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2022年11月の本棚

11月に読んだマンガをまとめていきます。



逃げ上手の若君 8 / 松井優征(集英社)

信濃武士・瘴奸しょうかんとの最後の戦いに挑む時行。守護・小笠原貞宗との直接対決のために戦場に舞い降りる頼重。暴走する信濃国司が投入する秘密兵器。数々の激闘を繰り広げた後、時行は皆の前で己が真の名を叫ぶ。

ここまでの長い潜伏期間を経ての、満を持しての「名乗り」シーンは、カタルシスを感じざるを得ないというか、まぁもうかなり興奮した。鎌倉幕府の生き残りとして名乗りをあげた侍王子を待ち受ける運命や如何に。最後の貞宗が熱い。

遠からん者は音にも聞け!
近くば寄って目にも見よ!

我が祖は桓武の帝が皇胤 上総介平直方が曾孫にして
源頼朝公の御舅 北条四郎時政
(中略)
我こそは相模の次郎…
名を北条時行とぞ申し侍る!!

北条時行/『逃げ上手の若君』8巻 p.182-186


ウィッチウォッチ 8 / 篠原健太(集英社)

カラちゃんが式神を使役する回、ビー玉ブームが到来する回、各部位が伸びちゃう回、真桑先生と嬉野さんがオフ会する回、ゲーム下手なモイちゃんが夢中になる回、感情が魔封波される回、ミハルが学校で親友に出会う回、モイちゃんのアンラッキーな誕生日の回を収録。

本筋は1ミリも進展してないのに面白すぎるから困る。これでいい、これがいい、って感じ。


株式会社マジルミエ 5 / 岩田雪花・青木裕(集英社)

マジルミエが推し進める、対応現場でリアルタイムで魔法を生成するという「アリスシステム」の実績作りとして、魔法技術総合研究所に隔離されている新種の怪異への対応をすることになったカナたち。かつてない動きを見せる未知の怪異への対処方法は果たしてあるのか。

先輩魔法少女・越谷の父親が政府のお偉いさんで、利権的な問題も浮き彫りになり、全体的にちょっと不穏な雰囲気に。


弱虫ペダル 81 / 渡辺航(秋田書店)

箱学追い出しレース佳境。葦木場拓斗vs新開悠人のエース対決を制したのは悠人。箱学次世代エース誕生の瞬間である。勝者が両手を広げるシーン大好き。そこに至るまでの経緯がどうであれ大好き。

一方、総北では手嶋さんたちが卒業し、遂に坂道たちも3年生に。期待と不安が入り混じる4月の裏門坂で、坂道が出会った頼り気のない1年生・六代蓮太ろくだいれんた。彼がインターハイの舞台で大活躍することを、まだ誰も知らない——(本当に知らない)(多分、渡辺先生も知らない)

ようやく総北の新1年生が登場。インターハイは坂道・今泉・鳴子・鏑木・段竹・六代の6人で決まりだろうけど、その前に長い長い合宿編とかがあると思うと、今から気が滅入っちゃうっテ。


ガールクラッシュ 5 / タヤマ碧(新潮社)

月末評価で最高のパフォーマンスを見せた直後、過労で倒れてしまった天花。個人成績で崖っぷちの「C評価」となってしまった彼女の処遇をかけて、ミンチェが代表へ直談判バトルを仕掛ける。そんなミンチェの心配も他所に、合同オーディションショーで恵梨杏えりあんと再会するためにも、もう一度己の基本「完コピ」へと立ち返る天花。落とせない次の月末評価での最高評価獲得を目指す。

読んでるこっちが折れそうになるくらいハードでシビアな少女たちの日々の中で、ミンチェだけが癒しです(マジで)。LINEマンガ連載で、紙での出版がなく、電子配信のみなのがあまりにも残念な作品。どこかのタイミングでまとめて刊行されることを切に願っております。


今日から始める幼なじみ 5 / 帯屋ミドリ(新潮社)

順調に「幼なじみらしさ」が滲み出てきている二人の関係は夏休みに突入しさらに加速しそうで加速しない。もう「幼なじみ」の一言では片付けられないレベルの仲にも見えますが、なんだかんだで微笑ましくて、お気に入りの作品です。

