ありきたりの狂気の物語 (著)チャールズ・ブコウスキー 株主無視 小説

「酔いどれ詩人」と「愛着銘柄」

もっと株主のことを考えろよ、と言うような声を聞いたことがあると思います。短期の見返りを求めるものは、よく声を上げています。私も配当と優待目当てで、株式を保有したことが何度もあります。その場合は配当利権落ちの数ヶ月前から購入しておきました。そして、配当や優待をもらうとその恩恵が受けられる程度の期間で売却します。

 トレーダーは企業を支えるために株式を保有していない場合があります。また、逆に、企業側も株主の方(短期投資家)を向いていない場合もあります。

 自由に事業活動を展開している銘柄を思い浮かべたあなたには、この小説の主人公に投影させることができることでしょう。

あらすじ
強烈な露悪。マシンガンのようなB級小説の文体。アンダーグラウンドの一作家だったブコウスキーの小説は、世紀末の日本で、熱い支持者を得た。人も獣も入り乱れ、目もくらむ終結を迎える「狂った生きもの」、酔いどれの私がこうもあろうに結婚式の付添人を務める「禅式結婚式」など、前作「町でいちばんの美女」を凌駕する過激な世界が詰め込まれた短編集。

引用元:(著)チャールズ・ブコウスキー (作品名)ありきたりの狂気の物語 (新潮文庫)
興味深いところ
 企業側としては、剰余金や設備投資、中期計画を考慮して株主に配当を出しています。

 それを踏まえた上で、優待出さない、配当少ない、短信のボリュームは最低限、お土産なしにしているはずです。

 さてこのブコウスキーの小説は、「死をポケットに入れて」「町でいちばんの美女」や「勝手に生きろ!」有名かもしれません。どの作品もテンポが良くて読みやすいです。

 ほとんど私小説に近いような内容で書かれています、と言う事は、当然主人公はブコウスキーなわけです。三人称で描かれているものも、一人称で描かれているものも同様です。

 まず、目次を見てもらえば大体の内容が理解できます。もしかするとあなたは、そっと本を閉じもう二度と開けることがないかもしれません。それほど、読者を選ぶ短編集です。

 しかも、内容はと言うと目次の内に負けない位にあなたの想像を凌駕するでしょう。

 一言で言うとひどい。ブコウスキーについては、見識ある文学評論家がああだこうだと批評していますが、彼の作品を真面目に考察するのはばかばかしいと思えます。

 パワハラやセクハラという言葉がなかった時代にたくさんいた、酔っ払いのおっさんです。

 しかし なぜか憎めません。なぜ憎めないのでしょうか? 粗野で下品で飲んだくれて記憶をなくしているのにです。

 なぜ、そういう感情が生まれるのか深く掘り下げてみたところ、ひとつの解に当たりました。

 ブコウスキーは、正直に生きています。彼の小説のスタイルが自伝的小説、私小説だからと言うわけではありません。

 見栄を張らずに実に自然体なんです。自分をよく見せようとか読者のことを考えてこういう風に書こうとかそういった事はなさそうです。


 それでも、文章自体は非常にキャッチーで、引っ掛かりがなくてストレートに気持ちが伝わってきます。そういう意味では読者のことをとても考えていると言えるかもしれません。

 小説の核のところ、彼が描きたいもの自体が読者を喜ばせようとして描いているのではありません。本人が1番楽しんで描いていると思わせます。実際に彼は大好きなお酒を飲んで泥酔状態で、小説を書くそうです。

 ただ、この短編集『ありきたりの狂気の物語』は少し過激で、少し毛色が違います。やりたい放題なんです。今の自伝的小説風の書き方ではなく、設定が少し凝っています。

「ねぇ、あの動物たちを見て。ようく見て。かわいくて仕方ないでしょ。観察してたらわかるけど、一匹一匹違うのよ。みんな自分のいのちを、ほんとうに生きてるの。自分そのもの。人間たちとはそこがちがう。自分の境遇に満足して、どんな時でも自分自身なの。だから取り乱したりはしない。見苦しい真似をしないのよ。生まれつきの才能なので、そういうしかないわ」

引用元:(著)チャールズ・ブコウスキー (作品名)狂った生きもの 〈ありきたりの狂気の物語収録〉(新潮文庫)
「狂った生きもの」に登場する自由動物園のクレイジー・キャロルのセリフです。これがすべてです。

 結局、良い企業や悪い企業の判断なんてできません。企業が何を実現したくて、それに向かって純粋に取り組んでいるかどうか? そこに惹かれます。ファンになります。

 そうすればどっぷりです。

 その企業が株主のほうを向いていなくても、あなたは自然に長期ホルダーになってしまうのです。社会貢献や、ESG、コンプライアンスがどうとか、配当性向がいくらとか、もうそんな領域を超越しています。

 それで十分じゃありませんか。

著者紹介
チャールズ・ブコウスキー
ドイツ生れ。父はアメリカ軍兵士。母はドイツ人。三歳のときアメリカへ移住する。1939年ロサンジェルス・シティ・カレッジに入学。創作科の授業をとる。’41年に大学離籍後は、アメリカ各地の放浪する。その間就いた職業は、皿洗い、倉庫番、守衛、トラック運転手、郵便配達人など。’44年短編が初めて雑誌掲載された。’52年から’70年まで郵便局に勤務しながら創作を続ける。その後、創作活動が旺盛となり、白血病で亡くなるまで50冊に及ぶ詩集や小説を発表した。

こんな人におすすめ
・想い入れの強い銘柄を保有している
・利益度外視タイプ
・長期投資家

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