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【読んだ】2月の本たち

2月に読んだ本たち。これらの本を読んで考えたり考えなかったりしたことを端的にまとめている。

マイテーマの探し方 ――探究学習ってどうやるの? (ちくまQブックス) /片岡 則夫

初めてちくまQブックスシリーズを読んだ。小説ではない読書にチャレンジしやすいよう、短く、わかりやすく、本を読む自身をつけさせてくれるシリーズだである。知らないテーマに対して、最初の一歩となってくれるシリーズだと思うので、読書に抵抗がない人にももちろんおすすめしたい。

私はいわゆる「好きなことや特定の興味が特にない」ほうに分類される人種なので、この本は読んでよかった。この本では、論文作成を軸にしたマイテーマの探し方の方法論や考え方が事例を用いて紹介されている。これを読んで、やってみるかという気持ちになった。幼い頃はいわゆる「知的好奇心」が少なかったように思うが、自分の知らない世界に興味を持ち、調べて考えることは自分自身を豊かにすると思う。自分は最近「米(コメ)」の立場と役割について気になっているので、ちょこちょこ調べていこうと計画している。

藻屑蟹/赤松利市

東日本大震災による原発事故後の町を取り巻く「原発避難民」「除染作業員」「住民」などいろいろな立場の人同士の「分断」を解像度高く書いた小説である。
関東圏に住んでいる自分はまるっと「被災地」とくくって認識してしまっていて、外枠だけ理解したつもりになるのは自分の悪い癖だと思っている。こういうところに、国境内の人間を同一民族として捉える国で生まれ育った自分の人間性を感じる。抽象的に捉えられることと、物事をそのままに観察できないことは同義ではない。

うみべのストーブ 大白小蟹短編集/大白小蟹

自分は町田洋さんという漫画家が好きで、Twitterで作品名を検索していたときに、同じ作品を読んだ人たちが「うみべのストーブ」をおすすめしていた。(いわゆる「あの作品が好きな人はこの作品も好きだろう」というレコメンドアルゴリズムのアナログ版である。)気になっていたので読んだ。
日常的な物語の中に、現実世界ではありえないことが起きるところが好きなのだと思った。本質的には実在する感情や想像を、現実ではありえない事象に落とし込むことでやさしく表現してくれる作品である。絵の線がシンプルなのも好きだ。

海が走るエンドロール 1巻/たらちねジョン

歳を重ねた女性が美大に入り直して本気で映画を撮る話。
本気で映画を撮りたいのに、現役生に「余生を楽しむためか?」ときかれている描写にぐっときた。何歳になっても何を始めてもいいというエネルギッシュな気持ちが湧き上がる一方で、後ろめたさが生まれる気持ちもわかる。
続きも読もうと思う。

夜の訪問者/キューライス

「いろいろなモノや生物が夜に自宅を訪問してくる」というシンプルな四コマ漫画。
全ての話が【自宅のチャイムが鳴る>>訪問者が姿を現す>>訪問者に対する主人公の行動>>結果】という同じ構成になっていて、訪問者によって話の転び方が変わってくるのが面白い。オモコロで連載している。
この本を読んで、同じシチュエーションになってもその人の選択次第で経験が変わってくるよな、楽しく生きよう、改めて思った。

ひとりの夜にあなたと話したい10のこと/カシワイ

高円寺にある蟹ブックスでタイトルを見て、ある島に移住する友人の顔が頭に浮かび、渡したくなったのでとりあえず読むために購入した。
絵のタッチがかわいく、モノクロと青色だけが使われているのが印象的な作品。中身が雑誌のようなレイアウトになっているのも新鮮でよい。自分だったら静かな夜に、海辺で読みたくなると思った。海が身近な生活になる友人に贈った。こうやって誰かに渡したくなったから買って読んでみる、という本がたまにある。

しかもフタが無い/ヨシタケ シンスケ

絵本作家ヨシタケシンスケさんのデビュー作品集。
一つの絵と文字で人をくすっとさせられるのがヨシタケシンスケさんの好きなところである。絵はソフトでかわいいのに、どこか斜に構えているような絵がとても好きである。読んだ後はこの人の目で世界を見たくなり散歩をしたが、いろいろなことが面白くくだらなく思えてきて楽しかった。

金の国 水の国/岩本 ナオ

壁を隔てて隣り合った「商業が栄えているが深刻な水不足を抱えたA国」に住む王女と、「自然豊かだが敗戦により国力がないB国」に住む仕事がない建築家が、政略に巻き込まれて結婚し、2国の未来を変えていこうとする話。最初は自分のために、徐々に相手の未来を大切に思うようになって国を動かしていくところがとてもよい。
それらをやってのけようとする登場人物たちの器の大きさにかっけぇ!となった。
それぞれの人が、それぞれの立場で自分や他人や国を大切に思う気持ちに現実味があり、とてもよかった。ルーツのない「国を変えたい、社会課題を解決したい」には胡散臭さを感じるが、この作品には説得性がある。
漫画のほうが登場人物の心の声を説明してくれているが、映画のほうが国の美しさや優しさの表現力が高いところが好きだった。

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