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折りたたみ北京 株式市場 小説 (著)郝景芳(ハオ・ジンファン)

折りたたみ北京 (著)郝景芳(ハオ・ジンファン)

「三交替の都市」と「世界の証券取引所」
 東証一部しか知らなかった時代があります。いえ、厳密にいえば他のニューヨークやナスダック、欧州の証券取引所等に属する株式市場も知っていたはずなのですが、なぜか頭が認識していませんでした。自分が活動している範囲が世界の全てだと思い込んでいたなのかもしれません。

 生まれた地域、町、市、県、国……成長過程によりますが、それぞれが全てだと思い込んだ時期がありました。

「折りたたみ北京」を読むと、そういった狭い世界の中で生きていた自分を思い出します。この小説の場合、異なる世界(階層)へ行く場合に物理的な制限があります。ですから、容易にそれぞれの世界を移動できるわけにはいきません。

 日本時間で朝起きて、東証やジャスダックの市場を眺め、後場から香港や上海、後場ひけ後から欧州~米国という風にインターネット上の取引とは違います。私たちは一部の地域や時期に影響する地政学リスクを除けば、世界中のおおよそどこにでも旅行することができます。

 自宅にいながら、世界中のニュースに触れることも、現在(2020年時点)では簡単です。しかし、将来はどうでしょうか? オープンの時代から、クローズドの世界が訪れるかもしれません。

あらすじ
北京、異形の都市。この街は貧富の差により三層のスペースに分割され、24時間ごとに世界が回転・交替し、建物は空間に折りたたまれていく。緻密にして巨大なルービーックキューブ型都市の社会と文化に翻弄される男の冒険を描いた郝景芳(ハオ・ジンファン)によるヒューゴー賞受賞の表題作

引用元:(著)郝景芳(ハオ・ジンファン)(作品名)折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー (A HAYAKAWA SCIENCE FICTION SERIES)

興味深いところ
  私はこの小説を人づてに聞きました。そのタイトルの意味が一回では理解できずに、聞き直したことを覚えています。言葉としては、聞き取れました。しかし、本当にそういうタイトルなのか? 聞き間違えではないか? と思ったことを覚えています。

 それほど、このタイトルにはインパクトがあり、一度聞いたら簡単には忘れません。タイトルだけですでに面白いことは瞬時に理解できました。すぐに興味が湧いて、読みました。

 この小説は、タイトルだけではなく、それに負けないぐらいの設定や内容の濃さがあります。

 この著者はジャンルにとらわれない小説を描きたいと、豪語しているだけあり、SFだけの切り口で語るにはもったいない作品です。

 主要な登場人物全てに、生活があり、それに関連する悩みを抱えています。そこには紛れもない”生きた人物”が描かれていて、物語を動かす原動力になっています。人の行動には必ずその背景があり、そこを丁寧に描き切っているので、登場人物が”駒”にはなっていません。

 三層の世界のうち、第3スペースと第1スペースを移動するシーンは、スパイ映画の潜入シーンのように緊迫感があります。映像的にも想像できるいくつかのシーンがありました。

 日本の株式市場が折りたたまれて、閉まり、欧州やニューヨークの株式市場が動き出すとき、完全に折りたたみ北京のイメージです。

 夜明け頃、街は折りたたまれて平らになる。超高層ビルはじつに謙虚な召使いのように、頭が足につくまで従順にお辞儀をする。そしてまた開き、また折りたたまれ、首と腕をひねって隙間に収納する。かつて超高層ビルだった小さなブロックがもぞもぞと寄り集まり、緻密で巨大なルービックキューブとなって、深い眠りに落ちていくのだ。

 その頃には、地面が回転しはじめている。一区画ずつ、地面が軸を中心に一八〇度回転して、裏側の建物を表に出していく。

引用元:(著)郝景芳(ハオ・ジンファン)(作品名)折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー (A HAYAKAWA SCIENCE FICTION SERIES) 
 

昨今のメガテック企業BATHの躍進に見られる中国の勢いが増す中、経済だけではないと感じさせられました。中国企業の脅威は何年も前からニュースで取り上げられていました。私も仕事の関係で、ここ数年何度か中国に足を運んだことがあります。行く度に異なる様相を呈しているのがはっきりと感じられました。

 その発展と共に中国文学、特にSFについてもオバマ前大統領や、Facebookの共同創業者マークザッカーバーグ他、ビジネスパーソンが絶賛し、注目を集めました。

 その実力は本物です。

 世界中の株式市場は、その国に依存して企業が上場をしています。国の発展と市場の勢いは当然リンクしています。中国、香港や上海の市場は今後、どのように発展していくのでしょうか。中国SFは、それを図るひとつ指標になるのかもしれません。

著者紹介
郝景芳(ハオ・ジンファン)
「折りたたみ北京」(ケン・リュウ訳)によって二〇一六年にヒューゴー賞を受賞した。彼女は物理学を専攻し、その後、経済学を専門に研究した。そのせいか、彼女の作品はしっかりしたハードSF的知識に裏付けされた設定と、複雑な社会・人々を描くのに長けている。 ~中略~

「ジャンルにとらわれるつもりはない。今後も偏って書くつもりはなく、純文学もSFも書きたい」

引用元:(作品名)折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー (A HAYAKAWA SCIENCE FICTION SERIES)

こんな人におすすめ
・グローバルトレーダー
・ビギナー
・俯瞰タイプ

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