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地上の星

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*本作は中島みゆきさんの「地上の星」をイメージしたオリジナルショートストーリーです。歌詞とは一切関係ありません。

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サンは貧しい村に生まれた。学校にも行けず、生活用の水を汲みに毎日遠い湖まで何往復も歩かなければならない。太陽がカンカンに照りつけようと、突然のスコールに遭おうとサンが水汲みに行かなければ家族は死んでしまうのだ。
あるとき、サンが父親にこう言った。

「おとうさん、地上の星って知ってる?それは希望の星なんだって!どこかにあるって誰かが言ってた」そう言ったサンは急に悲しそうな顔で「でも… そんなの… 絶対ないよ」と少し目に涙を溜めながら呟いた。サンは決して水汲みが嫌なわけではない。だってそれは大切な生命を繋ぐものだから。けれどサンはこの小さくも辛い営みが、日々の懸命な営みが、無意味ではない確固たる証拠が欲しかった。

サンたち家族が生命そのものを生きている証。

すると父親が言った。「サン、希望の星はな… すぐ近くにあるんだ。本当にある。それはそれは美しい星だ。もしもその星が輝きを失ったとき、太陽はきっと影をひそめてしまうだろう」そう静かに言うと、サンをじっと見つめた。父親の目に映った大きな大きなサンの曇りのない美しい瞳には、確かに無数の星が輝いていた。

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見わたすも曇る瞳で五里霧中違わず護れ真実の星

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