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『ジョニ・ミッチェル アルバム・ガイド&アーカイヴス』

☆mediopos-2339  2021.4.12

ロッキングオンで
ジョニ・ミッチェルの
「総力特集」が組まれている
少しまえには
「アルバム・ガイド&アーカイヴス」も刊行された

ジョニ・ミチェルの全貌を
聴きわたす(見わたすのではない)好機だと
最初のアルバムの出た1968年から
最後になったと思われる2007年のアルバムまで
この際とそのアルバム全21枚の
40年近くに渡る時代を追いながら聴いてみようと思い
21枚分の音源を手元にそろえたところだ

ジョニ・ミッチェルの声をはじめて耳にしたのは
1969年の2枚目のアルバム
『Clouds(青春の光と影)』に収められている
ジュディ・コリンズに提供した
『青春の光と影(Both Sides Now)』と
1970年の3枚目のアルバム
『 Ladies of the Canyon(レディズ・オブ・ザ・キャニオン)』
に収められている
「サークル・ゲーム(The Circle Game)」
だと記憶している
そしていままで聴いたなかでいちばん気に入っているのは
1971年の4枚目のアルバム『Blue(ブルー)』だ

西洋のロックやポップスを聴き始めたのが
1970年頃のことだから
ぼくにとってもジョニ・ミッチェルといえば
いつもそのジャンルの中心にいたといえるかもしれない

全21枚のアルバムは以下の通り
2015年に病に倒れたこともあり
おそらくアルバムは2007年の『Shine』までになるが
ちなみに昨年秋に「Archives」シリーズが始まり
ジョニ・ミッチェル自身が監修した
発掘音源の数々が随時届けられることになる
その他ジョニ・ミッチェルの客演した
スタジオ録音盤などもあるようで
それらもあわせてこれからずいぶんと楽しめそうだ

あらためて全アルバムを見わたしてみると
アルバムを全部聴いて知っているわけではないけれど
それでもそのジョニ・ミッチェルという存在を核とした
40年という時間の流れからはさまざまな発見があるはずだ

あわせてこれから
《ジョニ・ミッチェルを聴く》シリーズとして
時代を追いながらいろいろアルバムから聴いていくことにしたい

◎ジョニ・ミッチェルのアルバム全21枚

1968年 『ジョニ・ミッチェル』 - Song to a Seagull (Reprise)
1969年 『青春の光と影』 - Clouds (Reprise)
1970年 『レディズ・オブ・ザ・キャニオン』 - Ladies of the Canyon (Reprise)
1971年 『ブルー』 - Blue (Reprise)
1972年 『バラにおくる』 - For the Roses (Asylum)
1974年 『コート・アンド・スパーク』 - Court and Spark (Asylum)
1974年 『マイルズ・オブ・アイルズ』 - Miles of Aisles (live) (Asylum)
1975年 『夏草の誘い』 - The Hissing of Summer Lawns (Asylum)
1976年 『逃避行』 - Hejira (Asylum)
1977年 『ドンファンのじゃじゃ馬娘』 - Don Juan's Reckless Daughter (Asylum)
1979年 『ミンガス』 - Mingus (Asylum)
1980年 『シャドウズ・アンド・ライト』 - Shadows and Light (live) (Asylum)
1982年 『ワイルド・シングス・ラン・ファスト』 - Wild Things Run Fast (Geffen)
1985年 『ドッグ・イート・ドッグ』 - Dog Eat Dog (Geffen)
1988年 『レインストームとチョークの痕』 - Chalk Mark in a Rainstorm (Geffen)
1991年 『ナイト・ライド・ホーム』 - Night Ride Home (Geffen)
1994年 『風のインディゴ』 - Turbulent Indigo (Reprise)
1998年 『テイミング・ザ・タイガー』 - Taming the Tiger (Reprise)
2000年 『ある愛の考察~青春の光と影』 - Both Sides Now (Reprise)
2002年 『トラヴェローグ』 - Travelogue (Nonesuch)
2007年 『シャイン』 - Shine (Hear Music)

■五十嵐正監修
 『ジョニ・ミッチェル アルバム・ガイド&アーカイヴス』
 (シンコーミュージック・エンタテインメント 2021.2)
■『月刊ロッキング・オン4月号』(ロッキング・オン 2021.4)
《総力特集! ジョニ・ミッチェル》

