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2021年10月の本棚

年々秋が短くなってきているように感じる中、コーヒーをがぶがぶ飲みながら漫画を読んでいます。サムネイルの3冊に被りを出すのは悩んだけど、やっぱり今月は『メダリスト』を入れないわけにはいかないと思って入れました。

Q、恋ってなんですか? 1巻 / FiokLee(講談社)

アフタヌーンで新連載が始まった時に珍しく即好きになった(普段連載誌はほぼ追っていない)作品の単行本1巻が8月にこっそり出ていたのを見落としていた。不覚。
しがない会社員の青井くんは仕事帰りの公園で、地球上の生物を採集しにやってきた宇宙人「Q」と出会い、その採集活動に付き合うことになる。様々な生物の生殖活動の観察を通して「恋」を知らない二人の不思議な関係が描かれる、少し変わった切り口の作品。
人間の常識では到底考えられないような生物の愛の営みが美しくも儚かったりするし、ただ単に生物学の勉強みたいで読んでいて楽しい。


アオのハコ 2巻 / 三浦糀(集英社)

インハイ地区予選に向け、針生先輩にしごかれる大喜。針生先輩に普通に彼女がいてくれて、しかもめちゃくちゃ良い人で良かった。そして千夏先輩と水族館デート(?)からの雛ちゃんとの三角関係。千夏先輩の可愛さがもう限界突破していてしんどいんだけど、ポジション的には雛ちゃんを応援したくなる。


ダンダダン 2巻 / 龍幸伸(集英社)

ターボババアとの鬼ごっこが終わったと思えば次はオカルンの金玉探し。相変わらずノリと勢いと画力で読ませる力技。こう言っちゃあアレだけどラブコメしてる時の方が好き。あとターボババアがしれっとマスコットキャラ化してたのは笑った。


藤本タツキ短編集「17-21」 / 藤本タツキ(集英社)

『チェンソーマン』の藤本タツキ先生初の短編集。収録作の中だと『佐々木くんが銃弾を止めた』が一番好きかな。タツキ先生の作風がドンピシャでハマるかと言われたらそこまでではないんだけど、なんというか、歴史的な瞬間を目の当たりにし続けているような気持ちで読んでいる。大谷翔平的な。あとがきを読んで、その気持ちがより強くなった。


違国日記 8巻 / ヤマシタトモコ(祥伝社)

同性の恋人がいることを朝に打ち明けたえみりの姿が勇ましかった。「関係に名前なんかなくていい」とは槙生ちゃんの言葉。本当にその通りだと思う。朝も朝で、自分の中にある「父親像」をずっと追いかけて、周囲の人たちの言葉を受けて、ちゃんと自分の落としどころを見つけられたみたいで良かった。ほんと難しい。でもそんなに難しくない気もする。

そんなに簡単なことじゃない気もするけど
それくらい簡単なことな気もする


今日から始める幼なじみ 1巻 / 帯屋ミドリ(新潮社)

転校生の柚木楓ちゃんと家も席もお隣さんになった相田航平くん。そんなある日の放課後、彼女に呼び出され、突然「私と幼なじみになってほしい」と頼まれる。「幼なじみ」に対してちょっと穿った理想を持つ女の子と”今日から始める”幼なじみライフ。ニヤニヤしちゃう。


味噌汁でカンパイ! 12巻 / 笹乃サイ(小学館)

中学3年生最大のイベント修学旅行で広島・大阪へ訪れる善と八重とクラスメイトたち。クラス内でちょっとだけ進んでいると噂の佐藤さんと数也のカップルを中心に今回もほっこりする良い巻だった。よく出来た子たちばかりで感心しっぱなし。そろそろ完結しそうでちょっと寂しい。
どうでもいいけど修学旅行で広島→大阪ルートとか珍しくない?


舞妓さんちのまかないさん 18巻 / 小山愛子(小学館)

「春のをどり」に向けての準備が進む慌ただしい花街の中でも、変わらずのんびりとした時間の流れるキヨちゃんの台所。みんなのオアシスとなっている台所の描写は本当に素敵でずっと見ていたい。一方で「百はな」としての振る舞い方に期待も高まるすーちゃんは日々頑張りながらも、ふと自分を見失いそうになる。それでも、自分のことを自分以上に理解してくれている人たちの存在が、もうひと頑張りする力をくれる。

うちがうちをわからへんようになっても、きっと…


映像研には手を出すな! 6巻 / 大童澄瞳(小学館)

約2年ぶりの新刊。何気にアニメの放送が終わってから出ていなかったみたい。映像研の原点『そのマチェットを強く握れ!』の本編制作に取り掛かるメンバーたち。新キャラも登場して初期の頃以上にわちゃわちゃしてきたなと感じる。この漫画を読んでいると「想像できるものは実現し得る」ことが伝わってきてわくわくしてくる。(ディズニーかな?)


