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医療の変革と進化をメドレー上場から予測して見る

いくつものベンチャー企業に上場承認がおり、12月に無事上場果たしている。一区切りとして本当にお疲れ様と、そして今後の発展を祈りたい。

その中の一つに株式会社メドレー(以下、メドレー社)があるが、医療機関に展開している企業で独自の成長を遂げて上場している。アナログな業界にテクノロジーを入れていく様はまさに今後のベンチャー企業の展開の一つだろう。それは言い換えれば今後の市場の獲得規模の大きさを示すのではないだろうか。

そんなところからメドレー社のIの部から医療業界での展開を予想してみる。


メドレーの資本政策

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投資は様々な投資家から受け入れている。

ニッセイ・キャピタル6号投資事業有限責任組合
有限会社セコイア
NSIVC2012投資事業有限責任組合
MRT株式会社
グリー株式会社
株式会社SMBC信託銀行
グロービス5号ファンド投資事業有限責任組合
ドコモ・イノベーションファンド投資事業組合
MSIVC2012V投資事業有限責任組合
Globis Fund V, L.P.
グリー株式会社
グローバルブレイン6号投資事業有限責任組合
カイゲンファーマー株式会社
その他複数の個人株主

人材不足や出生率不足の日本において、それをどのような形で行うかは重要な要素である。その1つの解決策として健康寿命を伸ばす上で医療は重要である。多くの投資家が興味を持つのは当然だろう。時間ができればこれらの投資家の傾向なども分析してみたい。


メドレーの事業展開

事業沿革

上記は事業に関連するような内容についてまとめたものである。

メドレー社は人材①プラットフォーム事業、②医療プラットフォーム事業、③新規開発サービスを展開しており、現在は人材プラットフォーム事業を軸として事業を拡大している。

①人財プラットフォーム:医療ヘルスケア領域の事業所向けの成功報酬型の人材採用サービス「ジョブメドレー」
②医療プラットフォーム事業:医療機関向けサービス「CLINICS」(「CLINICSオンライン診療」「CLINICSカルテ」「CLINICS予約」)
③新規開発サービス:介護施設情報掲載サービス「介護のほんね」

売上構成は以下の通りである。

四半期会計期間毎売上構成

メドレー社は12月決算である。医療従事者の転職タイミングなのだろうか、第2期四半期が売上が上がる傾向がある。

主な売上は人材プラットフォーム事業である。そのため、プラットフォーム事業について深掘りしていこうと思う。


人材プラットフォーム事業における売上推移と指標

人材プラットフォーム事業

ジョブメドレーは、ジョブメドレーにより転職が成功した転職者が転職後90日以内に申請することでお祝い金が得られる。レ部センスと近い手法でメドレー社は転職者を把握し転職先に成功報酬額を請求することができる。当該成功報酬の発生タイミングは「採用できたら」でその月に利用料金が発生し、設定されている採用単価を支払う義務を負う。当初就業形態をパート・アルバイト・業務委託で契約し、一年以内に正社員に変更する場合はその場合も採用単価が発生する。採用時にすでに資格取得が見えている場合などはその分も加味された採用単価を支払う必要がある。一方で返金ポリシーは以下である。

3. お客様が、ユーザー本人の責による事由に基づきユーザーを解雇した場合や、ユーザーが自己都合による退職をした場合は、当社はお客様に対し、前条の利用料金を以下の返金料率に従って、お客様からの申請後60日以内に返金するものとします。なお、お客様の責により、お客様が雇用したユーザーがお客様との雇用契約を解消した場合、本項は適用しないものとします。
(1) 利用料金発生日後3日以内に退職した場合:90%
(2) 利用料金発生日後4日以上14日以内に退職した場合:70%
(3) 利用料金発生日後15日以上30日以内に退職した場合:50%

返金ポリシーはなかなか厳しいが、売上は1ヶ月で確定することになる。そのような状況を考えると次の転職先は3月〜5月に決定する傾向があると思われる。

医師に話を聞いたがそこまで顕著なことはないが、果たして。


医療プラットフォーム事業における売上推移と指標

医療事業プラットフォーム

医療プラットフォーム事業はクラウド診療支援システム「CLINICS」、医療情報提供サービス「MEDLEY」、レセコン開発「NaClメディカル」が含まれている。課金の方法としては

- 医療機関へのCLINICSのシステム利用料
- データベース利用料
- レセコンの受託開発の報酬

である。安定収入と開発受託の両輪で作っていくような売上内訳構成である。おそらくレセコンについては受託から自社での開発も視野に入れているだろう。


医療業界の売上増加のために

病院における売上である医業収益を高めるためには診療単価を上げることが必要になる。すなわち診療点数を上げることが重要になる。

方法としては

診療点数の加点を獲得できるような事業の運営

に集約される。それではそのためにどのようなことに取り組む必要があるか

適切な人員や人数の配置
入院期間の短縮化または転院・通院による本当に必要な患者への病床利用
病院ごとにそれぞれの役割を担い、患者にもその役割の啓蒙活動を行う

などが重要になると考えられる。

しかしながら、病院経営において診療報酬の拡大はサービスの質もさることながら倫理的に困難であったり従事者たちがそれを求めていなかったりと企業のように利益を目的としたサービス提供がそぐわない。

