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神戸からのデジタルヘルスレポート #25 (Recovery Record/Spiral Therapeutics/Active For Good/Emerge/Cold Trace)

『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。

今回は第25回です!
元気にデジタルヘルススタートアップを紹介していきます:-)

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1. Recovery Record:認知行動療法による摂食障害治療支援

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企業名:Recovery Record
URL:https://www.recoveryrecord.com/
設立年・所在地:2011年・パロアルト
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

Recovery Recordが運営するRR Eating Disorder Managementは、拒食症、神経性過食症、強迫性摂食障害、過食症、強迫性摂食障害などの摂食障害を抱える人が日々の記録・管理し、回復への手助けをするプラットフォームです。

このアプリのユーザーが行えることは、
・スマホアプリを通じた食事、思考、感情の記録し状態理解を深める
・各種記録を医療チームと共有し、行動や傾向、トリガーの理解を促進する
・ユーザー同士がメッセージやギフトを送り合い励まし合うことで治療継続を支援する

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実際のユーザーからは、

「このアプリは、家族や治療チームと同様の、回復への意欲を私に与え続けてくれました」
「栄養士とつながっているので、食事を記録するために紙を持ち歩く必要はありません。 はるかに簡単でやる気になります」

のような声が寄せられています。

摂食障害の原因は様々ありますが、認知行動療法が最も効果のある治療法であることがわかっています。日々の食事や行動を記録することが、認知のゆがみを修正し、日々の行動を変える一助になります。

このアプリには、モチベーションを保つ工夫がちりばめられています。また、いつでも簡単に記録が出来るということが、アドヒアランスを保つのに効果的な手段です。素敵。

2. Spiral Therapeutics:新たな難聴治療療法

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企業名:Spiral Therapeutics
URL:https://www.spiraltx.com/
設立年・所在地:2016年・サンフランシスコ
直近ラウンド:Series A(2018年12月)
調達金額:$10.2m(Camden Partners, Invereadyなど)

デジタルヘルスではなく、新薬開発のスタートアップをご紹介します。Spiral Therapeuticsが取り組む開発テーマは、人間が経験する最も一般的な感覚障害と言われる「難聴」です。

難聴は65歳以上の高齢者が報告する健康問題としてトップ3に入るものであり、世界中で聴覚障害を有する人口は約5億人と推定されます。これだけの人が聴覚障害を持つことによる経済的負担は(どう試算したのか不明点も多いですが)年間7,500億ドルとも言われており、最新の研究によると末梢性聴力障害は家族や社会的相互作用、仕事の状態に影響を与え、認知症の重大な危険因子であるとされています。

このように大きな影響をもたらす問題である一方で、難聴に有効な薬物療法はまだ開発されていません。最近になってようやく内耳疾患の分子メカニズムが解明され、現在治療不可能な状態のための新薬の開発への扉が開かれたところです。

当社の主要な薬剤候補である「LPT99」は、化学療法誘発性難聴、騒音誘発性難聴、およびその他の内耳障害の予防および治療のいくつかの動物モデルで有望な結果を示しています。同社は2018年12月に調達した資金を活かし、LPT99についてこれからフェーズIIの臨床試験にうつっていくとのこと。

内耳治療分野において、どの企業がリーダーとなっていくのかはまだ判然としていません。Spiral Therapeuticsはその第1候補なのかもしれません。

3. Active For Good:栄養失調の子供たちを撲滅する

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組織名:Active For Good (NPO団体)
URL:https://activeforgood.com/
設立年・所在地:2018年・アメリカ
直近ラウンド:-
調達金額:-

これまで紹介してきたのはほとんどがスタートアップ・企業でしたが、価値あるデジタルヘルスの取り組みとして、NPOが提供しているサービスも。

毎年世界では1,700万人を超える子供が重症急性栄養失調(SAM、Severe Acute Malnutrition)に苦しんでおり、うち350万人が死亡しています。しかし、95%の子供のSAM患者は、6~8週間の食事プログラムで救うことができます。しかも一時的に状態を改善するだけではなく、栄養失調状態を"permanently eliminates(恒久的に排除する)"んだと。すごい。

