東北から全国へ〜ストライカー高橋佳の現在地〜

激動の1ヶ月

それは1本の電話から始まった。

(2020年12月上旬)高橋の事を気にかけていた大学時代(京都産業大学)の恩師である古井監督から、「今シーズンはどうやったんや?」と連絡が来たのだ。高橋が「今年は9試合で22点で、去年は18試合で32点でした。」と答えると、「いくら地域リーグとは言え、中々そんなに取れるもんやないぞ!ちょっと俺も(チーム)探してみるわ!」と言われたそうだ。

その当時高橋は、特に何処かに移籍をしたいと考えていた訳ではなかった。しかし話はトントン拍子に進んだ。古井監督がたまたま別件でF.C.大阪の関係者と会った際に高橋の事を話したらかなり興味を持ったようで、その数日後には古井監督から電話があり、「正式なオファーを出したいそうだ。」と予期せぬ急展開が待っていたのだった。高橋は当時の所属先であったブランデュー弘前FCには「もし同カテゴリーからのオファーがあれば、移籍せずにチームに残ります。」という旨を伝えていた。そこに舞い込んできたJFLというひとつ上のカテゴリーからのオファーであった。断る理由は見つからなかった。

高橋は古井監督に電話をしてFC大阪の担当者の連絡先を聞いた。通常はクラブ間でオファーを出し移籍の話し合いをするそうなのだが、今回は高橋自らブランデューにオファーの経緯や移籍の意志を伝えたそうだ。

そこからは、年末にFC大阪の担当者と会い、その日に契約書にサインをして、年明けには弘前に戻り様々な手続きをして再び大阪に戻るという激動の1ヶ月だったという。

恩師の古井監督が繋いでくれた縁によって、高橋の2021年は大きく動き始めた。

F.C.大阪というクラブ

1996年に東大阪市を拠点として設立されたクラブであり、大阪から3チーム目のJリーグ入りを目指している。2020年にJ3ライセンスを取得。2015年の天皇杯では、セレッソ大阪を破るという大金星をあげたこともある。今年「FC大阪」から「F.C.大阪」にクラブ名を変更した。

クラブはユースチームは勿論のこと、フットサル、レディース、更にシニア(50歳以上)チームまである。これはとても面白い取り組みである。

クラブ哲学である「すべては勝利のために」の理念の元、シニアチームでさえも勝負にこだわるチームを目指している。

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2020シーズンの成績はJFLで16チーム中8位という成績であった。得失点は±0である。(最高成績は2018年の2位)

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昨シーズンF.C.大阪のホームゲームは全試合LIVE配信された。過去の映像に関しても、ホームページの試合結果から遡って見ることが出来る。中継も実況(プロのアナウンサー)に解説までついており、Replay映像もあるのでクオリティは高い。今年も是非お願いしたい。(※今シーズンの中継は未定)

弘前で花開いた得点力と、今後の課題

弘前での2年間では27試合54得点と、抜群の得点力で東北社会人サッカーリーグ1部2年連続得点王を獲得した。弘前で花開いた得点力が、JFLの舞台で何処まで通用するだろうか?

昨シーズンの22ゴール(9試合)の内訳は「右足12点、左足5点、頭5点」と、やや右足が多いがゴール集を見てもらえば分かるように決して左足が苦手な訳では無い。

以前のインタビューでも「利き足は右足だけど、打てると思ったら左でも躊躇なく打ちます。シュート打たなきゃゴールは決まりませんから!」と語っていた。①絶対的な自信を持って力強く振り抜く右足。②リラックスしたフォームからしっかり枠に入れてくる左足。③野球経験を生かした空間認知能力に裏付けされた的確なポジショニングと、太い首から生まれる豪快なヘディング。

どんな状況でもゴールを狙ってくる、対峙するディフェンスとしたら厄介なタイプだ。ボックス内での巧みなポジショニングと嗅覚で、ゴールを量産するのが高橋佳というストライカーだ。「DFラインの裏抜けと相手DFとの駆け引きは、通用するという自信があります。」と本人も自信満々だ。

中でも自慢の右足から放たれるシュートは破壊力が有り、エリアの外からでもゴールをこじ開ける力を持っている。

高橋佳2020シーズンゴール集

逆に課題を聞いたところ「(ポジションが)下がってボールを受けて、ためを作ったりするプレーですかね。」と答えてくれた。東北社会人リーグではある程度出来たが、地域CLの舞台ではそこが上手く出来なかったようだ。

そしてゴールに向かって左45度、所謂デルピエロゾーン(古くてすみません)近辺からのインフロントで曲げて落とすシュートも課題として挙げてくれた。「練習してるんですが、どうしても縦回転が強くなって・・・・。キーパーの手の届かない外側から巻いて落としたいです。」と語っていた。

今シーズンはこの2つの課題を、如何にして克服してくれるのであろうか?とても楽しみである。

熾烈なポジション争いとシーズン目標

チーム加入後まず初めに高橋を待っているのは、熾烈なポジション争いである。今年のF.C.大阪は9人のFW登録選手がいる。(2021年2月6日現在)この中でスタメン若しくは、ベンチ入りしなければならないのだ。日頃の練習からアピールしていかなければ、チャンスが与えられない恐れもある。

JFL得点王経験者やJ1経験者も居る中で、試合に絡んでいくのはとても難しい事である。しかし、高橋にはアドバンテージがある。それが元チームメイトの存在である。

クラブ内に京都産業大学でチームメイトだった選手が4人も居るのだ。その中でも背番号18番の久保選手とは、大学時代にツートップを組んでいたそうだ。その他にも同年代の選手が多いのもチームに溶け込みやすい材料である。更には、監督も京都産業大学出身である。そして高橋は今年から実家に戻った。これも体調管理や、食事の面で昨年よりも大きくプラスに働くであろう。

高橋に今シーズンの目標を聞くと、「試合に沢山出る事と、2桁ゴールです。」と答えてくれた。それに対して私が15ゴールというリクエストをしたところ「分かりました。それくらいの気持ちで頑張ります。」と約束してくれた。

今年地域リーグから、JFLという全国の舞台に1つステップアップを果たした。彼の現在地はJ1から数えると4番目のカテゴリーである。

私との約束を果たした頃、高橋佳というストライカーの現在地は何処になっているのだろうか。今年も目が離せない。



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