最近、巻末でよくわらかん幼なじみ系の他誌作品とコラボしがちなのが面白い。


味噌汁でカンパイ! 14 完結 / 笹乃サイ(小学館)

母への想いを昇華させ、過去と向き合った善。善の言葉で解放された父の涙にもらい泣き。高校受験はあっさり終わり、(八重姉の)結婚式イベントもあり、高校入学、味噌汁でカンパイして完結

プロポーズ(?)が八重からなのが”らしく”てよかった。もう全部よかった!!丸7年の連載お疲れ様でした。なんだかんだ初期の頃から最後まで読めて本当に幸せでした(途中で電子に移行したの今でも後悔してる)

完結記念のアクキーもなんとか1種類だけ買えました。B面みたいな方だけ。


ソアラと魔物の家 2 / 山地ひでのり(小学館)

魔物の家を建てるドワーフ族のキリクたちの旅に同行する人間の戦士・ソアラ。雷狼と人魚夫婦の愛の巣を完成させ、魔王からの招集で魔王城に向かうことに。しかし辿り着いた魔王城はもぬけの殻で、城の屋上には茅葺き屋根の日本家屋と田園風景が広がっていた。今明かされる魔王城建設秘話。

魔王城を設計したというキリクの師匠・華俵かひょうを追って、魔王以上の凶悪さを持つという「三大帝」の家も建てることになってしまった一行の建築旅は続く。続くったら続く。


ゆるキャン△ 14 / あfろ(芳文社)

新入部員獲得に奔走する野クルメンバー。ロードバイク沼にどっぷりハマりつつあるイヌ子経由で入部してくれた新キャラ・中津川メイちゃんもキャンプより自転車に興味がある様子。

もう『ゆるキャン』というより『ゆるチャリ』って感じの内容でしたが、自分が初めてロードに乗り始めた頃を懐かしめて、不思議な気持ちになりました。チャリはいいぞ。


ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット 3 / ホークマン・メカルーツ(マッグガーデン)

人が猫に変わっていくニャンデミック発生から数ヶ月。可愛い猫たちの前に人類は為す術もなく滅亡し、生き残った者たちによるサバイバル生活が続いていた。

ちょっと前巻から何も進んでなさすぎるのが気になりますが、猫は相変わらず可愛いので文句はありません。もはやストーリーなどなくていい。夢オチとかでもいいレベル。


おとなりに銀河 5 / 雨隠ギド(講談社)

アニメ放送も楽しみな異種間(?)いちゃラブストーリー。「姫」として育った故郷の島にて、両親へ覚悟と想いを告げる五色さん。自身の境遇や使命を理解し、多くの人たちの愛を受け取った上で、愛する人と一緒に歩いて行きたいと願う姿。とても素敵。

両親への挨拶を済ませて、プロポーズも済ませて、挙式も間近…となると、もしかしてもう終わっちゃう?それはちょっとツラい。

期待賞と言われた自分が好き
特別でも天才でも姫でもない
ただの私がいいんです

五色しおり/『おとなりに銀河』5巻 p.75-76


うるわしの宵の月 5 / やまもり三香(講談社)

市村先輩と正式に付き合うことになり、夏休みに先輩の別邸があるという神戸に友人たちも交えて小旅行に行くことに。いやそこは二人で行きなさい。

グイグイ押してくる先輩と、やっぱりどうしても照れや劣等感が表に出てしまう宵ちゃん。もう宵ちゃんが天邪鬼すぎる… なんなんこの娘… 可愛いけども。


キミと越えて恋になる 3 / 柚樹ちひろ(集英社)

壁の向こう側、繋が暮らす獣人の町を訪れる万里。危ない場面もあったけど、獣人も優しい人は多い。繫の幼なじみの猫獣人のキサラも良い娘だった。万里と繋のおうちデートはちょっとかなり刺激が強くてびっくりしちゃった。

二人の関係が学校の新聞部の人に見つかっちゃって、よくない雰囲気で学園祭に続く。


君は冥土様。 6 / しょたん(小学館)

姉である雪さんに対して殺意を向ける妹のアンナ。絶対に気持ちのすれ違いが発生している二人は対峙してしまう。殺るか殺られるか、殺し屋だった姉と殺し屋になった妹の姉妹喧嘩が始まる。


