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野やぎのエッセイ

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エッセイ・創作エッセイをまとめました。
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#創作大賞2024

職場で刺し身を食べま初夏。

春うららかな陽気を吹き飛ばし、夏をダイレクトアタックで連れてきた初夏。 なにこれ、暑い。 夏よ、そんなに急いでどこへゆく?ものごとには順序があるんだぞ。動機、息切れ、気つけに求心。陽気、梅雨明け、夏日でルーティーン。はい、復唱して。……はい。わかった?段階で連れてきてよね、夏。これさ、真夏日、猛暑日待ったなしじゃん。突然くるとみんなびっくりしちゃうの。体がついていかないの。毎年言ってる気がするぞ。まじで。わかった? ねー。ほんと、暑いですね……とかなんだかんだと言いつつ

小学生になる息子と電車で12時間、行って帰って見つけた旅の終わり。

「とにかく、とおくにいきたい!」 彼は、元気よく言い放った。 本気か? 本気だった。 + この春、小学生になる長男に「春休みどこいきたい?」と聞いたら、こんな答えが返ってきた。 「電車に乗って、とにかく遠くに行きたい」と。 彼は鉄道大好きキッズ、いわゆる子鉄である。それも、乗り鉄マシマシだ。 以前、実家に帰省するときに羽田空港までのルートを任せてみたら、1時間20分の道のりに4時間30分かかった。なんでだ。わからぬ。だが、そこに理由はない。好きは超特急なのだ。とに

10秒でたのしいが消費される時代に、20年以上も切ないジャックスカードのCM「パンとカメラ」が好きすぎるから人生を6分だけくれ。

切ないは、時を越える。 コンテンツの消費は年々速くなっていく。SNSを開けばすぐに10秒でたのしい。一瞬で目を惹くエネルギッシュな画がずらり並んでは、文字通り高速で流れ過ぎ去っていく。 たのしい、エロい、ハイカロリー。炭水化物山盛りのようなコンテンツは濃厚で刺激的だ。 ひと口限り、味見で満足の一過性コンテンツにどっぷり浸かって無作為につまみ食い。ただスマホのスクロールに身を任せて流れていくのは確かにたのしい。たのしいのだが、でもたのしいだけだ。 先月、いや一週間前のトレンド

手作り餃子とスーパーの冷凍餃子ぜんぶ焼いて最強の守護神を決める。

餃子がすきだ。 餃子はすごい。パリパリもモチモチもいける皮に包まれた多種多様の餡。具のバリエーションは無限大。炭水化物にお肉と野菜がたっぷりインしてるなんて完全無欠のおかず王だ。もはや完全栄養食のそれである。同じことをハンバーガーでも常々提唱しているが、いまだ同志に出会ったことはない。なぜだ。なぜなんだ。(個人の感想です) そして、餃子は懐が深い。メインもはれるし、サイドもこなす。ラーメンでもごはんでもOK。完全栄養副菜として、するんとおさまる。その潔さ。ありがてぇ……。

Wow-WowWar-そこに意思はあるんか。

気持ちのいい秋晴れ、平日に休みをとった。 来年から小学生になる長男の就学時検診があり、午後から幼稚園を早退してはじめて小学校にいく。次男もプレスクール。子どものイベントが重なると、どうしてなかなか回らなくなる。フレックスなので在宅でもなんとかなったけれど、思いきって一日有休にした。気持ちが楽である。 朝のバタバタをやり過ごして長男を送り出し、一息つく。次男とパートナーは2階の子ども部屋で遊んでいる。ざっくり片付けを済ませてソファにもたれこんだ。ここのところデスクワーク続き

イギリスで幽霊を左折させた話。

霊感がまったくない。 まったくないが、時々「あれはぼくにしか見えてないかも……?」というタイミングに遭遇する。 例えば高校生のとき。下北沢駅西口の踏切で友だちと待ち合わせしていたら、明らかにやばそうなオーラが漂う存在がいて、本能で「あ……。あれは目を合わせちゃいけない奴だ……。」と見ないようにした。私服の友だちだった。 そのくらい霊感がない。 だけど、人生で一度だけ金縛りに遭遇した。 + それは、大学一年の夏。 ぼくはイギリスのブリストルに降り立っていた。 大