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肉を焼く。

僕はどうしようもなくなった時、深夜に肉を焼く。
スーパーにある、安い、何処かの国の、たいていはアメリカだからニュージーランドの、力士の張り手みたいな肉を買う。脂やさしはないほうがいい。出来るだけけ赤い、噛むのが大変そうなやつがいい。でも別にあってもいい。

フライパンに油を敷く。
牛脂があれば使う。別になくてもいい。ニンニクがあれば入れる。別になくてもいい。皮を剥くのがめんどくさかったら潰して入れてもいい。別に入れなくてもいい。塩胡椒はしたかったらすればいい。しなくてもいい。焼いてからでもいい。やっぱり、しなくてもいい。どっちでもいい。

適当なお皿にのせて、食卓につく。
お酒もご飯も付け合わせもなくていい。食べたかったらあってもいい。肉があればそれでいい。

ナイフで肉を切る。
すぐには切れない。ナイフでガシガシと行ったり来たりするのに合わせて、今日のことを思い出す。ああすればよかってこうするべきだったと、好きなだけ行ったり来たりしていい。

フォークで口に運ぶ。
すぐには噛み切れない。奥歯でたくさん噛みながら、何度も考えながら、なんでなぜどうして、クチャクチャ、ついてないテレビを見てると涙が出てくる。それでいい。どうでもいい。飲み込んだら、もうただの肉だ。

あした胃がもたれても、生きていける。それでいい。洗い物は明日でいい。

待てうかつに近づくなエッセイにされるぞ あ、ああ……あー!ありがとうございます!!