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ノベルボchボイスドラマの制作裏話03 声優担当・北村直也インタビュー

こんにちは! 『ノベルボch』公式noteです。
第1弾のボイスドラマに参加しているアーティスト・クリエイターを紹介します。

2人目は、声優として参加している北村直也さん
「不可能を可能にする男」というキャッチコピーを掲げて、視覚障害をもつ声優&ナレーターとして活躍されています。

ノベルボchに参加するきっかけや」オンライン制作の舞台裏、特に自宅で音声を収録する「宅録」の機材や制作環境について詳しくうかがいました。

北村直也さんのTwitterはこちら

北村直也さんの普段のお仕事は?ノベルボchに参加するきっかけは?

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――普段はどんなお仕事をされているのでしょうか?

北村
CMや展示会の音声ガイドなどのナレーションのお仕事や、ゲームのCV(キャラクターボイス)のお仕事をしています。最近は、自主的に「ナレーションって面白いよ」と伝えるためのコンテンツを作っています。

――声優としてのお仕事は、いつ頃から始められたのでしょうか?

北村
声優としての活動は5年前からやっていました。同じ頃から、Twitterでも情報発信や演技活動をしてきました。記念すべき初仕事は、3年目の冬でしたね。長時間の収録と緊張で、冬なのに収録後には汗をかいていたことを覚えています。
プロジェクトリーダーの浜田さんと出会ったのは、2年前ですね。

――音楽・声・ストーリーが重要なノベルボchのボイスドラマにおいて、「声」を担当されているのが北村さんですよね。このプロジェクトにはどういう経緯で参加されたのでしょうか。

北村
浜田さんから今回のオファーをいただきました。正直、浜田さんがノベルボの構想をツイートされていたときから気になっていましたが、こちらからは声をかけず。結局、オファーされたのが先でした。オファーされたって響き、かっこいいですよね(笑)

――双方が望むべくしてチームアップされたというわけですね! プロジェクトのなかで、どういう部分を担当しているか詳しくお聞かせください。

北村
主に声優関連の全般を担当しています。
シナリオライターのなぎさんが作ったキャラクターに声をあてたり。もしこれから新しい声優が必要になれば、キャスティングやディレクションも担当する予定です。
あとはノベルボ制作チームとして、ほかの方が作ったコンテンツの確認を行っています。

ボイスドラマをフルリモート制作! 制作の環境は? 使用機材は?

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――ノベルボchは「フルリモート制作」が特徴ですよね。音声の収録は自宅で行っている、いわゆる「宅録」をしているとのこと。さっそくですが、宅録の環境を見せてください!

なおやさん宅録環境01

※画像の説明※
宅録機材の正面画像。
画面右手前にPC、左手前にブレイルセンスU2、
左上にマイクとミキサー。

北村
はい。いつもこんな感じで宅録しています。これは家族に撮影してもらいました。

――ノートパソコンの左側にある機械はなんですか?

北村
ブレイルセンスU2という端末です。まあ、Twitterではいつも「点字で台本を読むやつ」って言ってますが(笑)

ブレイルセンス自体にもOSが搭載されているので、それ自身がパソコンになっているととらえていただければ。わかりやすく言うと、モニターの代わりに内容が点字で表示されるパソコンみたいなものです。そのため、単体でテキストやワードが使えて点字で読めるし、インターネットにもアクセスできます。

声優の仕事をする時は、次々に表示される点字を指で読み取りながら、読み上げて声の演技をしています。

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※画像の説明
宅録中のなおやさんの左側から撮影した画像。
ブレイルセンスU2に両手を添えている。

――なるほど、ノートパソコンと接続して使うのでしょうか?

北村
いえ、ブレイルセンスU2はノートパソコンと接続されていません。OSが搭載されているパソコンのようなものですから。スタジオ収録ではいつもブレイルセンス単体で使っています。
ノートパソコンは録音のため、マイクとミキサーにつないでいます。宅録なので、録音用の機材(パソコン・マイク・ミキサー)と、台本用の機材(ブレイルセンスU2)を手元にセッティングしています。

――詳しく教えていただきありがとうございます。ブレイルセンスU2がそれ単体でテキストデータを読み込んで、点字に変換してくれるんですね。Googleドキュメントにも対応されていますか?

北村
U2は1個古い機種なので、Googleドキュメントには非対応です。なので、いったんテキストファイルとしてダウンロードしてから読み込んでいます。
点字はすべてひらがななんですけど、漢字入りのテキストファイルもそのまま点字にしてくれるので便利です。

――漢字もそのまま点字にできるんですね。シナリオライターの水島なぎさんは、ひらがなのみの原稿も用意しているとのことでしたが。

北村
僕が漢字を読めないというわけではなくて(笑)チーム内で話し合い、スムーズな制作のために、なぎさんがこういう配慮をしてくれたんです。

そもそも、点字台本はテキストファイルとして送られてきた台本を、専用のソフトで点字形式に変換して作ります。ただ、そのタイミングで意図しない変換になることがあります。
ノベルボ以外の実際の現場では、台本をもらった後、読み方が分からない場合は自分で調べます。それでも、固有名詞等は難しい場合もあるので、現場で直接確認します。

ノベルボのボイスドラマはリモート制作でつくっていきますから、読み間違いによるリテイクは最小限にしたいですしね。そこで、点字の環境をお話したときにひらがな原稿をつけようという話になりました。

――そうだったんですね。手順をもう少し詳しくお聞きしてもいいですか?

