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幽霊の話とは?—墓守のレオビューティフル・ワールド—

概要

著:石川 宏千花

出版:株式会社小学館

あらすじ

少年レオと墓地に集う霊達の物語、第二集。
きょうも、マロニエ林に囲まれた墓地《慈愛と慰めの丘》へ悩める者たちがやてくる。黒髪の少年レオに会うために――。
墓守りを仕事とし、相棒の犬バーソロミューと暮らす孤独なレオは、霊と会話をする能力をもつ。そんなレオのもとには、なぜか「死」に近づこうとする者達がやってくる。そんな彼らの心に巣くった闇をレオが解きほぐしていく癒やしと救いの物語。(1)

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はじめに

 これは以前読んだ『墓守のレオ』の続編である(この作品は以前書きなぐったものがあるので気になる人は読まれたい)。以前は物語としては癖がない事を主張していたがここでも変わらない。物語の展開としては面白いがその話自体が面白いという事でないので注意してほしい。


各話あらすじ

ビューティフル・ワールド

 幽霊が語り手の物語。墓場に侵入する子供にレオは興味を持ち、その子どもの身辺を幽霊たちがお節介で調査する。その結果を聞き、レオは侵入した子どもの母親の元に行くと言う。

 ごく王道の物語で逆に捻りがないと言わざる負えない。只初めてこの様な感動系の話を読んだ人には感動できる。それほどの文章力があるのだが惜しい作品である。


エターナル・サンシャイン

 街の大型デパートが火事になった。その死と生の曖昧な世界の中で死者と生者が共存する。

 群像劇となっておりいろいろな視線に目まぐるしく代わり、それぞれの思いが明かされ、レオが自分が死についても考える。明確にテーマが分かる作品である。


マイ・スウィート・ホーム

 自分が幽霊だと気づいたヒースは幽霊として生きる虚無感から生きている者が憎くなり、人に手を掛けようとして旅好きの女の子フェイに止められる。ヒースは彼女に一目ぼれした。そんな彼女はあるところに行く途中だと語った。

 幽霊として生きる事、レオが墓守を続ける理由など以前から書かれていたことをより多面的に既存のキャラクターを使って説明している。


特徴

死を見つめる

 ここではより死についてかかられている。「ビューティフル・ワールド」では死ぬ向かう母親を持つ子ども、「エターナル・サンシャイン」ではまさに今死んだ人、死の淵にいて生き残ることが出来た人などそれぞれの目線で死ぬことについて、そしてその後の無念や後悔も十分描き切ったと言えるだろう。

良い点

人間から見たレオ

 ほとんどの語り手幽霊であった今までとは違い生きている人間から見たレオについても掘り下げが成されており、「ビューティフル・ワールド」の子どもしかり、「エターナル・サンシャイン」の自分が死んだことを知らない幽霊しかり、たった一人幽霊の自分のことが見えている生きている心優しい少年ではなく、人間としての面(幽霊が見えるという点を抜きにした描写)がされている。


前回と話の展開を変えている

 今回の目玉となるのはデパートで起きた生者と死者が入り混じった「エターナル・サンシャイン」だろう。これは100ページの中編作品であり、今までの一人一人の死生観や悔いを掘り下げるのではなく群像劇として面白さがある。

 この様にワンパターンにならず少しでも展開を変えようと努力しているのは素晴らしい。しかしこの作品を読んだ時の不十分さはそこではない。


悪い点

変わらない読後の満足感

 別の駄文でも取り上げたとおり展開が幽霊を使っているせいでスムーズに運びすぎている。幽霊が勝手にやったこととは言え、レオが簡易な推測と幽霊のお節介で事が上手く運びすぎているの危機や試練がなく面白みが感じられない。こういう軽い推理ものでも推測を当たっているかと検証するための探索パートがあってこそ面白さであると考える。

 そして王道すぎて話自体に独自の面白さがない。これでは良い文章であったが続けて読もうと気が起きない。強い魅力がない作品である。


おわりに

 感想もほとんど前作の駄文と同じものになってしまう。物語の展開を変えただけで話の面白さが変わっていないからである。この作品を最後にこの墓守のレオシリーズが出ていない。読みやすいので続きが出ても良いと感じた。



(註)

(1)以下からあらすじ引用

(2)、ヘッダー画像以下から転載

〈リンク〉


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