神戸からのデジタルヘルスレポート #83 (在宅・遠隔診療/治療 6/7)
『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。
今回も前回に引き続き、在宅・遠隔診療/治療を扱うです。
1. Cardiolyse:クラウドECG&HRV分析プラットフォーム
Cardiolyseが開発しているのは、クラウドECG(心電図)&HRV(心拍変動)分析プラットフォームです。Cardiolyseと連携しているモニタリング計を患者に処方し、そのデータを継続的に補足・分析し危険兆候予測や介入リマインドを行います。変化兆候の早期捕捉により、各種合併症や心疾患ハイリスクの予防が可能に。使い方は医師側と患者側でスマホアプリ、Webアプリをインストールするだけ、とシンプルです。
<<利用の流れ>>
1. 医師が、Cardiolyseリモート心臓モニタリングデバイスを患者に処方
2. 患者は処方されたアプリをインストールし、Cardiolyse連携デバイスを装着
3. 捕捉データをBluetooth経由でアプリへ連携
4. 医師がリモートかつリアルタイムでのモニタリングが可能に
現在特許出願中の解析技術により、心臓発作や脳卒中が発生する最大2か月前までに兆候捕捉が可能になるとのこと。どういう仕組みなんだ…
21年10月には資金調達目的でのクラウドファンディングをAescuvest上で公開しており、100万ユーロの調達を目指しています。
2. Seremedi:最高の標準治療を実現するケアSaaS
Seremediは、どこでもいつでも重要な患者データにアクセスでき、リモートで患者モニタリングを行えるCareScriptionsというサービスを開発・提供しています。標準治療の浸透により、患者の100%回復を実現することを目標に掲げています。
平均的な治療法、と勘違いされてしまう標準治療ですが、最も科学的で、最も推奨すべき治療であるはず。それを徹底する、という姿勢は医療者に広く受け入れられそう。
<<CareScriptionsの果たす役割>>
・患者に対して:標準治療プロセスを遂行できるように、必要なアクション(投薬量やタイミング等)をガイドします。
・医療ケアチームに対して:治療プロセスを確認しながら患者の状態をモニタリングし、同じ情報をチーム内で共有することで調整や連携をスムーズにします。
・上記によって、患者の再入院やER受診を減らし、臨床チームの医療提供体制を最適化することに貢献しています。
CareScriptionsが活用される場面は、次のような場合です。
手術(外科的腫瘍、臓器移植、整形外科、CABG等手技を伴う心疾患治療)の前
・患者が手術治療計画をオンデマンドで取得可能
・手術前に必要なアクションをリマインダー
・手術前から術後のリハビリテーション、回復までプロセス全体管理
院内の連携や退院計画
・体重や尿量などのバイタルサイン記録
・モバイルデバイスでガイド付き治療プログラムで患者の薬の服用管理
・医師や看護師等の医療ケアチームに退院までの必要なプロセスの表示・共有
どんなときも基本に忠実に。すばらしいコンセプトのサービス。
3. Remedly:開業医向け診療サポートAI+決済支援
Remedlyは、小規模病院や個人開業医の診療をサポートするシステムを提供している企業。AIを利用して疾病の原因の特定を支援します。その上で、医師や患者のスケジュール管理・電子健康記録(EHR)や電子医療記録(EMR)・支払いシステム・オンライン相談といった機能を搭載しています。
2020年のSoftwareAdvice FRONT RUNNERS賞も受賞しています。煩雑でミスが起きやすい支払い管理について、クリックビューで視覚的にもわかりやすいと高評価を受けています。
4. PadInMotion(現Equiva):多言語・多デバイス対応の患者エンゲージメントシステム
Equivaは、患者用のタブレットやモニタリング用のモバイルアプリ、病室の患者用TV等といったデバイスの開発を行っています。また、これらを統合して収集したデータの分析と共有を行うプラットフォームも提供しています。
<<開発デバイス、ソリューション>>
・タブレット
・院内TV
・リモートモニタリングデバイス
・デジタルサイネージ
・モバイルアプリ
コミュニケーションツールとしても用いられるタブレットやモバイルアプリでは、通訳言語機能も搭載しています。英語を話せない人や、聴覚や発話に障害のある人向けに通訳や手話でのコミュニケーションサポートを行ってくれます。多様なバックグラウンドを持つ人が集まるニューヨーク発のスタートアップっぽい課題認識ですね。
<<プラットフォーム>>
同社で提供しているデバイスから集めたデータを統合・分析し活用しているのがHealthRelationship Management(HRM)です。接点を多くすれば集まるデータも多様になること、各接点でのユニバーサル対応を進めるほど顧客ベースが広くなる、というのは原理・原則です。
元は「PadInMotion」という社名でしたが、2021年8月に「Equiva」に改名しています。
HRMの他、remote patient monitoring software (RPM)によって、リアルタイムの患者健康データをシームレスなキャプチャ及びデータ分析と組み合わせます。これらによって、診断・治療・予防の改善のための解析・洞察を臨床現場に提供します。
5. Citus Health:在宅輸液支援ソリューション
Citus Healthは、家庭用輸液サービスを主とした、在宅医療特化型のデジタルヘルスソリューションを提供しています。
特徴は、在宅医療分野の知識と輸液提供の専門知識をサービスレベルで融合しているところで、提供サービスであるCitusHealth Suiteは、患者と医療ケアチーム間でのコミュニケーションツール、治療管理、電子決済や払い戻し機能を搭載しています。
その他、スタッフに対しての教育機能、輸液の自動供給管理システムも搭載されています。
<<スタッフに対しての教育>>
・注射トレーニング
・副作用発生時のトラブルシューティング
※HIPAAに準拠しており、安全性も担保されています。
<<自動供給管理>>
・供給カウントによる無駄の排除
・緊急時の配達
輸液サービスを通して、在宅医療に係る看護師や介護士、製薬企業、プロバイダー等、様々なステークホルダーを繋ぎ、連携するプラットフォームを構築しています。
創業者は、起業家に転向した元在宅看護師。在宅輸液看護師として働いていたMelissa Kozakは、現場で起きる非効率なコミュニケーションと、それらによって引き起こされる患者状態の悪化を心苦しく感じていたそうです。また、輸液プロバイダーが関与することで発生する間接費や、輸液返還時に発生する返済額で成り立つ収益構造にも課題を感じていたとのこと。このような課題を解決すべく、ヘルスケアITリーダーであるShahid Shahと連携し、起業したのがこの会社の始まりです。
CitusHealthは、在宅ケア市場をリードする電子カルテ(EMR)プラットフォーマー、Homecare Homebaseと2020年12月に統合されました。在宅ケアプラットフォームとEMRとの統合されたソリューション開発が一層進みそうです。
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