谷底の夢

北野りんご🍎

訪問看護が帰っていった後、りんごはしばらくぼーっとしていた。なんとなく録音しておいたICレコーダーを聞き直そうと思った。イヤホンをつけて寝床に入る。しばらくして夢に落ちた。

なぜかりんごは小学生。家の中に母がいるのだが、どう見ても見慣れぬ女性だ。女性は風呂に入っている。子供のりんごは、なんとなくトイレから風呂場を覗き込んだ。バスローブを着た女性が出てきた。そのまま女性の後をついていくと、キッチンの奥にテーブルと椅子があり、こちらを向いて奥側に座っている。なぜか違和感があった。壁側にスーパーマーケットの冷蔵陳列棚がある。そこに豚肉のパックがあった。女は何気なくそのパックを取った。りんごは尋ねた。なんでこれが冷蔵庫なの?女は答えない。子供のりんごは女に触れてみた。柔らかい肉が感触として帰ってくる。りんごは抱きついた。

ゆめちゃんがものすごい速さで手足の運動している。仰向けでベッドの上で手足を曲げ伸ばししているのだ。12341234。よくこんなに早く手足が動かせるなと感心していると、両足がだんだん上に上がっていく。ネグリジェもいつか消えていた。りんごは体のマッサージをしてあげようと思った。痛がっていたからだ。柔らかい肉の感触が手のひらに戻ってくる。りんごは抱きついた。

無性にパチンコがしたい。裏路地に入っていくと、店はあった。昔のインベーダーゲームのテーブルが所せましと並べてある。1台に座った。ピンボールのような大きな球がはじけ飛ぶ。おかしい。この台にはバスローブがかけられている。誰かが残しているのだ。りんごは思った。早くこの台から立ちのかねばならない。店の奥へ向かった。ゲームセンターのようなパチンコ店の奥には学習塾があった。りんごは英検3級を合格させてあげたかったので、何をしているのか覗き込んだ。グラフを書いている。グラフも良いが、SVOCを理解するのが先決だと思いコピーして渡すためのノートを書き出そうとした。

ここはどこだろう多分熊本。東西南北のわからないアーケード街。確か谷底を降りて行く。地下1階のデパ地下だ。甘いゼリーの匂いがして誘われていった。パッと広がったのは、光の世界。何の不安もない。夢のような世界が広がっている。ここはどこ?天国?長かった。57年間経って、僕は天国にようやくたどり着いたんだ。涙で前が見えない。泣き叫ぶ声が耳に届かない。これでいいのか、確か今はデフレだったよなぁ。なんで消費税があるんだ。わからない。

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