(小説5分読書)四辻御堂物語~水龍の巫女と妖狐の罠~(宿命①)
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なるべく音を立てないように慎重に玄関を開ける。父は一度寝付くとちょっとやそっとのことじゃ起きない人だ。案の定、私が外に出たことにも気づかずに寝ているらしい。
静かに自分の部屋に行き、必要と思う物をリュックに詰める。と言っても何が必要なのか見当もつかない。とりあえず携帯と充電器、タオルと1回分の着替え、大好きなグミ1袋、筆記用具、お財布、あとは……。
「よし」
リュックはパンパンになってしまったが、とりあえず準備ができた。置き手紙をリビングの机に置いて、またそっと玄関を開ける。急がないと四辻御堂が見えなくなってしまう。
『お父さんへ
お母さんの実家に行ってきます。どのくらいかかるかわからないけど、戻るまでは学校も休みます。連絡お願いします。 渚』
正直、学校を休まなくてはならないのは辛いが、そんなに何日もはかからないだろう。でも朝起きて、教えてなかったはずの母親の実家に行くって手紙を読んだら、父はどんなリアクションをするのだろうか。
「はぁ、はぁ……ふぅぅ。間に合った」
「おやおや、そんなに走ることはなかったのに」
スオウはからかいじみた言い方をして私を出迎えた。クロ君も居る。
「師匠、それでは行って参ります!」
「あぁ、頼んだよ」
それからクロ君は、ポンと音を立ててツバメの姿に変わった。目の周りの黒縁は残っているが、どこからどう見てもツバメだった。
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