生き残った6人によると 2巻 / 山本和音(KAWADOKAWA)

依然続くサバイバル生活は脱落者あり、新メンバー!?あり、相変わらず恋愛あり。今のところフリーター♂とYouTuber♀が一番気になるけど、新展開次第でまた変わった恋愛関係になりそう。「そして誰もいなくなった」展開も十分ありうるけど引き続き観測を続けていく所存。


クプルムの花嫁 2巻 / namo(KADOKAWA)

寡黙な銅器職人の青年と年下幼なじみギャルのいじらし婚約ラブコメ待望の第2巻。旅館のプランに沿った銅器製作の仕事や新たな技法の習得と成長していく修。しいなと足並みを揃えている感は薄いけど、その未熟さがこの二人の魅力でもあって良きです。そして別にどうでもいいことかもしれないけど「しいなの、キャラは、ギャルでは、ない!!!!」と声を小にして言いたい。全然可愛いので文句なしですが。


メダリスト 4巻 / つるまいかだ(講談社)

福井・敦賀での夏合宿でメキメキと成長するいのりとどこまでもクソガキな理凰。いのりとも理凰とも真正面から本気で向き合う司の情熱が熱くもその根底にあるものは冷たい。今回もページをめくる毎に涙がこみ上げてくるくらい感極まるシーンしかなかった。特に夏合宿最終日の夜からの6級バッジテストFSまでがもう完璧。最高。
「フィギュアスケート」が題材だからというのもあるけど「静かに燃える冷たい熱さ」みたいな独特の雰囲気がキャラクターや描写から伝わってきてとても良い。それこそ、スケートのプログラムを観ている時に似た体験だと思う。

い いのりさん…
偉さの面積拡大が止まらない…
動き続ける点P…


好きな子がめがねを忘れた 8巻 特装版 / 藤近小梅(スクウェア・エニックス)

初の特装版。夏休みの終わりも近づき、夏休み中に会うことももうないと思っていた三重さんと夏祭りに行くことになった小村くん。これは予定調和。もうお互いの親公認なのが読んでて一番ニヤけるポイントかもしれない。そして頑なに親の顔を描かないスタイルなのも良い。小村くんと三重父が謎に対抗し合うシーンは必見です(?)
「今この瞬間が幸せで、願わくは何も変わらずにこの関係が続いてほしい」と祈る反面、それではダメだと理解し、決心する小村くんがかっこよかったけど、なんとなく、個人的な予想としては、気持ちを伝えるのは三重さんからな気がするし、そうなってくれたら嬉しい。

…私 めがね忘れたくないなあ


百姓貴族 7巻 / 荒川弘(新書館)

荒川先生の農家実録(実録ではない)漫画第7巻。ゆっくりでもこうやって新刊が出てくれるのは嬉しい。なんならこのくらいの刊行ペースが丁度良かったりする。
農家ももちろんコロナの影響が甚大だけど、「防疫」に関してはコロナ以前に徹底しているから通常運転なところもあったりするんだなと勉強になった。次、財布を新調する時は個体識別番号入りの和牛革のやつにしたいな。
時事ネタを盛り込んでくれることが多々ある作品なのでそのうち『ウマ娘』ネタも来ないかなとちょっと期待してるけど、単行本収録まで時間差があるのと権利的に難しいのとで望みは薄いか。


その着せ替え人形は恋をする 8巻 特装版 / 福田晋一(スクウェア・エニックス)

ミスコンでの麗様男装コス完成、文化祭成功に向けてクラス内の雰囲気も最高潮。やっぱりみんな優しくて暖かい。それにしてもミスコンの盛り上がりが尋常じゃあなかった。その盛り上がりの中での五条くんのふとしたモノローグにハッとさせられたり。今回はクラス全体で青春全開な感じだったので次回は二人の関係に進展があるかな?あるといいなぁ。あってくれ〜!!よいしょ〜〜っ!!!(?)