北村
まず、パソコン上でGoogleドキュメントをテキストでダウンロードし、ブレイルセンスU2に転送します。そのテキストファイルを、ブレイルセンスU2に搭載されている変換機能で、点字に変換していきます。

それを、点字台本として読みやすくなるように構成していきます。
作業内容としては以下の2点です。
・誤変換と思う場所は修正する
・自分の読みやすいように台本のレイアウトを変える
なので、「構成」と言いましたが、「校正」の役割ももっていますね。

――台本のレイアウト、とは何でしょうか?

北村
ブレイルセンスU2は、点字で32マスまでしか一気に出すことができません。そのあとはスクロールボタンを押して次の行に送ることになります。ただし、点字に変換したファイルはそのままですと改行が不十分なために変なところで文章が途切れます。
そして、改行するにはコンマ何秒のラグが出ます。その、コンマ何秒のラグが目立たないようにするために、あえて自分が息継ぎするタイミングや文章の切れ目で改行させることが必要だと考えています。

例えば、
「北村直也です。視覚障害を持つ声優として活動しています」
という文章があったとします。

32マスは今回は無視しますが、そのままだと
「北村直也です。視覚障害を持つ声優として活動して
います」
とか、

「北村直也です。視覚障害を
持つ声優として活動しています」
という改行があり得ます。
改行の先は覚えていない限り分かりませんから、そのまま読むしかなくなります。

なので、そのまま読んでもいいように
「北村直也です。
視覚障害を持つ声優として活動しています」
というふうに調整をして、問題を回避しています。

――なるほど! 改行位置を変えて、読みやすく、演技しやすくなるように台本を整えるということですね。

北村
はい。整えた台本をもとに、ようやく本番。指で点字台本を読み取りながら、ナレーションや台詞に演技をつけていきます。

収録後は、いったんチーム内でチェックをしてもらってからノイズ除去作業に入ります。
……が、宅録の難しさはまさに収録にありました。

なんと、自分が行うチェックが進まない。
クライアントや製作サイドの方が立ち会うスタジオ収録では、現場でOKが出ます。録り直しの指示もその場でもらえます。良くも悪くも収録した音声をそのまま使うかを自分で判断する必要がありません。もちろん、精いっぱいの準備はしますが、自分が納得していてもしていなくても、それを修正するか通すかは担当者次第です。

ところが、宅録ではそうはいきません。
確かに、私が収録した音声は制作チームでチェックしますが、その場で聞いて判断するということが難しい以上、自分で納得がいく音声にして納品する必要があります。
そんなこと当たり前だと思う方。これはある程度の耳が備わっているからこそ起こることですが、自分へのハードルは自分でめちゃくちゃ上げているものです。

その結果、一つの音声に納得がいかなすぎて最長1時間近くかけたことがあります。ちなみに、その音声を制作チームにおそるおそる共有したところ、一発で全員OKでした。
クオリティにこだわるクリエイターがたまに話題に上がりますが、自責の念と、自分に厳しくしてしまうところのバランスをとらないと、これから宅録が増えてきたら時間ばかりかかってしまいそうだなと思いました。

――プロ意識が高いがゆえの苦悩ですね。ありがとうございました。


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※画像の説明※
新しい宅録機材の正面画像。

――では次に、お写真の左上、ブレイルセンスU2の奥に置かれているマイクやミキサーなどについてお聞きしたいです。どんな機材を使って制作されているのか教えてください。

北村
実は制作を始めたばかりの頃と、現在では宅録の環境が変わりました。両方ご紹介します。

<以前の制作環境>
マイク:SHURE SM58
オーディオインタフェース:BEHRINGER / ベリンガー XENYX 302USB ミキサー

<新しい制作環境>
マイク:MXL MXL-V67G コンデンサーマイク
オーディオインタフェース:YAMAHA AG06 ウェブキャスティングミキサー

<新旧に共通する機材など>
マイクスタンド:K&M 23325 卓上マイクスタンド
DAW(サウンド編集ソフト):audacity
編集中のノイズ除去処理などにIZOTOPE RX7 STANDARD使用

――以前の機材と、新しい機材とはどう違うのでしょうか?