カモのネギには毒がある 加茂教授の人間経済学講義 3 / 甲斐谷忍・夏原武(集英社)

前回壊滅させたマルチ商法集団「NSA」のさらに上部となるマルチ組織「起業家集団/風景」に蔓延る「マインドコントロール」について分かりやすく紐解きながら研究調査、もとい崩壊させていく加茂教授。

マルチの連中が基本全員ぱっぱらぱーのバカばっかで、洗脳・搾取されて然るべきなのでは…って感じだけど、実際のところはもっとエグかったりするのかな?次回は遂に主犯格の人物・鈴鹿と直接対決。もうボッコボコのフルボッコに負かしてほしい。


クジャクのダンス、誰が見た? 1 /浅見理都(講談社)

警察官だった父親が何者かに殺害された。父の遺した一通の手紙に犯人ではないと記されていた人物が逮捕されてしまったことを受け、主人公の小麦は真相究明に動き出す。

ジャングルの中で踊るクジャクのダンスを誰も見ていなければ、それは存在したと言えるのだろうか、というヒンディー語のことわざがタイトルの由来。複雑に絡み合う疑惑と謎の中、誰が、何が、真実を見るのか。面白いクライムサスペンスが始まりました。


無駄に幸せになるのをやめて、こたつでアイス食べます 1 / カンナギユタカ・コイル(KADOKAWA)

同業の友人に裏切られた仕事人間の莉恵子と、クソ夫に突如離婚を切り出された主婦の芽依。幼なじみの二人は「一番近くて一番遠い他人」として同居生活を始める。

小説のコミカライズ作品。原作は1巻完結みたいなのでそこまで長くはやらない短期連載なのかな?主人公二人のお互い納得いく距離感を保とうとする姿勢が好き。芽依の元夫が分かりやすくゴミクズなのが良い。タイトルも長いけど、「真理」で好き。

一緒に暮らすなら
一番近くて一番遠い
他人になろうよ

芽依と末長く友達でいたいから
そうするの

大場莉恵子/『無駄に幸せ(以下略)』1巻  p.70


ゆりでなるvえすぽわーる 4 / なおいまい(徳間書店)

高校卒業後に決められている政略結婚に絶望する主人公・こころ。彼女の目を通して語られる、道行く女性カップルの百合妄想。相変わらず前編での心の勝手な妄想と、後編で明かされる本当の関係のギャップが激しすぎてお腹いっぱいになる。一個だけ注釈が入るほど激重のがあってヤバかった。

心の婚約者・花籠総矢はなかごそうやにもどうやら複雑な問題があるようで、残された卒業までの時間で良い方向に向かっていくのか心配です。


ババンババンバンバンパイア 3 / 奥嶋ひろまさ(秋田書店)

変態だらけのBLブラッディラブコメギャグマンガ3巻。李仁くんと葵ちゃんをくっつけたい童貞たちと、それを断固阻止したい吸血鬼の森さん。さらには新キャラの男嫌い系ツンデレギャルが李仁くんに好意を持ってしまったようでもう大変。

基本しょうもない勘違い下ネタギャグなのに、ここまで不快感なく面白く読めるのは流石の一言。ストーリーもどこに着地するのか全然想像できなくて、次巻以降も楽しみすぎる。


ヴァンピアーズ 1~8 / アキリ(小学館)

14歳の少女・朝桐一花あさきりいちかが恋した相手は、悠久の時を生きる吸血鬼の少女だった。アリアと名乗るその少女は、自分を殺してほしいと一花に迫る。死にたい吸血鬼の少女と恋する人間の少女の小さな恋の物語

圧倒的画力で描かれる「絡み」がかなり官能的と言うか、まぁエロい。ただ、単純なエロスだけではなく、一花とアリアが互いにどんどん惹かれ合い、でも同じ時間は生きられないと葛藤し、過去を語り、吸血鬼殺しの宝剣を巡ってバトルもあり、小気味良いギャグもあり、ホラーもあり、とボリューミーかつそれらがバランス良く噛み合って成り立っていると感じる内容でした。脇役もいい味出してる。