そのような中で医療業界にどのようなサービスを展開するべきなのか。


メドレーの今後の展開予測

医療業界の状況を鑑みると、重要なことは売上拡大のためのサービスというよりは医療業界の働き方改革なる業務の改善が大きな課題であると考える。

医療業界におけるテクノロジーの導入不足、医療ヘルスケア領域における人材の不足や地域偏在というような課題を解決し、患者と医療従事者双方にとって「納得できる医療」を目指すことは大変意義があることであり、向かうべき未来ではないだろうか。


医療業界

医療機関数及び医療従事者の推移

以下は医療機関数推移である(医療施設動態調査(平成31年1月末概数)(厚生労働省)データを加工)。

医療機関数推移

2017年3月から2020年1月までの推移だが、グラフからだと分かりづらいがこの約3年間で合計510増加し合計178,928となっている。しかし、増加は一般診療所が934増えているが、病院と歯科診療所はそれぞれ98と326減少している。病院の役割と一般診療所の役割の差別化により病院は整理され、一般診療所は増加に繋がってものと推測する。

以下は病床数である。

病床数推移

医療機関は総合的に増加しているが病床数は31千床減少している。病床の大きい病院数の減少と、病床が少ない一般診療所の増加が結果として病床数減少につながっていると考えられる。


医療業界の展開

現在日本は急速に高齢化が進んでいるという中で全員が大学病院に行っても結局待たされる時間が長く、診療時間が短いなどの患者の不満につながり、また、本当に治療な必要な患者に対し入院しきちんとした治療を行うことができない状況がある。そこで国は地域包括ケアシステムを推進している。

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地域包括ケアシステムの5つの構成要素と「自助・互助・共助・公助」

これは、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築するものである。そこで大事になるのが住まいと医療機関・介護期間・コミュニティの相互補完の仕組みである。

不必要な入院はせず、住居と近くの診療所で診療を受けることで自分らしい生活を継続し、本当に治療が必要な人に手術・入院が行き渡るようにするのである。そのような連携を実現するためには情報システムが不可欠である。


電子カルテ

国がこのような世界を実現するために医療業界が変革しようとしている。厚生労働省も紙から電子化を進めることで業務を効率的にしたいと考えている。

医療機関等において情報化を進めることにより、これまで紙でやりとりしていた院内業務や医療機関間における情報連携が効率的に行えることが期待されます。
※厚生労働省HP:医療分野の情報化の現状より

現在の電子カルテの普及率は以下の通りである。(出展:厚生労働省

医療分野の情報化の推進について_|厚生労働省

400床以上の大病院では導入が進んでいる傾向があるが、全体の普及率としては約50%とかなり拡大している。

そもそもカルテの主な役割は

- 患者の病状を治療の状況を管理する
- 診療報酬を計算する
- 薬を出す

というところだろうか。

日本だと以下のような企業がサービス提供している

きりんカルテ
エムスリーデジカル
Medicom-HRkV

なお、海外では日本の比でないくらい普及している。

Markets and Markets の記事では2023年までにelectronic medical records(EMR)は2,000億円くらいの規模になるのではないかと予想している。

Hospital EMR Systems Market worth $18.3 billion by 2023

Global Market InsightsではElectronic Health Recordの以上規模は4,000億円(38billion USD)と予想している。

Electronic Health Record Market

正直ちょっと少ない感じがしなくもない。もしくはこのサイズが正しければその市場を広げるような努力が必要である。

日本とアメリカの病院数の比較とそれに見積もられる日本の市場規模

American Hospital Associationによるとアメリカには5,000超の病院数がある。日本に比べ半分どころか20分の1くらいである。

医療の受ける保険に入っている人数の影響、アメリカでは急性期向けの対応だけ、日本では介護も含まれている、といった色々な予想が考えられる。規模はともかくとして一方で日本ではもっと医療機関があることを考えると情報の収集やそのデータ分析についてバラバラになっている事が想定されるのでそのデータを収集し分析し、提供する事が相当の価値になると考える。そのようなことを考えるとデータ収集のための電子カルテは今後広がっていくと思われる。


まとめ

メドレーが上場した事がきっかけで医療業界にもテクノロジーが入り、人材の流動化で医療機関は適切な労務管理が問われることになる。また、データの管理や活用がさらに進み、医療の向上や管理の向上、事務作業ではない事に時間が割かれる事が考えられる。メドレーの上場はそれだけ幅広く医療業界に認知度を上げ、医療業界にも変化を創出するのではないだろうか。そうなれば他社も追随し、さらに質の高い医療が提供されることになることを期待できる。社会がよくなり人が幸せになるサービスがもっと増えてほしい。


参照

株式会社メドレーのホームページ
新規上場申請のための有価証券報告書(Iの部)株式会社メドレー
厚生労働省

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