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性的人間 (著)大江 健三郎 「厳粛な綱渡り」と「乱高下相場」

ハイリスク・ハイリターン銘柄 小説

あなたが資産形成において、ハイリスク・ハイリターンの投資をしているのであれば、冷静になって再度ポートフォリオを見直した方がいい、と言われるかもしれません。小中型株や低位株を数十銘柄ずっと監視して、機会を狙いながら短いスパンでトレードを繰り返し、利益を得るのは難易度が高いからです。

 株式口座を開いたばかりのトレーダーが欲につられ、ハイリスク・ハイリターンの銘柄にエントリーしてすぐに資産を溶かします。外から眺めていると、意外と簡単に利益を得られると思うからです。基礎的な投資方法や分析、財務諸表、経済環境について情報収集を怠ると成功する確率はぐっと下がります。

 どうしてもその道を選ばなければならない理由があったとすれば、投資の方針に外野が口を出すべきではないでしょう。もしくはハイリスク・ハイリターン投資をしたいという、強い欲求、それも並々ならぬ持論がある場合は、止めることすらできません。

 この小説に登場する青年Jには、確固たる反・性的な自己処罰の欲求にかられて危険な道を突き進むシーンがあります。読んでいてとても危うく感じます。当の人物はリスク分析をどこまでしていたのか不明です。

 株式投資、トレードはいうまでもなくリスクを伴います。強い欲求は視界を曇らせます。曇った景色を突き進んでいき、大きなリターンを得る場合もあり、そうでない場合もあります。当然のことですが、どのような未来が待ち受けているかは誰にもわかりません。

あらすじ
痴漢をテーマに”厳粛な綱渡り”という嵐のような詩を書こうとする少年と青年Jを主人公に、男色、乱交などあらゆる反社会的な性を描き、人間存在の真実に迫る問題作『性的人間』。

引用元:(著)大江 健三郎 (作品名)性的人間 (新潮文庫)

興味深いところ
 著者の小説は、とっつきにくい印象がありました。テーマが重く、センテンスが長い上に癖のあるワードセンスが悪文という評価をよく耳にしたからです。初めて読んだのは芥川賞受賞作である『死者の奢り・飼育』でした。正直なところ強烈ではあるはずなのに、衝撃をあまり受けませんでした。ただ、心の奥の深い部分に小さな楔が刺さっていて、それが時々違和感を生みました。読後の余韻があったのでしょう、そこから他の作品も読むようになりました。

《鋪道上の友人》と称される老人と青年Jは痴漢仲間です。彼らがある日、痴漢をテーマに”厳粛な綱渡り”という嵐のような詩を書こうとする少年と出会います。”厳粛な綱渡り”と”嵐のような詩”それだけでこの小説の魅力が伝わってくるような言葉の力があります。この少年は物語の中でも凄まじいエネルギーを放っています。

 株式投資やトレードをしていて、情報交換をする場面があると思います。それが、友人であったり、SNS上で知り合った人であったり、証券会社の人だったり、親戚や親でも誰だって構いません。あなたが元々ハイリスク・ハイリターン銘柄に興味を持っていて、周囲に嵐のような投資家・トレーダーがいたとするならば、少なからず影響を受けるはずです。

 損切りライン=破滅かもしれません。大きなリターンはまやかしかもしれません。すべては嵐のような市場に吹き飛ばされる小っぽけな快楽なのかもしれません。

 ちなみに新潮文庫の『性的人間』には『セヴンティーン』という強烈な中編も収録されています。どちらも好き嫌いがハッキリ分かれる作品ですが、私のお気に入りのひとつです。

紹介文

痴漢たち、この東京に数万人を数えながら、きわめて孤独でしかない、心貧しくむなしく危険な情熱にみちた日常生活の闘牛師、厳粛きわまる綱渡り師たち……

 かれらはもの哀しいほどにもいかめしい顔をして切実に滑稽に、地位やら名誉やら、ときには生命までをも露骨な危険にさらして、徒手空拳で、ごく小っぽけなつまらない快楽のために活動する。そもそも現代は、冒険家たちにとってめぐまれた時代ではないだろう。

引用元:(著)大江 健三郎 (作品名)性的人間 (新潮文庫)

 プロの投資家ですら年間20%を超える利回りを達成することは困難であり、それどころかマイナスに転じることだって多々あります。短期トレードで安定的な利益を積み上げるということはほぼ不可能に近い奇跡です。リスクには目を瞑れる人でも、リターンに目が眩むのが人間です。

 嵐が吹き荒れ乱高下し続ける相場の中、厳粛な綱渡りをするように切り抜けられる人間というのは、どういう心境なのでしょうか。この小説に登場する少年のように、何本ものネジが吹っ飛んでいないとたどり着くことができない領域なのかもしれません。

 私には到底不可能ですし、やろうとすら思いません。自分でも制御できない欲望を抱え込んだ時点で、静かに去るのが得策と言えるのではないでしょうか。 

著者紹介
大江健三郎
1935年愛媛県生まれ。東京大学仏文科卒。大学在学中の58年、「飼育」で芥川賞受賞。以降、現在まで常に現代文学をリードし続け、『万延元年のフット ボール』(谷崎潤一郎賞)、『洪水はわが魂に及び』(野間文芸賞)、『「雨の木」を聴く女たち』(読売文学賞)、『新しい人よ眼ざめよ』(大佛次郎賞)な ど数多くの賞を受賞、94年にノーベル文学賞を受賞

引用元:「BOOK著者紹介情報」

こんなトレーダーにおすすめ
・激情タイプ
・小中型・低位株トレーダー
・短期トレーダー

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