Active For Goodは、運動・活動を記録するWebサービスを提供しながら、そこで記録される運動量・活動量に応じて発展途上国の子供たちに食事プログラムを届ける活動を行うNPOです。Table For Two(TFT)は、ガイドラインに従ってカロリーを控えた栄養バランスの良いTFTメニューを社員食堂などで提供しその1食の食事代のうち20円を寄付することで途上国の食事情を改善しようとするNPOですが、その運動版ですね。

Active For Goodのプログラムを通じて、実際にソマリア・コンゴ共和国・ケニア・ナイジェリア・マリ・南スーダンの栄養失調の子供や女性に食べ物が届けられています。

40万人がアクティブにサービスを継続利用しており、それを通じて300万食以上が寄付として届けられています。結果として2万人以上の子供の命が救われています。

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このほうがよっぽど「結果にコミット」やなと。素敵。

4. Emerge:離れた場所に”感覚”を届ける

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企業名:Emerge
URL:https://www.emergenow.io/
設立年・所在地:2015年・ロサンゼルス
直近ラウンド:Series A(2019年11月)
調達金額:$18.4m(M13、LionTree Partners、Vulcan Capitalなど)

Emergeは、遠く離れた場所の感覚を素手で物理的に感じるためのシステムを開発しています。この技術は、リアルタイムで3Dプロジェクション/ホログラムにマッピングし、素手で物理的に感じることを可能にします。いま注目のxR領域の企業ですね。

このシステムを使用することで、何かの理由で離ればなれになった親子や夫婦が、離れた場所にいながらお互いを近くに感じることができます。現代において、Skypeやzoomなど画面上でお互いにつながることはできますが、大切な人、愛する人と物理的に触れ合うことができることは、単純に素晴らしいことであり、心が満たされます。

Emergeでシンギュラリティ大学のフラッグシッププログラムから生まれてきた企業で、その中でNASAとGoogleから支援を受けています。卒業後、RingやSnapなどに投資をしているM13や、Microsoftの共同創業者のポール・アレンが代表を務めるVulcan Capitalなどから出資を受けています。

Webもめちゃくちゃシンプルで、どんなプロダクトなのか、現在どのような開発段階にあるのか、なにもわからないですが、これからに期待...!!

5. Cold Trace:ワクチン冷蔵庫リモート温度監視

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企業名:Nexleaf Analytics
URL:http://www.nexleaf.org
設立年・所在地:2009年・ロサンゼルス
直近ラウンド:Seed(2014年1月)
調達金額:N/A

予防接種や治療のために必要な各種ワクチンは2°C~8°Cという低温環境で保管する必要がありますが、発展途上国などでは管理体制が不十分な診療所も多く、せっかく準備したワクチンが使えない・効果が十分に出ない、ということもあります。実際、WHO・ユニセフの調査では発展途上国におけるワクチン保管機器の56%が適切に用いられていない、とされています。以来、途上国の環境下でも、ワクチンを適切な温度で保管され、エラーが無いように監視・管理するためにはどうすればよいかという試行錯誤が行われてきました。

そのせいかの一つが、NPOのNexleaf Analyticsが提供するColdTraceは、医療施設・診療所のワクチン冷蔵庫のリモート管理用に設計されたソリューションです。 小型の端末を保管機器の中に入れておき、その端末が自動で収集したデータを分析レポート化、医療従事者や行政に対して自動で報告を行います。↓の動画をみると、低コスト運用が可能そうな感じ。

具体的な活用シーンはこんな感じ?
・保管機器が故障すると医療従事者に警告を発する
・保管機器内の温度をリアルタイム補足しレポート
・保管機器修理後に状態を継続補足し、修理の実効性を検証

既存のワクチンを安全に届けるための仕組み・それを支える機器を届けることは、新しいワクチンを開発することと同じくらい重要だと考えます。
今あるものをうまく活用するために、別のところで新しいものを生み出す。
これがイノベーションのあるべき形だとも感じます。

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こんな感じで、第25回でした。
noteマガジンにもしてみたので、もしよかったらフォローしてください:-)

応援ありがとうございます!