最新8巻では一気に佳境に入った感あるけど、もう完結も近いのかもしれない。かなり好きな作品に出会えたと思っているので少し残念。でも終わり方も気になるので楽しみ。


るるひかる-Vampire Memories- 1 / 今村翠(新潮社)

高校生の小川るるは、かつて吸血鬼と称された特異体質「採血種」と診断された。採血種の人間は相手の血を採血することでその人の記憶を引き継ぐことができるという。るるは「記憶伝承士」を生業とする250歳の採血種の人間・エドと出会い、助手として各地の伝統工芸職人の元を訪れることに。

誰かの最期の瞬間に立ち会うのってかなりの覚悟がいると思うし、エドに全てを託す職人たち、それに真摯に応えるエド、張り詰めてた空気感が伝わってくる作品でした。土着信仰的要素を吸血鬼と絡めてマンガに落とし込んでいるのも面白かった。るるの口調だけ若干気になる。


ボールルームへようこそ 12 / 竹内友(講談社)

都民大会優勝を勝ち取った多々良は目の負傷により足止めを食らってしまう。踊れない多々良は釘宮さんに誘われ、鎌倉にある練習場を訪れることに。

新たな出会いを通してダンスとの向き合い方について、今一度考える多々羅。内側からしか見られない景色があるように、外側からしか気付けない感情がある。


ブルーピリオド 13 / 山口つばさ(講談社)

フジさんとの出会いがもたらした新たな「視点」。それも糧に「罪悪感」についての課題に向き合い、なんとか上半期を乗り切る八虎。たった1ヶ月だったけどノーマークスでの時間は八虎にとっては重要であったことは間違いない。肩の荷も降り、心躍る2年生の夏休みを迎えた八虎たちは制作合宿として広島を訪れるのだった。

あーーーっ
なんかすっげー長い旅行から帰ってきた気分だ今……!!!

矢口八虎/『ブルーピリオド』13巻 p.94


宝石の国 12 特装版 / 市川春子(講談社)

月人の計画は成った。地球にて、かつての大切な仲間たちを破砕しつつ金剛先生を目指すフォスフォフィライト。なんと絶望的な帰還。そして計画の要たるフォス一人を残し、宝石たちは月で幸せに暮らす。「一万年」という孤独な時を経てフォスは祈り、救いがもたらされる。

「救い」の物語のはずなのに、もうどこまで行っても救いがない。いや救いがないのが救いなのかもしれない。アニメでやっていた頃とかがもはや懐かしい。

フォスフォフィライト
硬度/三半
主人公。
復讐中。どうなる。

登場人物紹介/『宝石の国』12巻 p.2g


神さまがまちガえる 2 / 仲谷鳰(KADOKAWA)

相変わらずバグが起きる日常。シェアハウスの住人・こんは自分自身がバグで生まれた存在だったと知る。そのことを唯一観測できた人間・かさねは紺に助手として住み込みで働くことを提案するのだった、という過去編を収録。1話の前日譚的内容で良かった。「世界五分前仮説」みたいな話(ちょっと違うかも)


異刻メモワール 2 / るん太(KADOKAWA)

不思議な異世界で暮らすトモとリツ。所々で現実世界での辛い記憶がフラッシュバックするトモを優しく包み込んでくれるリツの無邪気な優しさ。トモもちょっとずつ前向きになっていけているのかな。


フールナイト 5 / 安田佳澄(小学館)

人間を植物へと変える「転花技術」の反対派が企てたアイヴィー事件。事件の糸口を掴むため、転花院の面々は作戦を決行する。調査を進めるうちにトーシローの内に芽生え始める感情はこれからの展開に大きく影響してきそうなものだった。真の正義など存在しない。


ぼっち・ざ・ろっく!アンソロジーコミック 1 / はまじあき 他(芳文社)

個人的に、この秋一番の覇権アニメとなっているきららのガールズバンド作品、のアンソロ。中身はまぁ「THE・アンソロ」って感じの内容でしたが、特筆すべきは原作者・はまじあき先生の実妹・大豆田先生も寄稿しているということ。主人公・後藤ひとり(通称:ぼっち)の妹キャラ・後藤ふたりの目線でのショートストーリーを原作者の実妹が描くという、なんとも粋な演出。素敵なお話でした。

