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一話完結の幽霊の話—墓守のレオ—

概要

著:石川 宏千花

出版:株式会社小学館

あらすじ

怖れと癒やしの新感覚ファンタジー
墓守りを仕事とし、墓地に暮らす黒髪の少年レオ。
その数奇な生い立ちゆえに墓地に集う霊たちと会話をすることができるレオが、その能力で「死」に足を踏み入れた人たちを救っていきます。
人間の心のもろさ、みにくさ、そして強さを描いた、異色のファンタジー。(1)

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はじめに

 いわゆる表紙買いである。この表紙を書いているまたよし氏は辻村深月氏の『オーダーメイド殺人クラブ』の表紙を描いていたので以前から知っていた。その人の暗い表紙、そしてそそられる「墓守」という言葉、是非読みたいと手に取った次第である。

 この作品は中編二つに短編の一つの全188ページとなっており非常に読みやすく起承転結もはっきりしており、是非子供にお勧めしたい作品である。読書偏愛者にはお勧めできないが。


各話あらすじ

ブルー・マンデー 

 レオに心惹かれたエミリア。彼に会いに街中を彷徨っていると貧民街の男の子に絡まれてしまう。それを助けてくれた旅好きの女の子フェイ、彼女に連れられ崖にある《慈愛と慰めの丘》に辿り着く。そこで彼女は初めてレオが墓守であることを知る。

 この話は「墓守のレオ」という話(或いはシリーズ)の最初の物語ということでこの後の話も読んでくれるように意外性のあるものとなっている。そこに至るまでの布石もしっかりしているが読書家にとっては予想できるものとなっているのが残念である。

 良い意味でも、悪い意味での王道の意外性のある物語となっており、綺麗にまとまっている。


ダズリング・モーニング

 犬のバーソロミュー視点から語られるレオの昔の話である。レオの苦悩が詰め込まれ彼の人間らしい一面と育ての親の別れからなる彼の死生観が明らかになる。

 彼の掘り下げ回でありレオと言う感情の起伏が少ない子供を私達読書に共感させる様に仕組まれた回でもある。しかしそれでもなかなか感情移入が出来ないのも確かである。


クランベリー・ナイト 

 殺人鬼であるアシュトン・ピッドという語り手がレオを気に入って彼を自分の後継者にしようと目論む。しかし彼がレオに正体を明かす前に自分が殺人を起こしていることがばれてしまいそうになる。

 子供向けの作品では珍しく殺人鬼が語り手であり、殺人がばれないかとはらはらした感覚が楽しめる。


特徴

幽霊が見える墓守

 幽霊が見える主人公という事でたくさんのいろいろな時代の幽霊が出てくる。その幽霊たちは優しいレオが大好きで彼の為にいろいろ手伝ってくる。

 そしてこの墓守の少年というのも珍しい設定である。彼は墓守である為に人とあまり関わらずむしろ幽霊とばかり一緒にいる。そんなことを幽霊たちが悩むので微笑ましい。


良い点

読みやすい

 子供向けと言うことで改行がたくさんしており、一文も短く読みやすい。難しい表現も少ないので簡単理解できる。子どもにお勧めしたい作品である。


悪い点

幽霊たちが一晩でやってくれました

 この作品は推理小説の様に自分自身や肉親が死んだ理由が明かすのが見せ場だと考える。普通ならその事実に至るまでを事細やかに描くがこの作品は主人公が幽霊にお願いしてその事実となる証拠を集める。なので働いているのは幽霊だけで主人公のレオは安楽椅子探偵かと言われるとそうではなく、彼らの死因を推理するのではなく思いついたというのが相応しい。


この作品特有の魅力

 個人的に本を読むときに気にすべき点はちゃんと読みやすい文章になっているのか(例外はある)、その作品独自の魅力があるかの二つだがこの作品は文章力はあるがこの作品特有の然したる魅力はない。よくある一話完結の心に来る、さっぱりとした物語になっており、折角の幽霊が見える設定も幽霊を足に使って証拠を集めるだけである。


おわりに

 この作品特有の面白さはない。しかし読みやすくおちもはっきりしているので子供にはお勧めだろう。大人が読むとなるともう一癖必要である。


(註)

(1)以下からあらすじ引用


(2)、ヘッダー画像以下転載

〈リンク〉

小学館当該商品ページ


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