(『ジョニ・ミッチェル アルバム・ガイド&アーカイヴス』より)

「「ブルー、歌は入れ墨みたいなもの・・・」。
 僕は30数年音楽評論をやっているが、女性アーティストの取材でジョニ・ミッチェルの名前を出すと、その一節を口ずさむ人がいったい何人いただろうか。
「ジョニ・ミッチェルにはいつだってインスパイアされてきた・・・されない人なんていないわよね!?」。
 そう言ったのはベッカ・スティーヴンスだが、その言葉に誰もが同意するはず。いや、女性だけでない。近年はその影響を受ける男性や黒人、非英語圏出身者などの様々な種類のアーティストにも見つけることができる。
 ジョニは70年代初めにシンガー・ソングライターと呼ばれるスタイルの確立に最も貢献した人であると同時に、それからジャンルの枠を軽やかに飛び越え、詩神と美意識だけに従って音楽的冒険の旅を果敢に続けてきた人でもある。その存在の重要性はどれだけ強調してもし過ぎることはない。
 残念ながらジョニは15年に病に倒れ、今もリハビリが続き、70代後半の彼女から新しい音楽が届く可能性はなさそうだ。しかし、僕らには彼女の素晴らしい21枚のアルバムがある。さらに、昨年秋に遂に始まった「Archives」シリーズが今後貴重な録音を順次届けてくれるはずだ。
 本書はこの機械にジョニのキャリアを振り返り、改めて全アルバムにじっくり耳を傾ける際のお手伝いができればとの考えで作られた。」

(『月刊ロッキング・オン4月号』〜《総力特集! ジョニ・ミッチェル》より)

「カナダのアルバータ州出身のジョニ・ミッチェルは、最初から異色のアーティストだった。アコースティックギターを抱えて歌うスタイルは、フォーク・シンガーとして何ら変哲のないものだったが、その音楽性と存在感は当時全盛だったフォーク・」シンガーたちの中では異色で独自なものだった。
 「土ぼこりが落ち着いたときには、ジョニ・ミッチェルが20世紀後半の最も重要な影響力のある女性のレコーディング・アーティストとして立っているだろう」という米音楽サイトでの評価の通り、60年代のロック/クロスオーバーのシーンの中心にいながら、ジョニ・ミッチェルは常に異色で独自で、そして孤高だった。
 オープン・チューニングのギター、滑空するようなメロディー、知性的な美しさを湛えた歌声ーーーーそうした圧倒的に優れた音楽性によって、ジョニ・ミッチェルは一線を画し、そして他を凌駕していた。
 ボブ・ディランとツアーし、ニール・ヤングとデュエットし、ジュディ・コリンズに曲を提供し、ジャコ・パストリアスやパット・メセニー、チャーリー・ミンガス、ハービー・ハンコック、ウェイン・ショーター、ラリー・カールトンらジャズ・ミュージシャンを起用してアルバムを制作する。そんなことができるシンガーソングライターはジョニ・ミッチェル以外に考えられない。
 異色である、ということはオルタナティブであるということだ。
 ジョニ・ミッチェルは最初からオルタナティブで、キャリアを通してずっとオルタナティブであり続けた。
 90年代以降のオルタナティブ、00年代以降のインディー、そして10年代以降のSSW、そのどれもに共通するオルタナティブの感覚を、60年代70年代からすでに放っていたのがジョニ・ミッチェルだったのだ。
 だからこそレッド・ツェッペリン(“カリフォルニア”)やプリンス(“ドロシー・パーカーのバラッド”からビョーク、アラニス・モリセット、フィオナ・アップルまで、これまで登場した偉大なアーティストに多大な影響を与え、現代においてもスフィアン・スティーヴンスからジェイムス・ブレイクまで数多くの先鋭的アーティストに、またテイラー・スウィフトからフィービー・ブリジャーズまで、ほとんどすべての新世代のSSWたちに無意識レベルと言ってもいいぐらい巨大な影響を与え続けているのである。いや、今は、これまでで最もジョニ・ミッチェルの影響下にある時代、と言ってもいいかもしれない。)

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