監査報酬は増加傾向なのか

上場準備で監査法人による監査報告書は重要な関係者の1つである。なぜなら、N-2期からの監査報告書を出してもらえないと上場することはできない。また、監査法人の人員不足の関係で監査法人が受注できる件数が限られている中、契約締結自体が困難な状況であり、当該契約締結をすることが上場するための重要な要素の1つになっている。

監査法人を入れるタイミングとしては、N-2期の期首を固める必要があるためである。遅くともN-3期中、決算月前2、3ヶ月前には確実にコミュニケーションを取るべきで早ければ早いほど良い。コミュニケーションが遅くなると、IPO要員としてのアサインが困難ということで断られる。なお、最近だと予算の進捗状況や事業内容で断られることもあるようだ。

監査法人はできれば大手が良い。東証や証券会社の心証がよくなるからである。なお、比較できる立場でないケースが多い。会社によって選択肢が変わるので他社のアドバイスをそのまま鵜呑みにするのはお勧めしない。他の監査法人を比較したいとか言える時代ではない。

しかし、上記のように監査法人を比較していいところを選ぼう・安価な監査法人を選ぼうということはなく、監査契約締結自体がかなり難しくなっている。そんなこともあり監査報酬は数年前よりも上がっている印象である。直近3年間のマザーズの上場した企業のN-2期とN-1期の監査報酬推移は以下の通り。

監査報酬推移

〜5,000千円以下:15件
5,000千円超 8,000千円以下  :51件
8,000千円超 10,000千円以下:69件
10,000千円超 20,000千円以下:135件
20,000千円超 30,000千円以下:20件
30,000千円超 40,000千円以下:3件
40,000千円超 45,000千円:1件

上場申請期前に10,000千円を超えている件数が相当あり、やはり全体としてk監査報酬は上がっていると考える。それだけ需要が高まり上場マーケットが活発になっている証拠だとも言える。

しかし、ここ3年程度だとそこまで極端な増加があるわけではなく、監査報酬が低額の層が少なくなり、全体として金額が引き上がっている印象がある。そのため、周りに話を聞く場合でも同様の水準の金額の企業が多くなり、結果として上がっている感じになっているとも考えられる。確かに数年前の金額の軽く2倍にはなっている。

しかし、一部気になるのが、上位の金額である。

監査報酬推移_大きいの抽出

30,000千円超 40,000千円以下:3件
40,000千円超 45,000千円:1件

流石に高いと思ったので内容を確認する。

株式会社ブシロード:

監査法人:PwCあらた有限責任監査法人
<上場直近期の監査報酬>
2017年7月期 29,600千円、2018年7月期 33,000千円
<監査報酬の考察>
連結決算で子会社7社、持分法適用会社3社(在外子会社)
連結売上が2017年7月期 22,759,182千円、2018年7月期 28,889,777千円
監査関与者としてパートナー2名、公認会計士5名、その他7名
単純に規模が相当大きいことが主な理由と考えられる。
Ⅰの部

株式会社メドレー:

監査法人:EY新日本有限責任監査法人 32,190千円
<上場直近期の監査報酬>
2017年12月期 19,000千円、2018年12月期 32,190千円
<監査報酬の考察>
単体のみ
売上が2016年12月期 729,408千円、2017年12月期 1,712,491千円、2018年12月期2,933,043千円
監査関与者としてパートナー2名、公認会計士5名、その他22名
監査関与者が多いが、その他の集計は日数が少ないものも含まれていることもあるのでこの数を持って監査報酬が高いとは一概には言えない。
2019年3月に子会社を取得している。連結になるということで工数増えたか。もしくは重要な後発事象が多発。上記の子会社株式の取得、多額の借入、自己株式の取得など計6点。この検討が通常監査の工数を上回ったことで金額がかさんだか。
Ⅰの部

株式会社ココナラ:

監査法人:有限責任監査法人トーマツ
<直近の監査報酬>
2019年8月期 17,000千円、2020年8月期40,446千円
<監査報酬の考察>
売上が2018年8月期 766,836千円、2019年8月期 1,138,467千円、2020年8月期1,775,555千円
監査関与者としてパートナー2名、公認会計士14名、その他13名
広告宣伝費がかさんで決算上は費用先行傾向で、直近まで赤字続き。減損リスクなどで検討に工数がかかったか。本社移転に伴う建物の増加81milもその要因か。
Ⅰの部

サイバートラスト株式会社:

監査法人:有限責任監査法人トーマツ
<直近の監査報酬>
2019年3月期 27,000千円、2020年3月期35,100千円
<監査報酬の考察>
連結子会社
連結売上:
2019年3月期4,168,907千円、2020年3月期4,421,401千円
従業員数(グループ全体):
2019年3月期200人、2020年3月期207人
監査業務に従事するメンバーはパートナー2名、公認会計士10名、会計士試験合格者等13名、その他10名
単純に規模の大きさがで監査報酬が高いと思われる。
Iの部

噂ベースではあの監査法人は高い、というのはあるが、そこまで監査法人の傾向ではなく、規模や案件内容によると考えられなくもない。

次回は監査法人ごとの監査報酬推移とかも出してみようと思う。



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