俺が喜多川さんを1位にしてみせる


君は放課後インソムニア 7巻 /オジロマコト(小学館)

旅の果てに連れ戻されてしまったガンタとイサキ。そのまま連絡も取れずに2学期を迎え、お互い付き合い始めたことを各々親友たちに伝えるシーン。「シンプルになった」と言うガンタと「フクザツになった」と言うイサキ。変わっていく関係は同じでも変わっていく気持ちは対照的で。走り出したら止められないこの感じ、眩しすぎるぜ〜

曲に会うために生まれてきた。
そうだったらいいな。


うみそらかぜに花 2巻 / 大石まさる(少年画報社)

プール掃除、天体観測、肝試しと夏満載の第2巻。カナメがお父さんと死別していたことがふわって出てきたり、親同士の再婚でアミと同居しているということもあっさりみんなにバレちゃったり、物語の流れとかに対してそこまで気張っていないのもこの作品の魅力の一つ。所謂「日常系」とも違う、ただキャラクターたちの生活がそこにあるだけ。それが良い。一冊丸々夏の茹だるような暑さが伝わってきて、恋しくなった。夏が。


ボールパークでつかまえて! 1巻 / 須賀達郎(講談社)

プロ野球の球場を舞台に個性豊かなキャラクターたちが繰り広げる球場コメディ漫画。ドームとかってライブで行くことの方がもはや多いけど野球観戦の時の方が開放的な雰囲気でお祭り感が強い気がする。でもついついお金を遣ってしまうので気が抜けない。その楽しい雰囲気も上手く描かれていたと思う。4巻まで出ているみたいだけど、そんなにネタが続くのかな?とも思ったり。
それにしても今シーズンのペナントレースは熱かった。ヤクルトもオリックスも2年連続最下位からのリーグ優勝おめでとう。凄い。


一日三食絶対食べたい 1巻 / 久野田ショウ(講談社)

『きのう何食べた?』みたいな感じの作品かと思ったら、大災害で氷河期を迎えた終末日本が舞台のディストピア系漫画だった。自給自足生活を強いられる中で、ネガティブ思考のユキくんが病弱な同居人リッカさんに一日三食美味しいものを食べてもらうために頑張って働く話。リッカさんが愛おしくて可愛い。
もういつの間にか一日三食食べる習慣もなくなったなぁ。朝昼晩で食を分ける感覚が消え去った。食べたい時に食べたいだけ食べる獣のような食生活。


猫と竜 1巻 / 佐々木泉・アマラ・大熊まい(マンガボックス)

普段こういう「小説家になろう」発の作品は全く読まない(言い方悪いけど全部同じに思える)けど、これは面白かった。所謂「なろう系」とは毛色がちょっと違うから受け入れられたのかもしれない。
猫に育てられた竜が長い年月を猫と共に生き、やがて人間とも理解し合う関係を築いていく話。オムニバス形式で色々な猫が出てきて可愛かった。竜・猫・人間の関係性もまた素敵だった。


おむすびの転がる町 / panpanya(白泉社)

ツチノコ研究、筑波山観光、おむすびころりん検証と今回もどれも興味深く面白かった。相変わらず解像度の高いようであやふやな世界観。その中でも「坂道を登る話」と「リサイクルショップにゴミを売る話」が個人的に刺さった。いつも通る道から一本横に入るだけで全く違う世界になるし、今手元にあるどうってことない代物が何十年後どれだけの価値になるか、とかの気持ちは一度は抱いたことがある。panpanya先生と思考を共有できたような気持ち。


打撃マン 1〜3巻(完結) / 山本康人(CoMax)

オモコロチャンネルでダ・ヴィンチ・恐山さんが紹介していたので読んでみた。タイトルも内容もあまりに常軌を逸しすぎていて、とても言葉に言い表せられなかったので、恐山さんの言葉を借りたい。以下引用。だしゃあ!
私は『打撃マン』というマンガをオススメした。この作品はすごい。物語としての整合性よりも、より純度の高いなにかを求めて生成した「元素」みたいな作品だ。平凡な男が、理不尽なストレスの限界を超えた瞬間に「打撃」に目覚め、悪党を「だしゃあ」の掛け声とともに殴り倒す「打撃マン」に変貌する。打撃マンがいったいなんなのか、というのは最後までよくわからない。ただ「いきなり殴る人」のような気もする。こういうの読むと、凝ったストーリーとか伏線回収とかべつにマンガには必ずしもいらないんだと思わされる。とにかく「絵」に力さえあればそれでいい、ともいえる。ものすごい勢いで人間が人間をぶん殴っている絵の凄みだけで、もう成立してしまうんだな。2021年にわざわざ読め! と強くすすめるようなものでもないかもしれないが、Kindle unlimitedに加入していれば全話読めるので、気が向いたらめくってみてほしい。誰の心にも打撃マンは住んでいるのだから……。


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