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神戸からのデジタルヘルスレポート #17 (Guardant Health/Logiclnk/mindsDB/Select Research/Talkspace)

『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを毎週数社紹介するマガジンシリーズです。

今回はその第17回です!
今回も元気にデジタルヘルススタートアップを紹介していきます:-)

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1. Guardant Health:血液によるがん検査スタートアップ

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企業名:Guardant Health
URL:guardanthealth.com/
設立年・所在地:2012年・サンフランシスコ
直近ラウンド:IPO(2018年10月)
調達金額:$550m(Sequoia Capital, Softbank Vision Fundなど)

採血は、血液を大さじ一杯程度とるだけで様々な検査を行うことができます。そんな採血分野のスタートアップとしてがん検出の市場に殴り込みをかけ、IPOを果たしたスタートアップがGuardant Healthです。

既存検査手法の一つである生検(バイオプシー)では、医師が患者の生体組織を採取してラボに送って検査をしていたため、結果が出るまでに時間がかかってしまいます。それに対してGuadant Healthは血液というアプローチが比較的容易な対象を持ってがん検出を行うため、現場の意思決定迅速化を支援しています。

世界のがん検出市場は利益性も高く、その市場規模は2020年に1,690億ドル近くになると予想されています。Guardant Healthもその恩恵に預かるはず。そして彼らは今後がん患者100万人以上の腫瘍遺伝子を解析する計画を表明しており、そこで得られたビックデータを解析することでがん治療そのものを発展させることを企図しています。

彼らが提供している高感度な遺伝子解析技術Guardant360は、日本の国立がん研究センターが推し進めるがん遺伝子検査プロジェクト「SCRUM-Japan」でも採用されています。このプロジェクトの成果によっては、国内における癌ゲノム診断の数十万円~百万円程度の自己負担費用がもっと下がっていくかもしれません。

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資金の方に目を向けると、Sequoia CapitalはシリーズAからシリーズEまで5度に渡って投資ラウンドに参加し、Softbank Vision FundもシリーズEからちゃっかり参加。2018年にNasdaq上場しています。上場後も、波はありつつも着実に時価総額を伸ばしていて、市場からの期待の大きさを感じさせます。

2. Logiclnk:紫外線被曝の可視化シール

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企業名:Logiclnk
URL:logicink.com/
設立年・所在地:N/A・サンフランシスコ
直近ラウンド:Seed(2018年11月)
調達金額:N/A

紫外線は、ビタミンDを作り殺菌作用や新陳代謝を高めるメリットがある一方で、皮膚がんのリスクが高まるという健康上のリスクと、肌の老化を進行させるという美容上の問題というデメリットが存在します。我々はそんな紫外線とうまく付き合っていかなければいけません。ただ紫外線は目には見えないがゆえに1日どれくらいの量をあびているかが普通ではわからない。そんな悩みを解決するのがこのLogiclnkです

Logiclnkは体に紫外線の量に応じて形や色が変わるタトゥーシールを開発しました。防水にもなっているので、1日ずっとつけっぱなしでいられます。外側の円が完全にピンクになると一日の紫外線制限に達したことを教えてくれます。また中心の円と点は、現在の紫外線量をリアルタイムで示しています。

価格は大体1枚4ドルくらい。サブスクプランもあるみたい。

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ぜひ試してみたいんですが、配送先がUSのみ...
旅行で言ったときにでもかってみます!

3. MindsDB:機械学習による患者の健康予測

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企業名:MindsDB
URL:mindsdb.com/
設立年・所在地:2017年・サンフランシスコ
直近ラウンド:Seed(2018年10月)
調達金額:$800k(Berkeley SkyDeck Fund)

MindsDBは、ヘルスケアに限らず、人工知能と機械学習によってデータを有効活用できるプラットフォームを提供しているスタートアップです。金融や保険、エネルギー、小売業界など様々な分野で用いられており、ケーススタディとしても「クレジットスコア算出」「顧客のLTV最大化」「在庫マネジメント」などが並びます。