北村
以前のマイクはダイナミックマイクといって、音を拾う範囲が制限されていました。そのため、どうしてもナレーションが聞きづらくなってしまいます。
今回、コンデンサーマイクに変えたことで広範囲の音を拾うことができ、耳にも優しくなっただけではなく、声のちょっとしたニュアンスも拾えるようになりました。
聞きやすさとニュアンスの微調整が、収録でものをいいます。なので、これからノベルボ以外でも宅録を積極的に行うために変更しました。

――ありがとうございます!

【音声の聴き比べについて】
YouTubeで公開されているプロモーション動画では、新機材を導入したのは7本目の『because Know it 編』から。よければ1本目の『burn with Enthusiasm編』からご視聴いただき、新旧の音声を聴き比べてみてくださいね。

・新機材での宅録 プロモーション動画07『because Know it 編』

・旧機材での宅録 プロモーション動画01『burn with Enthusiasm編』


――本編の制作はクラウドファンディング終了後から本格スタートするとのことですが、現在はプロモーション動画用の音声を宅録されているんですよね。本業との兼ね合いも含めて、どういった作業ペースで進めているか教えてください。

北村
現在の音声収録は、週に2回YouTubeで配信するプロモーション動画のためのものです。業界用語で、セリフの数は「ワード」と呼ぶのですが、今つくっているプロモーション動画は1本あたり数ワードですね。なので、1日の作業時間が90分以内で、動画2本分の収録ができるように準備しています。

今はおうち時間が多いので時間に融通は効きますが、集中してまとまった収録を行うことで品質のばらつきを防いだり、本編制作の長時間収録に対応するリハーサルをしています。

――プロモーション動画の制作が、本編制作のリハーサルにもなっているんですね。

北村
そうですね。
当初は収録してノイズ除去等の作業を行ってから他のメンバーに確認してもらっていましたが、修正が入ると2倍の時間を要するため、収録していったん確認してもらい、OKが出たらそのファイルに編集を加えて動画担当の倉田さんにパスしています。
ノベルボ以外では声優の仕事だけではなくIT関連の仕事があるので、まとまった時間で一気に作業をするようにスケジューリングしています。

楽しいと感じること・気をつけていることなど

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――ボイスドラマ制作において、楽しいと感じるのはどういう場面ですか?

北村
そうですね……収録して確認のチャットを送信するときが一番ドキドキします。自信がないというと無責任に仕事しているように思われそうですが、そのときはBGMも何もない自分の声だけなので、物足りなさがあるためなんとなく大丈夫かなと思っています。
ところが、確認と編集を経て完成した倉田さんの動画を再生してみると、あらびっくり! 「おれ、めっちゃすげえ!」って自我自賛してます(笑)

――自画自賛(笑)たしかに、どのプロモーション動画もクオリティが高くて、物語の続きを聴きたくなるような魅力があります。

北村
いや、自分がすごいっていう話ではなく、動画になって音声が生きるというのは、ノベルボの共同作業の醍醐味なんです。一人でも欠けてしまうと成立しなかった。そう思わせる団結力がノベルボのメンバーにはあると感じています。

ちなみに、プロジェクトの立ち上げ当初は予告動画を作る予定はありませんでした。制作までメインでやることなさそうだなあなんて少し呑気なモチベーションと寂しさがあったのですが、動画を作り始めたからこそプロジェクトメンバーとも仲良くなれたし、個人的な宅録スキルの向上や声に対する向き合い方の変化につながっています。

――なるほど。ボイスドラマ制作が本格的にスタートする前の、いいウォーミングアップになっているんですね。

北村
制作は7月以降が本番です。初期メンバーとして、そして表に出る声優として、ノベルボにもkasumiにも興味を持つ人が一人でも多く増えますように精いっぱい声を吹き込みます。また、シナリオライターのなぎさんが生み出したキャラクターとストーリーの魅力を引き出す表現をお届けします。

――「フルリモート制作」にかける思いもお聞かせください。

北村
はい。今回はフルリモート制作を大きな売りにしていますので、フルリモートの可能性を伝えていきたいですね。なぜなら、フルリモートができれば移動が難しい人も活躍できる証明になるからです。

「不可能を可能にする男」は、視覚障害者に声優は無理だと言われていた現状を変える自分を表すキャッチコピーです。フルリモート制作が不可能を可能にする1歩だと私は信じています。

ノベルボchでは多彩なアーティスト・クリエイターが活躍中!

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この記事では、声優の北村直也さんにお話をうかがいました。
ノベルボchの初期メンバーは、現在6名。うち、制作にかかわるスタッフは4名です。

ありがたいことに、ノベルボchに参加したい! と手を挙げてくださる方も既にいらっしゃいます。クラウドファンディングで制作資金が集まり、正当な報酬をお支払いしつつご活躍いただける環境が整いましたら、より多くのアーティストやクリエイターの皆様とも一緒に制作していけます。
そのためにも、情報の拡散やご支援へのご協力を、何卒よろしくお願いいたします。

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