようであっというまの半年間+αだったなぁ。まだまだ気を抜いていい時期ではないので、何はなくとも無事に出産を終えられるよう、目先は健康第一で過ごしたいと思います。

今は夫と一緒に出産・育児の準備を進めながら、どうやってロードバイク復帰するかねぇ、富士ヒルは交代制かなぁ、なんて話をしているところです。ここまでの支えには本当に感謝。

今後は生活スタイルもがらっと変わるだろうし、今までと同じようにできなくて戸惑うこと、未知の体験で不安になることも、きっとたくさんあると思う。それでもなんとかがんばって乗り切っていければいいなと思っています。

これからもEnjoy Cyclingするぞ!

2022年の富士ヒル試走にて


**********参考文献**********
マタニティーエクササイズ(厚生労働省 e-ヘルスネット)
女性の栄養と運動 妊婦のスポーツ(伊藤、森川、1999)
ACOG Committee Opinion No. 650: Physical Activity and Exercise During Pregnancy and the Postpartum Period(米国産婦人科学会(ACOG)、2015)
妊婦スポーツの安全管理基準(日本臨床スポーツ医学会産婦人科部会、2019)
妊産婦のための食生活指針(厚生労働省、2006)
「妊産婦のための食生活指針」改定の概要(厚生労働省、2021)


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