「ひとり」の妹に「ふたり」と名付ける安直ネーミングセンスが最高で、毎度笑ってしまう。アニメの解像度を上げるためにも普通に原作も読むか… いやでも、うーん。

きららMAX1月号は買いました(付録のピック欲しさと伊地知姉妹の特別編読みたさで)。ピック効果か在庫はほぼないようで、ギリギリ買えて良かった。


北北西に曇と往け 6 / 入江亜季(KADOKAWA)

約2年ぶりの新刊。アイスランドを舞台にしたロードムービー×ファンタジー×ミステリー。北極圏の雄大な大地を描きながらそこで暮らす人々の日常を覗かせてくれます。ヒロインのリリヤがめっちゃ好き。

主人公は17歳の青年・御山慧みやまけい。機械の声を聞くことができ、探偵まがいの仕事をしながら祖父と暮らしている。6巻では殺人の疑いをかけられ警察に連行された弟の三知嵩みちたかの変死を受け、一度日本へ帰国する。日本の田園風景に溶け込む慧の姿が印象的だった。三知嵩の死の真相を確かめるため、慧は再び前を向く。


ぷにるはかわいいスライム 2 通常版・特装版 / まえだくん(小学館)

かわいいスライムぷにるのかわいい2巻。ぷにるとコタローの前に現れた高飛車お嬢様の御金賀おかねがアリスと彼女の大切な友達のルンルーン。「ぷにるには命が宿るのにルンルーンはどうして人間にならないの…」と嘆くアリス。財閥パワーで動くようになったロボルンルーンは果たしてアリスにとって本物か偽物か。オモチャホビーに命が宿るというテーマに深(いようでそうでもないようでやっぱりちょっと深)く切り込んだ「ルンルーン編」を収録。

特装版はかわいいポスターなどが一緒になった特別仕様。豪華だけどクソデカすぎてどうしようかと思っているところです。2月にはもう3巻が出るとのことで、割とハイペース。


うみべのストーブ 大白小蟹短編集 / 大白小蟹(リイド社)

作者初の単行本の短編集。以前、トーチwebで公開されていた【きみが透明になる前に】という夫が突然の事故で透明人間になってしまった話を読んでポロポロと泣いてしまったのが購入のキッカケ(現在は非公開、代わりに作者がツイート形式で公開しています)。以下、収録作について簡単に。

【うみべのストーブ】彼女に別れを切り出された青年がストーブと冬の海を見に行く表題作。【雪子の夏】雪女と過ごした忘れらない冷たい夏の思い出。【きみが透明になる前に】透明になった夫の輪郭をなぞる妻と二人だけが測れる距離。【雪を抱く】妊娠した女性が偶然出会った女性に吐露した雪のかたまり。【海の底から】書くことから離れてしまった女性が海底で感じる幸福と海面から見えた景色。【雪の街】死んだ親友と過ごした街に降り積もる記憶。【たいせつなしごと】どこかから反射する光のゲートを踏んでみる。

最後を除いてどれも「冬」を感じるちょっと寂しく、じんわり温かい素敵な一冊でした。各話の最後には作者の短歌も綴られてます。これもまた良い。冬の静かで澄んだ空気がたまらなく好きだと、改めて思いました。

短編集としての完成度、満足感がとてつもなく高かったので是非手に取ってみてほしい一冊です。年末年始のお供にも最適。


雑記

今月は「改めて考えるとこれもう別に読まなくていいかな」というタイトルもちらほらあって、一部買うのをちょっと一旦やめてみた月でした。こんなことをあえてここで言う必要もないですが…

電子版だと物理的な制限がなくなる代わりに、惰性で買ってしまいがちなところがあったりして、その点はあまりよろしくない。出来るだけ多くの作品に触れたいけど別に貪りたいわけじゃあない。本当に読みたいものを読める分だけ読むようにしていきたいな、と思うところです。

『ひらやすみ』の聖地巡礼をしに行ったり、『大乙嫁語り展』にも行ったり、リアルイベントも多かった11月。年末に向けて残り一ヶ月、楽しんでいきましょう。

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