ジレンマと向き合い、決断する。

ジレンマはどこにでもある。それを受け入れて・相手に受け入れてもらって、腹落ち・納得させつつ、えいやっと決断できる・してもらえること。
自分はこれがけっこう得意だなと最近気づきました。

会社の中はジレンマだらけ

2016年に読んだ本の中で特に印象深かった一冊が、Yahooで人事改革に取り組む本間さんと、東京大学で企業組織とコミュニケーションの研究をされている中原准教授の対談を書籍化した『会社の中はジレンマだらけ~現場マネジャー「決断」のトレーニング~ (光文社新書) 』でした。

当時は「うんうん、上司と部下に挟まれて大変だよなぁ」と深く頷くばかりだったのですが、いま改めて考えると、ジレンマへの対処方法というのは会社組織に限らず社会や他人との向き合い方として重要なんじゃないかと考えています。

会社の中に限らず、世の中全部ジレンマだらけ

DHBRの2018/6月号は職場の孤独をテーマにしていて、その中で藤田一照さんというお坊さんが人の一生についてこんなことをおっしゃっていました。

仏教の世界ではそもそも、孤独を病としてとらえることをしません。なぜなら、人は生まれながらにして孤独な存在だからです。(中略)
ただし、ここで忘れていけないことは、人は絶対的に孤独であると同時に、誰もがつながっているということです。仏教ではそれを「縁起」と呼びます。他との関係性の中で初めて、それとして存在できるということです。万物はこのつながりのネットワークの中にあり、その他には何一つ存在することは出来ません。(中略)
独一無比にユニークな存在である独在性と、全体と一つにつながっている共在性とが矛盾なく、同時に成り立っている。その綾模様の中に、人間の苦しみや悲しみがあり、幸せや喜びもある。(中略)
どうあがいても存在のあり方には逆らえませんから、それに随順した生き方をしていくことが自然であり、賢明です。二重構造のうちの独在性だけ、あるいは共在性だけに囚われるのは、文字通り一面的で、それではバランスを欠いた生き方になってしまうでしょう。
(pp.68-69)

人の存在というものそのものが↑でいうところの二重構造の中で成り立っていて、それってつまりはジレンマだろう、と思いました。どちらも部分的には正しい、ただし全体を見渡すといかにも矛盾していそうで対立しているようにに見える。どこにであるんですよね、ジレンマ。

ジレンマと向き合うのってけっこう大変

仕事をしていると、ジレンマの対処が苦手な方が多くいることに気付きます。
・クライアントワークでQ(品質)・C(コスト)・D(納期)のバランスを取れない
・すぐ収益化できる目先案件ばかりに注力して新しいチャネルや技術、製品に対する投資がおざなりになる
・現場はもう動きたがっているのに経営陣はまだ追加の情報を出せ、資料を出せと要求してくるのの板挟みになってしまい動けない

どちらか片方に寄せちゃってスタンスとったほうがラクです。とにかくコスト・納期絶対で品質は犠牲にする、長期の通しを怠り年度予算に集中する、現場が何を言っても経営陣に盲従する、、、

結果として、そのストレスを誰かが引き受けることになるわけです。

決断への意思

すこし遠い話に読めるかもしれませんが、ジレンマを受け入れられない人の多くは、決断ではなく判断をしようとしているように見えます。判断とは、「 論理・基準などに従って,判定を下す」こと。ジレンマがある環境だと、論理的な矛盾はあるし、基準は設定できないし。

ジレンマもある、情報収集の時間も限られている、完全情報になることはありえない、、、
そんなときに求められているのは決断で、「きっぱりと心を決める」ことです。

プライベートでも決断。目の前の条件、手元にある情報で完璧な判断なんて下せないんだから、それを前提として受け入れること。

仕事でも決断。新規事業をするとき、採用するとき、新しい人事制度を入れるとき、、いずれの場合でも、何かしらのリスクやデメリットはあって、ジレンマに直面することになります。目の前の情報を適切に判定して判断する姿勢はもちろん大切ですが、最後の最後に必要となるのは、腹をくくった決断です。

どこまで言っても不完全な私たちの仕事

CobeAssocieとしての仕事では、↓を大切にしています。

・判断をするための必要な情報収集と、判断基準を明らかにするために全力でお手伝いすること
・一方で情報収集も基準設定も完璧なものにはならないから、決断をする上での心理的ハードルを取り除くお手伝いをすること

全力で行う自分たちの仕事ですが、その不完全さについても受け入れています。むしろ、完全な仕事なんてどこにもないと考えています。

どこまでいっても不完全で、リスクも消えず、反対する人もいる。

そんな中でもできる限り完全に近いものを、リスクを最小化した上で、反対する人も巻き込んだ上で決断できるように支援する。

ジレンマの消えないこの世界で日々良い仕事をしていきたい、そう思っています。

この記事が参加している募集

推薦図書

応援ありがとうございます!