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いかにして文章を読みやすくするか① 読者のメモリ

「読みやすさ」というのは非常に重要な問題です。しかし、何かに躓いた際にチェックする項目としては見落とされがちです。読みづらいせいで読者の魂を揺さぶるチャンスを失っていると思われるのに、多くの人は原因を他に求めています。

読みやすさは書類選考による一次試験のようなものです。合格の決め手にはならないものの、そこを通過しておかないと会いに行くチャンスすら得られないという類のハードルです。一定以上の読みやすさがないとそもそも読了してもらえないんですよね。もちろん突出した武器があれば書類選考で落とされつつも合格することだってあるでしょうが、武器を自覚していないならばそのパターンもないでしょう。

ですから繰り返しますが、読みやすさというのは非常に重要なのです。ただそうは言っても、「読みやすさ」について考えるための指針がないと読みやすくするのも難しいでしょう。そうして多くの人は結局ぼんやりとした「読みやすさ」に気を使っただけで終わってしまい、理由もわからず書類選考に落ちている状態かと思います。

というわけで今回は「読みやすさ」ってどう捉えればいいの? そしてどう改善していけばいいの? というネタを書いていきます。

読者のメモリ


「読みやすさ」とは何かというと、それは「読者のメモリに負荷がかかっていないこと」です。もちろん他にも様々な要素がありますが、それが最たるものだと考えています。読者のメモリを意識できていないから、「読みさすさ」についても意識できないのです。

ここで言う「メモリ」というのは、スマホやパソコンのメモリと同じ物を指しています。それでもあまりピンとこない人のために説明すると、スマホやパソコンにおいて「メモリ」とは、作業のために一時的にデータを保存しておく場所です。一時的な保存場所ですから、電源を切ればデータは消えます。一方で電源を切っても長期的にデータが保存されるものは「ストレージ」です。そのためスマホのスペックで「メモリ4GB/ストレージ128GB」なんて書いてあったら、それは「一時的に4GBのデータを扱うことができる/長期的に128GBのデータを保存できる」という意味です。

このメモリとストレージという仕組みは、人間も同じです。人間にも短期記憶と長期記憶があり、ちょうどメモリとストレージの関係になっています。

となると「そもそも小説を書くのは人間なんだから、最初から『読者の短期記憶』と表現すればいいじゃないか」と思う人もいるかもしれませんね。でもそうしないのは、人間は短期記憶に負荷がかかった時にどうなるかを自分じゃ把握できないからです。たぶん把握するために使う短期記憶のスペースがないからですね。ですからパソコンやスマホと同じように考えた方がむしろ把握しやすいのです。

たとえばスマホでメモリに負荷がかかりすぎてメモリオーバーになると、挙動が不安定になります。データを扱いきれないということなので、取りこぼすデータが発生します。スマホでYouTubeの動画を見ている場合で言えば、動画がカクカクしちゃってる状態です。漫画アプリならば、ページが抜けている状態です。一度そういった状態になると、新たなデータを読み込むにもしばらく待つ必要が生じるでしょう。

これと同じように、読者がメモリオーバーになると取りこぼす情報が多くなります。つまり、書いたことがちゃんと伝わらないということです。メモリに負荷がかかるというのは脳に負荷がかかっているということなので、単純に不快でもあります。しかも受け取った情報を楽しむためにもメモリを使いますが、メモリオーバーなら楽しむためのメモリがなくて楽しめません。

一方で読者のメモリに負荷がかかりすぎないよう管理された文章は、すっと頭に入ってきます。情報の取りこぼしもなく読み込めて即時処理され、次の情報もすんなりと読み込めるからです。しかもメモリに余剰があるので、読者は存分にメモリを使って作品を楽しめます。これが「読みやすさ」の実現されている状態です。

ただ、「読者のメモリ」を理解するだけじゃ「読みやすさ」は実現できません。把握した上で、うまく管理しないといけないのです。ですから次は「どう管理すればいいのか」について書いていきます。


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