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ChatGPTと研究

流行りのChatGPTについて、研究用途で使えそうか、ちょっと実験してみました。
結論から、使い方によってはかなり便利、という感じでしょうか。
「すごい」と言われる理由もわかりますし、「使えない」と言われる理由も分かるな、という感じです。

ChatGPTとは

ChatGPT は、OpenAI によって開発された会話型 AI モデルです。ディープ ラーニングや自然言語処理などの高度な機械学習技術を使用して、テキストベースの入力に対して人間のような応答を生成します。ChatGPT は大量のテキスト データでトレーニングされており、事実に関する質問への回答からカジュアルな会話への参加まで、幅広いトピックに対応できます。これにより、顧客サポート、情報検索、エンターテイメントなど、さまざまな用途に役立ちます。首尾一貫した有益な応答を生成するモデルの能力は、人工知能と人間とコンピューターの相互作用の分野を前進させるための重要なツールになります。

昨年11月にリリースされ、いろいろと言われているChatGPT。
実際に使ってみるのが一番!ということで試してみました。

文献レビュー

まず試したいのは文献レビュー。
既往研究を調べること、その上で自分の研究を位置づけることの重要性については言うまでもありませんが、馴染みの少ないテーマで書き始める場合、文脈をいち早く把握すること、これまでの研究群の傾向を体系的に掴むことが大事になります。
なので、これまでの既往関連研究をうまくレビューしてくれている比較的最近の論文(レビュー論文)はないかなーなどとまず調べたりしますが、適切なものが見つからない場合、このChatGPTというツールは役に立ちそうか、というのが今回の検証です。

まずはストレートに。

何度かエラーも出ましたが、返答はわりと早い

結論から、概略はつかめています。そして文章がとても滑らかですね(やや違和感のある言い回しは言語翻訳のためと思われます)。
質問では「社会・生態系の枠組み」としか言っていませんが、提唱者のElinor Ostromに言及し、枠組みが適用される分野、提唱された背景にある問題意識など、ひととおり述べた上で簡潔にまとめています。
拾うべき情報を適切に選び出し、要約する能力はかなり高いようです。

初学分野の現状をざっと知るときには有用ですし、一般向けに説明する際の冒頭、場合によってはイントロのたたき台など、使い道はかなりありそうです。
(勘の良い方はお気づきかもしれませんが、実はこの記事の1段落目「ChatGPTとは」は、ChatGPTによる返答です。そのためブログ記事の書き出しとして、知らない人もいると思うので~的な内容を記載するのにも有用だと思います)

もう少し知りたい場合には物足りないのですが、「要するに何?」みたいな質問(専門的には全然分かってないし大して興味もないのにとりあえず聞いてきて人の時間を使ってくる、答えるのが億劫なタイプの質問)に答えるときに、非常に有用と感じました。
(コールセンター業務や顧客サポートで重宝される理由が分かる気がしました)


続いてちょっと聞き方を変えて。

ちょっと不満の残る回答(特に3)ですが、おおざっぱな傾向(適用領域)は示してくれています。
質問の中に指示内容が2つあると難しいのかもと思い、一覧を示すことに絞って改めて聞いてみることにします。

AIとは思えない丁寧な答え方

できない、ということで、正直な答え方に好感が持てます。
そして、ただできません、で終えずに、達成するための方法を示してくれています(そして適切!)。

ここで示されている調べ方は研究者にとっては当たり前なのですが、卒論生などとのやり取りで起こりがちな、
「どうやって調べたらいいですか?」
「えーと(そんなところから教えないといけないのか、、)、論文検索ができるサイトがいくつかあって~」
 みたいなやり取りを省略できるわけです(これはすごい!)。

現時点の使用感

これは使えます。
「なんとかとハサミは使いよう」ということわざがありますが、適したタスクをやらせれば使えるツールと思います。

雑感として、(ほかにもいくつか質問を試してみての感覚として)ChatGPTで読み込んでいる文章が英語中心と思われるので、情報ソースが英文中心のものであれば、わりと正確に、かつ適度に簡潔に回答が得られるように思います(このあたり、今後精度はさらにあがっていくかもしれません)。

失敗例:ワサビの歴史について(それっぽいだけで嘘ばかり、詳しくもない)

そして有用な場面としては、「(ちょっと調べればやり方も含めて分かるだろ、まずは自分で調べてから聞いてこいよor一般的にすでに分かってて言語化もされているようなことを専門の人にわざわざ聞いてんなよ)誰か代わりに教えといてあげてー」みたいなシチュエーションで特に威力を発揮しそうです。

研究室でいえば、教授の指示や言っていることが理解できない卒論生のあいだで、院生の先輩やポスドクなどが噛み砕いて教えてあげていたような、いわゆる”通訳”の役割をこのツールが全般的に担えるようになっているのではないか、そして楽観的には結果としてみんなの生産性を上げることにつながりそうな、そんなハッピーなツールではないかなと思います。

ただし、回答が正確かどうかが分からない(質問に自分が答えられない)場合、ファクトチェックが必要になります。

おわりに

ただ知識を豊富に持っているだけで価値があった時代から、インターネットの登場により、知識の所在を知り(情報リテラシー)、知識をいかに結びつけるかがより重要になったように、こうしたAIツールの登場により、情報を適切に収集し、整理・要約する仕事は代替されていくのかもしれません。

ただ、インターネットで調べれば何でも分かる(ように錯覚する)時代にあっても、持っている知識はやはり役に立つのと同様に、こうしたツールが情報リテラシーやメディアリテラシーを代替するようになっても、そうしたリテラシーが不要になることはないのでしょう(相対的に優位性は下がるかもしれませんが)。

インターネットが一般に使われるようになったのが、たかだか30年前だとすると、われわれはまさにネットの普及とともに生きている世代ということになるので、まさしく文明史上に残る時代の転換点にいるとも思えます。

そして、意味が分かっていないはずなのに、あたかも分かった上で適切に情報を集めてまとめて答えてしまえている(そして会話っぽく自然に対応できている)ということに、やはり若干の薄気味悪さは感じてしまいます(が、それ以上に技術の進歩に圧巻です)。
Googleが開発に慎重になっているというのも、いささかGoogleも大きくなってベンチャー企業感がなくなって意思決定が大企業っぽくなったなーという理由だけでもないような気がしてしまいます。

今回はここまで。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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