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2021年上半期ベストEP


出た順、聞いた順

意味のある小さなまとまり
最近EPって単位が好き


Personal Trainer ー Gazebo

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みんなで集まって音を出す、感覚を伝えて変えていく、形は可変で、新しく面白いものを常に探し求めている。Personal Trainerには音楽の楽しさが詰まっていると思う。ユーモアと遊び心があってそしてなにより曲がいい。Muscle Memoryに奇妙に体を揺すられてランナーズ・ハイみたいな気分になって、Cropsでエンジンを一気にふかされる(Politicsではもちろん唄ってる)。大好きというよりお気に入りって言いたくなるような親しみやすさがあって、それでいてドキドキするような瞬間もあるから素晴らしい。気概があるけど気負ってなくてPersonal Trainerのそういうところが本当に良い。


NewDad — Waves

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アイルランドのNewDad 。深いところにある感情がふとした瞬間に顔を出す。オルタナティヴでグランジで、でも踏み込むことはしないで感情が自ら出てくるまで待っているみたいなさじ加減。このバランスこそが全てで、それこそがNewDad の魅力だってそう思う。ギターの音が心を撫でて記憶が静かに蘇る。この雰囲気がたまらない。こういうところは本当にセンスだし、ビデオのこの眼も素晴らしい。


Yard Act ー Dark Days

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最高の不良、キレてるギャング。ナイフを振り回しているようなギターとどこかの論客みたいにまくし立てるボーカル、Gang of FourみたいにキレているのにFranz Ferdinandのようにポップで、もう格好いいとしか言えない。怒りが踊り、意見が刺さり、やさぐれたまま気持ちが上がる。Yard Actは本当に最高。これ以上望むことがあるとするならば、そろそろちゃんとしたビデオを撮って欲しいってところだけ。


Sorry ー Twixtustwain EP

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1stアルバム以前、もっと言うとDominoと契約する前のミックステープを出していた頃のSorry(FKA Fish)の頃の雰囲気に戻ったみたいな。張り詰めた緊張感がなくなって、アイデアを試してみようという好奇心といい意味でのゆるさがあって、さりとて重ね過ぎない引き算の美学は健在で、つまりはとても素晴らしい。Separate / Cigarette Packetの7インチを買ったけどこのEPのLouisがボーカルを取る曲が良すぎて、いやいや5曲入りのこのまま出してくれよと思ってしまうくらいに良い。過剰に仕上げすぎないセンスの良さが最高でもう本当に大好き。時代の空気をまとって消化するストリートスナップ的な良さがある(それはどこかの誰かの物語)。

Courting - Grand National

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ギターバンドのカウンター、若さとは戦い。敵は巨大で、だからこそ戦う価値がある。それは下位に沈むチームに現れたヤング・スターのように。向こう見ずで、跳ね回り、野心があって、エネルギーに満ちあふれている。これこそギターバンドに求めるもの、聞く度にテンション上がるCourting。ロンドンではなくリバプールだっていうのもたぶん絶対意味がある。


Saint Jude ー Bodies Of Water

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自分にとってSlow Dance '18は教科書みたいになっていて、だからそのアルバム最初のトラックのSaint JudeこそSlow Danceを代表するアーティストだってそんな風に思っているところがある。夜と孤独と、灯りと光、向こう側に誰かがいるように感じて、手を伸ばして、いないということを確認する。あるのはただ気配だけ、そうして孤独を深めていく。10代の後半に発症したという耳鳴りがどの程度影響しているのかはわからないけど(それでライブやクラブに行けなくなったらしい)このEPは孤独が夜に溶け込んでいるようなそんな感じがする。絶望ではなく強い否定でもない、なんとなくの寂しさ、だからこそなんだかわかるって気分になる。


Peeping Drexels ー Bad Time

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サウス・ロンドンの別ライン、Peeping Drexls。最初に知った時にはもっとパンク/ガレージ色が濃かった感じだったけど(覆面してたし)いつの間にか切れ味を維持したまま色気が漂うまでになっていた。このモードが超格好いい。High Heelみたいな曲で強烈な地下感を醸しだしたかと思えば最後のPart Ⅱで未来への希望を匂わせて、なんだか早くも次はどんな感じになるんだって気になってきてしまった。変化こそバンドを追う理由で魅力、そんなことを思うくらいにEP良かった。


Famous ー The Valley

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1st EP Englandに続いての2nd EP The Valley、その時からJerskin FendrixとdeathcrashのTiernan Banksが抜けて3人組に。強迫観念的に不安を煽り迫ってくるようだった1stと比べて、もっとじっくり、ジワジワと心を揺さぶり芯の部分に触れてくる。なぜだかわからないけど本当に感動する。それはたぶんに去年の屋上ライブを見たからな気もするけれど(何度も言ってしまうけどこれは本当に素晴らしかった)、人の営みの中の愛おしさみたいなものが出ている気がする。勘違いかもしれないけど、こんな気持ちになるんだからそれはそれでいいみたいな。まやかしと幻想と真実が混じり合って、えも言われぬ感情がやってくるようなそんな音楽。とにもかくにも心が動く。


Folly Group ー Awake and hungry

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ラフトレードの紹介文に書いてあったけど言われてもみると確かにBloc Partyかもしれない。Bloc PartyをCrack Cloudに混ぜてそこに今のロンドンの空気を加えて。ロックダウン時のコンピレーション・アルバムGroup Therapy Vol. 1、Slow Dance Recordsの年度コンピSlow Dance'20に参加。そしてSo Youngが立ち上げたレーベルSo Young Recordsの第一弾として満を持してデビュー。やっぱりもうサウス・ロンドンから始まったUKシーンは新章に突入しているってそんな気がする。下半期か来年かはわからないけど、空気ががらりと変わるかも。「愚かな集団 」の「目覚めと飢餓」、はじまりのタイトルとしても素晴らしい。


The Lounge Society ー Silk For the Starving

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最初の一音がなった瞬間に何かが違うと実感する。ロックンロールの流儀「正しい素材を少しだけ」ストロークス最初の3枚のアルバムについて、元Vampire Weekendのロスタムの意見はおそらく正しく、ビデオの中のGordon Raphaelがそれを裏付ける(Gordon Raphaelはつまりストロークスの最初の3枚のアルバムのプロデューサーだ)。そうして大きな音でこれを聞く。興奮が伝わるのはそこに確かな熱があるから。再びロックンロールを呼び覚ますThe Lounge Society。おおげさに言うならそんな感じで、おおげさだけど、でも本当にそうなんじゃないかってこのEPを聞く度に考えてしまう。格好良さはいつだって憧れと共にあり、だからこそきっと何度も蘇る。


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