3.穏やかな日々。

あのあと、母は諦めたようで
私の家で暮らす事を決めて
2023年3月12日 退院の日を迎えた。

2ヶ月の入院だった。

私たちに残された時間の
カウントダウンが始まった気がした。

我が家に来た母。
母には飼っていたネコがいた。

全然なつかない。
12年、膝にのられたこともない。
明日こそ懐かれたい。

2ヶ月ぶりにネコと再開した母は
とても嬉しそうだった。

退院後の母は、病気の進行をすこしでも
食い止めるリハビリを家ですること。
そう医師から言われていた。


筋肉がなくなっていく病気だから
今より無くさないために無理のない散歩と
トレーニング器具をつかった手の運動。
この二つを沢山頑張っていた。

首の痛みがなくなった事で
食事も食べれるようになった。

好き嫌いの多い母に効率よく
沢山食べて欲しかったから
沢山考えてご飯を作り続けた。

肉は苦手な母。
食べてもらうのにかなり手をかけた。

低温調理器具でつくったローストビーフ。

パサパサして鶏肉はたべたくないと
駄々をこねるので、これも低温調理器で
柔らかく調理した鶏ハム。

調味料は添加物無しを使って。
ドレッシングも手作りで。

飲み込みにくいのが怖いから。と
色々なものを嫌がるので
肉料理はひき肉を使って圧力鍋で
調理して溶かしたり。

沢山沢山考えた。
どうしたら、スプーンひとさじに
沢山の栄養をのせられるのか。

母が食べてくれたときは嬉しかった。
体重も少しずつ増えて、
もしかしたら奇跡がおきて治ると思った。

退院してから一週間がたった頃
もう今が最後のチャンスな気がして
片道2時間の水族館にいった。

母は楽しそうだった。
マンボウが好きになったらしい。

遠出がきらいな母。
幼少期に出かけた記憶は3回だけ。
その中に水族館はなかった。

だからきっと少なく見積っても
母は32年ぶりの水族館だった。

私の子供と母、二人でイルカを眺めてる
後ろ姿がずっと続いたらいいのに。

そう思った。

リハビリで毎日歩いた近所の神社。
桜がすごく綺麗だった。

近所の公園、土手の一本道。
全て桜が満開でリハビリをする母を
応援しているかのように咲き誇ってた。

このまま治ってしまうと本気で思った。

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