医療分野の活用としては、現状の治療データを基に患者の疾患特定を正確に行いつつ、特定の治療方法を採用したときのアウトカムを事前に予測し診断支援を行います。さらに、処方に対する作用結果の予測も合わせて提供しています。

同社のプロダクト紹介を見ると、正確さ×人間読み解き性×安全性の3つが特徴として並びます。この人間読み解き性(Interpretable)がヘルスケアの分野ではとっても大切ですね。何の因子を持って相談しているのか、他の医療者や患者さん・ご家族に説明もできなきゃいけませんし。

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日本でこのモデルを考えた時に、誰がこのプロダクトのバイヤーになるんだろうと妄想していました。いいプロダクトだからこそ、適切な意思決定者が適切な座組で導入される未来が来るといいなぁと思います。

4. Select Research:身体3Dスキャンによる肥満・健康リスク可視化

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企業名:Select Research
URL:www.selectresearch.com/
設立年・所在地:1995年・イギリス/ウスター
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

スタートアップと言うにはあまりに老舗のSelect Research社。同社は3D人体測定で世界をリードする企業の一つとして知られています。
ヘルスケア領域では、身体3Dスキャンによって測定対象者の肥満とその他健康に関するリスクを発見する用途で活用をされています。

BMI(Body Mass Index)と呼ばれる身長と体重のみに基づいて肥満率を図る方法があります。しかしBMIは体の形や体内における体重の分布を考慮していません。筋肉は脂肪よりも重いためこういった要素を考慮しようと思うと本来は内臓脂肪量なども測定する必要があります。

同社は脂肪の分布、ウエスト/ヒップ比、及びBMIを推定するBVI(Body Volume Index)というアプリの製作を行っています。BVIのすごいところはハードウェアを追加せずにモバイルアプリまたはサービスに統合して内臓脂肪を計算できる点です。これによりBMIのみでなく総体脂肪、内臓脂肪などの要素も考慮して体の状態を観察します。

Web上に掲載された同社創業からの長いHistoryを読んでいると、「長いこと苦労していたんだろうなぁ...」と感じます。2002年4月からソフトウェア開発をはじめて、、、2007年に欧州で商標をとって、、、イングランド地方都市企業の粘り強さと底力を感じさせていただきました。
私たちも地方都市・神戸で頑張ろう。

5. Talkspace:オンライントークセラピー

企業名:Talkspace
URL:www.talkspace.com
設立年・所在地:2012年・ニューヨーク
直近ラウンド:Series D(2019年5月)
調達金額:$106.7m(Spark Capital、Softbankなど)

Talkspaceは「トークセラピー」という精神疾患療法をオンラインで提供するスタートアップです。馴染みのない方も多いかもしれませんが、「トークセラピー」とは心の重荷になっている事柄を言葉で取り除くという治療です。この治療はうつ病や不安症、パニック障害といった精神疾患の治療に用いられています。従来は1週間毎に医院にて行われるものですが、これはセラピストと患者の双方にとって負担になっていました。そんな課題をオンラインの枠組みで解決するのがこのTalkspaceです。

1週間の利用は49ドル、月単位であれば一週間25ドル、年単位であれば1週間12ドル程度の負担で、匿名でオンラインセラピーを利用することができます。この費用は従来の対面診療に比べれば約80%も安い値段です。

私が素敵だなと感じたのは、様々な切り口でプランを用意していること。Talkspace for Teens(10代向け)やCouple Therapy(夫婦・カップル向け)、最近は学生向けのプランも提供していて、メンタルヘルスの課題が大きいと言われる対象向けに明確なメッセージを打ち出しています。

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Talkspaceの資金調達ラウンドには、4度に渡ってSoftbank本体が参加しています。またSoftbank fundもちょこちょこっと入ったりしています。
オンラインセラピー、特に精神疾患関係は可能性が大きいと思っているんですが、日本の治療慣習や保険制度を考えると道のりはまだ長そう。
メンタルヘルス、取り組み方が色々あるんだけどなぁ。

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こんな感じで、第17回でした。
noteマガジンにもしてみたので、もしよかったらフォローしてください:-)

応援ありがとうございます!