葬儀会社が農業に参入して成功した驚きの理由とは? カギは高付加価値化と生産効率向上
今回は前回に続いて、書籍「葬儀会社が農業を始めたら、サステナブルな新しいビジネスモデルができた」という本の内容で農業事業参入の背景やブランディングについて紹介する。
著者は元々、葬儀事業を営んでいたが、その市場は斜陽産業の厳しい状況にあった。このような状況に対応するために、著者はまず葬儀事業の内製化を進めた。
詳しくは前回のブログにまとめているので併せてお読みいただきたい。
この本は、千葉県にある葬儀会社「十全社」の社長である戸波亮氏が書いた書籍である。
葬儀事業から農業事業に参入した経緯や苦労、成功の秘訣などを赤裸々に語っている。
この本を読んで、葬儀会社と農業という異業種間の挑戦やイノベーションに感動し、著者の情熱や発想力にも感銘を受けた。
この本は、農業に興味がある方はもちろん、ビジネスやマーケティングに関心がある方にもおすすめである。
葬儀会社が養殖業、スッポン、ウナギ、ワニ、シャンハイガニなどにチャレンジ
著者は農業事業に参入する前に、まず「養殖業」にチャレンジしようとした。彼は自社の本社近くに地下水が豊富に湧き出る土地があることを知っていて、それを利用して養殖を行うことを考えました。
スッポン、ウナギ、ワニ、そしてカニの養殖である。しかし、どれもうまくいかなかった。スッポンは普通の温度の水だと冬眠して成長が止まるし、ウナギは稚魚の仕入れが難しいし、ワニは社内から反対されるし・・・。著者は結局は、「養殖業」への参入は見送ることになった。
しかし、会社は諦めなかった。そこで注目したのが、農業であった。失敗を経験しながらも、絶えず新しいチャレンジを続ける会社の姿勢は、本書を読むすべての人々にとって、大きな学びとなるだろう。
葬儀会社が自社でお米の生産・販売を開始した理由、販路について
養殖業に失敗した著者は次にお米の生産・販売に着目した。お米というと日本人の主食でありながら、米価が下落していることや農家の減少・高齢化などの問題がある。
しかし、お米の生産量の減少と個人農家による生産が主体である現状から見て、生産コストは割高であり、スケールメリットが利かない。また、お米は通常、農協、すなわちJAを通じて販売されるため、生産者自身が価格をコントロールできない。この事情から、商機を見出し、お米の生産に踏み出したのである。
著者はお米の生産・販売において以下のような戦略を立てました。
生産コストを削減するために北海道で大規模な農地を取得する
品質を向上させるために新千歳空港から近くてアクセスが良い場所を選ぶ
農協を通さずに自社で販路を確保するために独自のブランド名「水芭蕉米」を作る
お米のグランプリなどのコンテストに参加して評価を得る
著者は2013年からお米の生産・販売を開始した。自社で製造した霊柩車や祭壇などの備品を積んで北海道へ行き、その地でお米を収穫し持ち帰るという往復輸送を実施した。これにより、輸送コストを節約し、お米の鮮度を保つことが可能となった。また、著者は自社でお米の品質検査を実施し、農協や市場を介さずに消費者や小売店へ直接販売した。これにより、価格や流通を自身でコントロールすることが可能となった。さらに、自社で生産したお米の品種や産地を表示することができなかったため、独自のブランド名「水芭蕉米」を名乗り、他社との差別化を図った。そして、自社で生産したお米の品質や味を証明するために、お米のグランプリなどのコンテストに積極的に参加した。その結果、多くの賞を受賞し、ブランドの認知度や信頼度を高めることができた。
品種の表示ができないため、独自のブランドとして販売
著者が生産・販売しているお米は「ゆめぴりか」や「おぼろづき」といった様々な品種が含まれている。
しかし、すべて「水芭蕉米」というブランド名で統一されている。なぜなら、農産物検査を受けていないからである。検査を受けないことには品種や産地を表示することが法律上不可能である。
しかし、著者が生産したお米は農協や市場を通さずに販売しているため、「未検査米」のため品種名を表記ができず、独自ブランドで販売している。自社で生産したお米の品質や味に自信があったからだ。品種名や産地名に頼らずに、自社の名前を前面に出すことで、消費者に信頼感や親近感を与えることができた。また、自社で生産したお米の特徴や魅力を伝えるために、パッケージやホームページなどで工夫を凝らした。例えば、パッケージには「水芭蕉米」というロゴのほかに、「北海道産」「無洗米」「新米」「無農薬」「無化学肥料」などのキャッチコピーを盛り込んだり、ホームページではお米の生産過程や栽培方法などを紹介したりした。これにより、著者は自社で生産したお米の品質や味をアピールすることができた。
お米のグランプリで受賞し、ブランド確立
著者が生産・販売しているお米は、「水芭蕉米」という独自のブランド名で販売されているが、それだけでは消費者に選ばれることは難しい。というのも、日本では多くの地域や農家がそれぞれに特徴や魅力のあるお米を生産・販売しており、競争が激しいからだ。そこで著者は自社で生産したお米の品質や味を証明するために、お米のグランプリなどのコンテストに積極的に参加した。これにより、多くの賞を受賞し、ブランドの認知度や信頼度を高めた。
まとめ
以上が、「葬儀会社が農業を始めたら、サステナブルな新しいビジネスモデルができた」という本の紹介であった。
本書は、葬儀事業から農業事業に参入した著者の物語である。著者は、葬儀事業から農業事業への転換により、自身の会社を次世代に引き継ぐための多角化を目指した。さらに、農業事業においても養殖業やお米の生産・販売に取り組み、独自のブランド名「水芭蕉米」を確立した。そして、お米のグランプリなどのコンテストに参加し、自社で生産したお米の品質と風味を証明した。これらから、著者がサステナブルな新しいビジネスモデルを構築したと言える。
私が本書を読み、著者の情熱と創造力に感銘を受けた。著者は、葬儀会社から農業へという異業種への挑戦とイノベーションを実現した。自社や商品に対する自信をもってアピールし、自社や商品の評価を得るために精力的に努力した。
この本を読んで、著者から多くのことを学んだ。
農業に興味がある方はもちろん、ビジネスやマーケティングに関心がある方にもおすすめです。ぜひ一度読んでみてください。
今回も最後までお読みいただきありがとうございます。
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