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[5分で読める]四辻御堂物語~水龍の巫女と妖狐の罠~(再会30)(無料試読あり)

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このお話のあらすじ

スオウから誰かの命を背負う覚悟を決めろと言われた主人公。布団に入っても眠れない主人公は、三芳みよしに貰った鈴蘭を取り出して・・・・・・。


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以下本文


「ちょっと、勝手に入んないでよ!」

 できれば今は会いたくなかった。お母さんの話を聞いてから、まだ心の整理ができていない。
 部屋が暗くなってからだったのは助かった。おどおどとした顔を見られなくて済む。
 なるべくいつも通りにする。いつも通りって、いつもどんな感じだったのか、わからなくて汗が出る。

「どうしたんだ。そんなに挙動不審で。汗でぐっしょりだぞ?」
「え、暗いのに見えるの?」
「狸は夜行性なんだ。こんだけ明るけりゃ問題無く見える。それよりもなんかあったか?」
「な、なんでもない! ていうかなんで私の部屋に勝手に入ってんのって」
「いや、少し話がしたくて」
「クロ君は?」
「もう寝たよ。ほんとはまだ本調子じゃないんだろ。無理する子だから」
「そっか。そうだね。クロ君、あんたのためならなんでもしちゃう感じするもんね」
「困った子だよ。俺なんかをヒーローって呼ぶんじゃ、これから先思いやられる」
「でもクロ君の命を助けたんでしょ? それじゃあそう思っても普通じゃない?」
「それでも、クロの目の前でクロの両親は殺されてる。間に合わなかったのは俺の未熟さが故だ。俺は小雪も守れなかった。誰のことも、な」

 いつになく気を沈ませているスオウの様子に、調子が狂ってしまう。あれこれと考えるのが面倒くさくなって、ふぅと息を吐いて布団に座る。

「それで、話したいことってなんでしょう?」
「いや、ずっと考えてたんだ。宝具の話は聞いたか?」
「うん。聞いた」
「化け狐どもはあれを奪ったところで、どうしようもないはずなんだ。あれを使えるのは宮路家の人間だけ。巫女様の血を継いでる者だけだ」
「狐たちは当然、ユリノ様の血は継いでないもんね」
「そうだ。それにあれは元々みおさんの家にあった。なんでアヤカシ族の世界をこんなにする必要がある?」
「それはさっきお母さんも言ってた」

 お母さんが、裏切り者が近くに居るかもしれないと思っていることは言わない。言えなかった。

「だよな。俺ぁじじいみたいに頭良くねぇし、難しいことはわからん。わからんが、何もしないのは良くねぇ。あいつらが宝具を狙ってんなら、守るしかねぇんだ」
「そうだね。手が出せないってわかれば、いい加減狐たちも諦めるかもしれないし」
「結界に関しては澪さんが居りゃあ問題無いだろう。でも・・・・・・」
「でも?」
「万が一、澪さんが倒れた時は、あんたに宝具を守ってもらわにゃならん」
「は? なんで? 大体、お母さんが倒れるって」
「あんたもわかっただろ・・・・・・澪さんの体はもう限界だ。いつ倒れても、おかしくねぇ」
「だって、そんなの。わかってるけど、今日やっと会えたばっかりなのに。そんな話、しなくても」
「わかってる。俺ぁ今、酷な話をしてる」
「だったら!」
「それでも! 俺たちゃ今戦うしかねぇんだ! アヤカシも人も守るために、犠牲を無駄にしないために・・・・・・」

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