神戸からのデジタルヘルスレポート #98(フェムテック・女性向け/セクシャルヘルス)
『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。
2022年は、昨年2021年に創業したデジタルヘルススタートアップを取り上げていきます。毎週木曜日朝配信を予定しています!
今回は、前回のフェムテック・女性向けを引き継ぎつつ、セクシャルヘルスも絡めながらスタートアップを紹介します。
1. Mind and Mom:妊娠ウェルネスアプリ
Mind and Momは、女性向けの妊娠ウェルネスアプリを提供しています。現在50,000万人のプレママに利用されているとのこと。
Mind and Momのアプリでは、妊娠中のお母さんとお腹の赤ちゃんの健康状態を管理・追跡できるようになっています。体重の変化や薬の管理、栄養について可視化できる上、赤ちゃんの出産日誌を記録し、心拍を聞いて成長を追跡することもできます。マタニティグッズも取り扱っているようです。
また、産婦人科の専門家によって設計されたウェルネスプランが搭載されており、ママはアプリからストレッチや瞑想等を行うことで妊娠中の不安を少しでも軽減できるように設計されているそう。栄養やトレーニングに至るまでウェルネスチャートもパーソナライズされています。 妊娠中はママはお腹の赤ちゃんの様子が気になりますし、自身の健康状態にも気を遣わなければならないですよね。常に不安が多いので、自身と赤ちゃんの状態をアプリで確認できるのは心強い。
詳しくは動画をどうぞ。
医療的なサポートも充実。健康記録がカルテとして参照でき、出生前検査についても検査の種類や検査に必要な準備や説明を受けることができます。妊娠中に不安なことがあった場合は医師に意見を仰ぐことも可能です。
妊娠に関連する事項として「不妊」についても視野に入れているようです。2021年12月からはBlog上で不妊についての情報発信がみられます。今後はママになりたいと願う女性支援についても動きがありそうです。
下記は男性不妊に関する動画です。
CEOのPadmini Janakiは自身が帝王切開での出産経験者。幼い頃に育った小さなスラム街での虚弱で小さな身体のシングルマザーたち、一方で富裕層で肥満に悩まされるママたち、と対照的なママたちを見ていたことが重なり、「女性の健康な妊娠・出産」のためにMind and Momを創業したそうです。
2. GeminiLab:オンライン注文できる精子検査キット
GeminiLabはオンライン注文できる精子検査キットを提供しています。
不妊の原因はだいたい半分の確率で父親側にあるというのが近年では浸透してきています(まあ考えてみれば当たり前ですが)。精子は数だけでなくて質も流産や子供の先天性疾患のリスクにかかわります。でも内容が内容なので中々気軽に病院に行って検査を受けよう!とはなりにくいのも事実です。
GeminiLabのサービスではキットをネット注文できるだけでなく回収までやってくれるので、家から1歩も出ずに検査を受けられるんです。自宅で回収されたサンプルは提携研究施設に送られ、爆速でオンラインレポートが返ってきます。
オンラインで医師と相談できるサービスもあり、専用プラットフォーム上でのビデオ通話が可能です。GDPR準拠、キットはCEマーク獲得済みなど安全性にも配慮されているなという印象です。オンラインで医師と相談できるサービスもあり、専用プラットフォーム上でのビデオ通話が可能です。GDPR準拠、キットはCEマーク獲得済みなど安全性にも配慮されているなという印象です。
プライベートなことなので、自宅で完結する検査方式と生殖医療は相性がいいですし、需要はこれからも増えそうです。
紹介動画はこちら↓
https://geminilab.co/assets/videos/promo.MP4
3. juna:自宅で完結するSTI検査・治療サービス
junaは自宅で完結するSTI(性感染症)のケアを提供しています。
オンラインで検査キットを注文し、検体を返送することで結果が届くしくみです。検査実施機関はCLIA認定のラボ、しかも必要に応じて医師による診断と処方せん治療も込み(HIVは除く)。
検査内容としては
・HIV Ⅰ&Ⅱ
・B型肝炎 / C型肝炎
・トリコモナス
・淋病
・クラミジア
・梅毒
・ヘルペス
などなどメジャーな性感染症がカバーされています。
パッケージの外観もぱっと見はお菓子とかコスメの箱みたいでかわいい。そのまま手渡されても抵抗がないデザインです。
若者向けの啓発活動としてPodcastやTikTokでも性感染症についての知識を発信しています。
4. Testmate Health:自宅用の性感染症尿検査キット
Testmate Healthは性感染症の尿検査キットを開発している企業です。ジュネーブ大学のスピンオフで、現在もスイスを拠点にしています。
「世界初の家庭用性感染症セルフ検査キット」を謳っており、採取から検査まで自分で行うことができるため結果が出るのがとにかく早いのが特徴です。(数分で結果が出るとのこと!)現在は前臨床試験段階にあるようです。
オンラインで注文すると、使い捨ての簡易検査キットが届きます。キットのQRコードをアプリで読み取って、表示された手順に沿って進めていけばOK。検体をセットしてから15分で結果がわかります。
検査項目はクラミジア、淋病、トリコモナス、マイコプラズマ・ウレアプラズマの4in1のみとかなりシンプル。
アプリで検査結果をスキャンでき、必要であればお医者さんと共有するオプションもあるようです。
“アイデンティティや性的指向に関係なく誰でもTestmateを使用できます”
ときっぱり書いてあるのが良い。
2021年10月に160万スイスフランでのシード調達ラウンドを完了。この資金で製品開発を加速させ、デバイスの臨床試験を完了させる予定のようです。
CEOが会社紹介をしている動画もどうぞ。
5. Midnight Health:テキストベースの男性向け/女性向けオンライン診療
Midnight Healthは
①YOULY:緊急避妊薬提供サービス
②STAGGER:脱毛症や性機能障害など男性の健康に関する医療相談サービスの2ブランドを持っている企業です。
YOULY(女性向け)
YOULYはテキストベースでのオンライン医療相談サービスで、
・経口避妊薬(低用量ピル)
・緊急避妊薬
・口唇ヘルペス・性器ヘルペス
・膣カンジダ
・避妊リング
・不眠治療
以上のサービスを提供しています。
特に緊急避妊薬の配達サービスはオーストラリア初だそう。
STAGGER(男性向け)
STAGGERは上のYOULYの男性版といったところで、性機能障害や脱毛症、ヘルペス、睡眠などを扱っています。
YOULY、STAGGER両者ともにまずはオンラインで質問項目に答え、それをもとに医師が診断し、治療対象であれば自宅まで処方薬を配送、という流れになっています。通常24時間以内にお医者さんがレスポンスをくれます。
また、薬の再注文が簡単で、長期的に服用するようなものは繰り返し配送の設定が可能です。
サービスの利用料はサブスクや会費制ではなく、診察料+薬代という構成になっているそうです。
アメリカでクラミジア・梅毒などのSTIは増加傾向にある一方で検査数は不足しています。日本でも最近梅毒が増えてきていますし、医療先進国でも性感染症は問題になり得ます。手ごろな値段・完全匿名・オンラインベースにすることで若年層の検査へのアクセスが良くなれば、全体でも検査や受診渋りが減ることになりそうです。
2021年11月には保険会社のnibがMidnightHealth50%の株式を400万ドルで買収しており、高齢者の健康、腸の健康等、様々なヘルスケア領域へ拡大していくと語っています。今後が楽しみ。
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