無色透名祭II参加曲「浮遊」


まえがき


各位
こんにちは。はじめましての人ははじめまして。
ボカロPの野蒜です。
普段はこんな曲をつくってます。

Twitterから見てる人が多いのかな、と思います。

無色透名祭II、お疲れ様でした〜〜〜〜〜〜
いやあめちゃくちゃ楽しかったです!巡回もそうでしたし、野蒜の曲がどんな反応を頂けるのかな〜〜〜と思いながらソワソワ待ちしている時間もとても素敵なものでした!

ちなみにですが、野蒜の無色透名祭参加曲はこちらでした↓

いや〜〜〜〜これは流石にわからないでしょ〜〜〜って思っていたところ、約1名当てていた方がおりまして………!!!!!すげえ………

さて、ここから本題。
なぜ野蒜はこんな曲を書いたのでしょうか、というお話です。

きっかけ

ある出勤日のこと。
お昼休憩中に仮眠していた野蒜は、夢を見ました。
それなりに水深のあるプールに漂っており、そこには幻想的な音楽が流れている。
水中とははっきり自覚しているけれど呼吸も苦しくなく、まさに野蒜にとって理想的な、そんな空間でした。
そんな素敵な夢を見たあと、水中を漂っているような曲をつくりたい!と思い立ち、ボカコレ2023夏参加曲「DiVE!」を作り上げた直後に、プロジェクトを作りました。
「#088 遊泳(仮)」

制作過程 序

そこから野蒜は曲を集め始めました。
もともとアンビエントな曲にしようという設計図は頭の中にあったので、いくつか思い当たる曲を集め、このアーティストのこれを取り入れよう!といった感じで、少しずつ。
そうしてできたプレイリストがこれにあたります。

少し前に聞いて衝撃を受けていた「記憶 / イヤホンズ(さん)」 、私の中心にある宇多田ヒカルさんの曲や三浦大知さんの曲、そしてうっすらとポエトリーにしたいと考えていたからなのか、世界電力さんの「ポストずんだロックなのだ」を混ぜながら。
少しずつ言葉を紡ぎ、曲想を練り、考えていました。
曲が先か、歌詞が先か。難しいな。どうしよう、どうしよう………と。

制作過程 出会ってしまいました

そんな最中、2023年8月17日。
野蒜は一生心に残る、運命的な出会いをしてしまいました。
TVアニメ「BanG Dream! It's MyGO!!!!!」の第10話「#10 ずっと迷子」
という作品、お話です。
…あ、ちなみに。BanG Dream!シリーズを知らない方はこちらを、

MyGO!!!!!というバンドを知らない方はこちらを合わせてご覧いただけると幸いです。

MyGO!!!!!はいいぞ。

…それはさておいて。
私はこの作品に出てくる高松燈ちゃん (以下、燈ちゃん)及び、燈ちゃんを演じている羊宮妃那さん (以下、推し、あなた 等の表現を使います)という声優さんが大好きなので、このアニメも1話から視聴しておりました。
そんな中で視聴した10話。これは、ぜひこのnoteを読んでいるあなたにも見て頂きたいので詳細は伏せますが、めっっっっっっっっっっちゃくちゃ感動してしまいました。
感動のピークを10話の最後にもってくるような構成になっている作品(のように感じましたの)で、雷に打たれたような衝撃を受けまして。
その中に出てきた「詩超絆」という曲が鮮烈に印象に残り、それまで積み上げていた「遊泳(仮)」の歌詞をすべて白紙に戻しました。

…まっていまきいてもなきそう、むり(?)

制作過程 考え続ける歌詞

本旨は推し活ではないので、話を戻します。
「詩超絆」から受けた衝撃を言葉にするのが難しく。なんとか音楽で表現したいと思い、ここから本腰を入れて「アンビエント × ポエトリーリーディング」というコンセプトで臨み始めました。
抽象的なコンセプトであり、かつ初めて挑むジャンルであったこともあり、アレンジのアイデアがミリも浮かばなかったので、歌詞から書き始めて、歌詞の内容をもとにアレンジを組み立てようとしたのですが。まあ歌詞に困る。

燈ちゃんのように、思いの丈をありのまま綴ってみるか?
でもそうすると、野蒜が苦しかった頃の時期に触れる必要があって。
全体のコンセプトは何?この曲を通して何を伝えたいの?
フレーズは思いつくのに、まとまりのある文章にできなくて。

その間に「創造」「Charm」のリリース計画も裏で進めながら、
柔らかく頭を切り替えて、悩みに悩んで、提出の2日前までじっくりと考えていました。
そうしてできた「浮遊」の歌詞、しめて1,663文字。(後述)

完成させたかった理由、公開したかった理由

自分の心をありのままに表現にするには、野蒜が抑うつを発症して虚無感に塗れていた、蓋をしていた過去を開き見つめ直す必要がありまして。
時にはそれで苦しみ、悩むこともありました。
直接的な歌詞の表現を見つめ、より感情が鮮明に伝わるようにと調声を行う中で、自分が綴った表現に自分で傷ついたことも1回や2回ではありません。
それでもこの曲を世に出して、伝えたかった理由。

「凡人」である私でも。
あなたのように、思いを丁寧に汲み取れなくても。
それでも、野蒜の音楽が届く範囲で、私と同じような苦しみを抱えている人がいたのだとしたら、そこに寄り添える曲でありたかったから。
我儘で、散文的でも。
思いの丈を、この曲にぶつけて、表現しきろうと、
なんとかもがいて完成させました。

