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優しい人は自分自身に優しくない(結論:他人にストレスを与えろ)

 私は、23歳まで、自分が優しい人間であるという自負があった。
 クラスメイトが自分にとって興味のない話を延々と語っていても、決して追い払うことはせず、相槌を打ちながらそれを聞いた。
 上司に理不尽な理由で怒られても、言い返さなかった。
 交際相手が寝坊でデートに4時間遅刻しても、怒らなかった。
 私は他人に対して優しかったはずだが、残念ながら、他人は私に対して優しくなかった。
 23歳のある日、ようやく私は、他人が自分に対して優しくないことの理由に気づいた。
 私には、他人に与えるストレスが足りなかったのだ。
 物を動かしたいのであれば、物理的な力を加えることが必要となる。
 では、人を動かしたいときは?
 精神的な力、ストレスを加えてやればいい。
 私が他人にストレスを加えるか、又は他人に対し、ある行動をとれば私からストレスを加えられることになると予想させることができれば、その者は、そのストレスを避けるための行動をとることになる。
 このように、人にはストレスを避けようとする性質がある。
 それまでの私は、この性質に気づかず、他人にストレスを与えないようにすることばかりに気を取られていたために、結局、他人は、私からストレスを与えられる心配をすることなしに、自由気ままに私に対して振る舞うことができるようになっていたのだ。
 このことに気づいてからは、少しずつ自分の人生が変化し始めた。
 つまらない同僚の世間話に対して「お前の話って、全然面白くないよな。他に話すことないのかよ」と直接言ったところ、その同僚はつまらない世間話をしなくなっただけでなく、むしろ私の仕事を手伝うなどして、好意的に接してくるようになった。
 先輩職員に対し、「邪険に扱うと逆ギレしそうな生意気な後輩」をイメージした声の大きさや話し方を意識しつつ積極的に話しかけるようにした結果、仕事を教えてもらったり、食事を奢ってもらえることが多くなった。パワーで押さえ込めない相手は懐柔してしまおうということなのかもしれない。
 いつもこちらの挨拶を無視する上司に対し、「聞こえにくかったですか?それともわざと無視してるんですか?」と詰め寄った結果、挨拶を無視されたり、怒鳴られることがなくなった上、有給休暇を取得する際に嫌味を言われることもなくなった。
 交際相手に対しては、合理的な理由なく10分以上遅刻したときは、直ちに別れると伝えた結果、遅刻されることがなくなった。
 このように、相手にストレスを与えるようにしたり、将来のストレスを予告するようにした結果、他人から敵意を向けられるどころか、むしろ他人が自分に対して優しくなった。
 私は23歳でこのことに気づいたが、もっと早くに気づいていれば、人並みに楽しい青春時代を過ごせたかもしれない。
 だからこそ、優しい人には、すぐにでも、他人にストレスを与えるような人間になってほしい。 
 
 

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