先に書けなかったのですが、8/17を迎える前に、8/12に、MyGO!!!!!の5thライブ「迷うことに迷わない」で、推しがカンザキイオリさんの「君の神様になりたい。」をカバーしていたこともありまして。(以下映像は3rdライブですが)
私も、私の曲に共感してくださる人に対して寄り添いたいという気持ちが強く芽生えたためでした。

そういうわけで、MyGO!!!!!に、高松燈ちゃんという存在に出会い、ある意味では「詩超絆」という曲に対する、野蒜の私信とも呼べる返歌がここに生まれたのでした。

おわりに

以上、ここまで駄文を散々に書き連ねましたが。
ここまで極端に苦しむことはないながらも、こんな感じで野蒜は曲を着想し、
曲をつくり続けています。
これからも、自分の言葉に正直に、自分の気持ちに正直に。
抱いた感情を零さないように、向けてくださる感情を少しでも受け止められるように、そんな思いを抱き続けながら創作を続けていこうと思います。
ここまで読んでくれて、本当に、ありがとうございました。


おまけ 「浮遊」 歌詞 書き下し

目が覚めると、青空が揺らめていていた。
乱反射する日光に、知覚される、冷たくも温かくもない感触。
音は篭もり、声を出そうにも空気を伝えるのがやっとで。
そうしてようやく気づいた。ああ、ここは水の中だって。

しかしそこにいる理由はわからず、そのまま辺りを見渡してみる。
建物が沈んでいる。どうしてこうなっているんだろう?
街の色も木々の色も、何一つ分け隔てることなく、
柔らかく不明瞭な波の形にもれなく飲み込まれている。

ぼんやり漂っていると、視界に挟まる様々な物。
ぬいぐるみ、机と椅子、ピアノにパソコン、ノートブック。
連関のない物体が次々と僕の前を通過してゆくから、
もはや浮遊どころではない、と身体をあちこちくねらせる。

くねらせているうちに苦しくなり、やがて避けるのを諦めて、
物にぶつかり、その痛みが少しずつ癪に障ったころ。
突然流れてくる情報。あまりに多い、悲痛な叫び。
その首の締まるような苦しみに、僕は思わず気を失った。

意識の端々で見えてきたのは、かつての僕の黒い現実。
「お前は変だ」「理解し難い」と笑われ叩かれ嘲られ。
特別故に拒否されて、アイデンティティを見失い、
やがて主張を諦めて砕けた心で普通を演じた。

でも普通なんて、なりたくてなれるもんじゃなかった。
みんなの普通は僕の「変」で、僕の普通はみんなの「変」だから。
笑われるのはもう嫌だ。虐められるのはもう嫌だ、って
世界を捨て、現実を捨て、静かに身を投げ浮遊した。

浮遊を続けているとふと、与えられた記号。
流れてくる音、動き出す律動に歌わずにはいられず。
喋ると苦しいはずなのに、歌ではそうはならなくて。
溢れ出す旋律、紡がれる言葉、思わず零れる涙。

歌が僕の全てになるまでにあまり時間はかからなくて。
何もかも投げ出して音と言葉にのめり込んだあのひととき。
躁、孤独な心を癒してくれるあなたに出会ったから。
寝ることも、食べることもどうでも良くなり只管月日を費やした。

音楽を作り続けるだけで生きていければどんなに幸せか。
でも僕にはまだその力はなくて。
社会で心を抑えながら、辛うじて失わないように、
ギリギリの状態で、創作を拠り所にして、
この遣瀬のない気持ちを吐き出すかのように、
ただ一心不乱に、泣いている心を代弁するように、
悲哀も憂鬱も嘘偽りなく等身大のまま、
不安と期待と絶望と希望とを反復横跳びしながら、
ただそれだけが救いなんだと、それが僕を形容する全てなんだと、
ノートに綴った散文詩を僕の影分身に歌わせていた。

ツギハギだらけの体、ツギハギだらけの心、
ツギハギだらけの声、ツギハギだらけの思考、
ツギハギだらけの言葉。それでも僕は歌うから。
僕が抱えた思いを吐露できるのはこの場所だけだから。
もしそれで一人でもこの声に呼応する誰かがいるなら。
僕はそんな君のためにこの曲を捧げたい。
でも自分自身の救いさえも自分が生み出した曲に依拠することでしか起こせない僕ができるのか、って彷徨い躊躇い浮遊した。

結局、差し伸べられた手を取って、希望だなんだと嘯いて、
あなたの存在を、可能性を、興奮気味に反芻しても、
僕は目の前で苦しんでいるそのたった1人に対して
なんの言葉も分けることができないただの凡人なんだよ。

苦しくて、辛くて、現実と理想との差に打ちひしがれて。
あなたはできてなんで私は、って比べてさらに落ち込んで。
こんなちっぽけな私に伝えられる気持ちなんてあるのか、
ってまとまらない頭のままだけど、これが今の私なんだよ。
たとえ罵倒されてでも寄り添って生きていたいんだよ。

ねえ、歌ってよ。叫んでよ。震えてよ。笑ってよ。生きててよ。
強制なんか出来ないよ、だからこれは君に捧げる祈りなんだよ
嘆いてよ。憂いてよ。拒んでよ。嫌ってよ。愛してよ。
エゴで塗れた僕の感情を君の「救い」で上書きさせてよ。ねえ!

歌ってよ。叫んでよ。笑ってよ。震えてよ。生きててよ。
善も悪もなんもかんもまとめて僕に全部預けて欲しいんだよ。
だから、嘆いてよ。憂いてよ。拒んでよ。嫌ってよ。愛してよ。
自分のことで精一杯な私がさらけ出した全てがこの歌なんだよ…

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